それから 本町絢と水島基は 結末
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2-⑸
試験期間中とか帰省があって、休みのことが多かったので、お盆の間は集中的に家庭教師の時間を取ってもらっていた。
今日は午後の間を夕方まで教えることになっていた。夏休みになって、初めての訪問だったけど、向こうのお母さんから、ふたりの通知表が良かったので、感謝され、僕も安心した。中学2年生の男の子は、数学の成績が特に伸びたみたいで、小学校からの基礎をやらせたのが良かったんだと思う。
男の子の部屋で、女の子には座卓を持ち込んで、片方には問題集をやらせて、僕は、もう片方と一緒に教科書の大事なところの説明をするといった感じで進めている。男の子の幸一郎は、椅子に座って脚をバタバタさせている。きっと、問題が解らないのだろう。僕は、こういうのはイライラするし、嫌いだ。
「幸一郎君、解らない時は、飛ばして、次の問題からやっていけばいいよ。解けたら、バタバタしてもいいぞ」
黙って続けていたが、理解できたのかどうか、わからない。僕は、先生には向いていないみたいだ。突然、妹の富美子が僕に
「先生、彼女いるの?」
「えっ いるよ 突然だね」
「お兄ちゃん 好きな女の子いるんだけど、告白できないんだよ」
「富美子のおしゃべり! そのうち言うよ」
「富美子ちゃんは好きな子いるの?」って聞いてみた。
富美子は、笑ってはいるが、答えず、ノートの隅に『昨日、プールの帰りにチューした 内緒だよ』と書いたのを僕に見せて、消した。
「先生、好きな子には好きって言わないとダメなんかなぁー」と続けて聞いてきた。
「うーん いろんな場合があるからねー 近くに居るなら、言葉に出さなくても好きと思い続ければ、相手にも通じていくと思うけど 僕だって そんなに経験もないし、うまく言えないな」
僕は、絢との小学校の頃を思い出していた。
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