水を飲む蛇
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第二章
水を飲む蛇
タイはこの時旱魃に悩まされれていた。
それで写真家のドルジャカ=ミレーナ黒髪で浅黒い肌とはっきりとした目を持つ小柄な彼女も交際相手のネナド=プレラドヴィチにぼやいていた。
「早く降って欲しいわね」
「全くだね」
ネナドはドルジャカに黒い目を曇らせて応えた、痩せていて背は高く黒髪は短い。
「僕もそう思ってる」
「皆そうよね」
「お水がないとね」
「どうしようもないから」
「早く降って欲しいよ」
心からからの言葉だった。
「一刻も早くね」
「ええ、お水は豊富な国なのに」
これはタイの気候とメナム川からのことだ。
「それでもね」
「今はね」
「この通りよ」
旱魃に悩んでいるとだ、二人で話しながらだった。
国立公園とその周りを今はハイキングをしていた、その中で。
二人の前に一匹の蛇が出た、その蛇を見てドルジャカは思わず身構えたが。
ネナドはその蛇を見て言った。
「大丈夫なの」
「毒ないの」
「うん、この蛇は」
恋人に穏やかな声で話した。
「これはホソツラナメラだよ」
「毒がないのね」
「そうなんだ」
その緑色の蛇を見つつ話した。
「だから大丈夫だよ、ただ気性が荒いから」
「毒はなくても」
「噛んでくるよ」
それはしてくるというのだ。
「それで噛む力も強いから」
「噛まれると痛いのね」
「そうなんだ、ただね」
「ただ?」
「弱ってるね」
その蛇をじっと見てドルジャカに話した。
「この蛇は」
「そうなの」
「水分が足りないのかな」
「お水?」
「蛇も生きものだからね」
それでというのだ。
「やっぱり水分は必要だよ」
「それで今は旱魃だから」
「蛇はあまり水分を必要としないけれど」
そうした生きものだがというのだ。
「けれどね」
「それでもなのね」
「今はお水が欲しいのかもね、それじゃあ」
そのことを察してだった、そのうえで。
ペットポトル、飲料水が並々と入ったそれをだった。
彼は出してだった。
自分の右の掌に水をやって蛇に差し出した、すると。
蛇はその水を飲みだした、ドルジャカはそれを見て驚いた。
「えっ、噛まないの」
「飲んでいるね、僕もまさかと思ったけれど」
「今は人から飲むのね」
「それだけ喉が渇いているということだね」
「旱魃だから」
兎に角これに尽きた。
「だからなのね」
「そうだね、それじゃあね」
「ええ、それじゃあ」
「好きなだけ飲んでもらおう」
こう話してだった。
ネナドは蛇に水を飲んだ、そして。
蛇は充分飲むと去って行った、ドルジャカはそこまで見てから言った。
「こんなこともあるのね」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「いや、こうしたことが出来るのも」
それはとだ、ネナドはドルジャカに話した。
「あの蛇が毒がないからだよ」
「毒があるとね」
「やっぱり無理だよ」
それはどうしてもというのだ。
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