イベリス
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第五話 入学間近その十
「刺青なんて」
「ヤクザ屋さんが入れるでしょ」
「背中とかにね」
「今だと変な人が入れるわね」
「ドキュンって言われる人達がね」
「何か色々な文字とか模様入れるけれど」
それが入れ墨というものである、タトゥーと他の国の言語で表現しても結局は同じことである。普通の人間は入れないものだ。
「あれもよ」
「まともな人はまず入れないわね」
「一時のお洒落とかで入れても」
「一生ものよね、ただね」
咲は食べつつ言った。
「刺青って消す方法もね」
「あるのね」
「お母さん知らなかったの」
「そんなのあるの」
「水滸伝であったのよ」
「中国のあの小説ね」
「それにあるしタレントさんでもね」
刺青を入れた人がいるというのだ。
「消した人いるわよ、ただね」
「それでもかなりでしょ」
「そうみたいよ」
「そうでしょ、だから入れるなんてね」
「普通の人はしないわね」
「それをしたからあの人はね」
その元野球選手はというのだ。
「もうそうした意味でもね」
「駄目な人なのね」
「駄目も駄目で」
それでというのだ。
「最悪なことしたわよ」
「ヤクザ屋さんみたいな」
「というかファッションもそのままになっているから」
「その時点で駄目で」
「刺青もね」
「論外ね」
「咲は興味ないわよね」
母は娘にかなり強い口調で問うてきた。
「刺青とか」
「一生ものでしょ、ないわよ」
娘の返事はあっさりしたものだった。
「私これまでファッションにはこれといって興味なかったけれど」
「最近になってよね」
「色々なファッションあってその都度変わるのに」
「一生身体に残るものはっていうのね」
「一時でしたら駄目でしょ、どうせやるなら」
それならとだ、咲は母に話した。
「そのままお肌にペインティングするかペーパータトゥーをね」
「貼るの」
「それでいいでしょ」
あっさりとした口調であった。
「もうね」
「一生はしないっていうのね」
「一時の趣味が一生身体に残るとか」
それこそというのだ。
「私興味ないから」
「それでなのね」
「そう、しないから」
絶対にという返事だった。
「私もしないわ」
「それがわかってるならいいわ」
母にしてもというのだった。
「それでね」
「それじゃあね」
「ええ、ただペーパータトゥーはするの」
「というか漫画のキャラクターみたいにお肌にペインティングね」
「コスプレ?」
「そっちの方が刺青よりずっといいでしょ」
これが咲の考えだった。
「一生入れるとか馬鹿みたいよ」
「消えるにしても随分苦労するから」
「私何があってもしないから」
「そうしなさいね」
「一生ね。というかあの人最初はアイドル選手だったの」
「スターでね」
「それがああなるのね」
咲は今の彼の姿を思い浮かべながら述べた。
「高校時代とかは全然違ったの」
「西武の時もね」
「どんな風だったのかしら」
「ちょっとスマートフォンで検索してみたら?」
母は咲の手元にある彼女自身のそれを見て提案した。
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