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車に轢かれた猫達の幸せ

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第一章

                車に轢かれた猫達の幸せ
 ロンドンに住む銀行員リチャード=ハリスは妻のダイアナそして息子のチャールズと雌の黒猫エデンと共に幸せな生活を過ごしていた、茶色がかった金髪をいつもセットしていて髭もいつも剃っている。アイスブルーの目は知的ですらりとした長身に冷静な顔立ちが実に銀行員らしい。
 ある日彼は仕事を終えた帰り道にだった。
 一匹の茶色の毛の猫が車に轢かれて横たわっているのを見た、最初死んだかと思ったが近寄ってみるとだった。
 まだ息があった、それで彼はすぐに猫を拾ってスマートフォンで近くの動物病院を検索してそこに入り。
 そのうえで猫を診てもらった、すると。
「ここに連れて来たのが早かったので」
「助かりますか」
「大怪我ですが」 
 それは事実だがというのだ。
「大丈夫です」
「よかったです、それは」
「ただ野良猫ですね」 
 獣医は彼にこのことを問うた。
「左様ですね」
「はい、それは」
 その通りだとだリチャードは獣医に答えた。
「首輪がないですから」
「では里親を探す必要があります」
「そうですね、では家族と相談します」
「貴方がですか」
「一度」
 こう言って実際にだった、
 猫は退院まで預かってもらって彼は家に帰って家族と話をした。するとブロンドを奇麗にセットした緑の目で明るい顔立ちの妻が言った、背は一六〇程でスタイルもいい。
「そうね、放っておけないし」
「家族にしていいんだね」
「そう思うわ」
「僕もだよ」
 父の髪の色と母の目の色を受け継いだ息子も言ってきた、顔立ちは父親似だ。
「もう一匹ね」
「そうか、じゃあエデンはどう思う」
「ニャア」
 家族が夕食を摂りながら話しているテーブルの横にいた彼女は寝そべっていた、だが好きにすればという感じの返事で。
 尻尾も振った、リチャードはその彼女の返事も見て言った。
「よし、じゃあな」
「その子もなのね」
「家族にしよう」
 妻に笑顔で応えた、そうしてだった。
 その猫を家族に迎えた、猫は雄でサウロと名付けられた、だが彼はいつもふくれっ面をしていた。
「面白くなさそうだな」
「いつもね」
 夫婦で家に来た彼を見つつ話した、だが。 
 サウロはその彼等のところに来てだった。
 身体を摺り寄せてきた、そして愛想よく顔を見上げて鳴いてきた。
「ニャ~~~ン」
「けれどそれでもな」
「愛嬌はあって人懐っこいわね」
「いい子だな」
「顔立ちはそうでもね」
「そのふくれっ面もそのうち愛嬌になるだろうし」
「いいわね」
 サウロを見ながら笑顔で話した、実際に彼はエデンとも仲良くなって家族にいつも懐いて愛嬌があった。
 それで家族は彼をエデンと同じだけ愛する様になった、だがサウロが家に来て暫く経ってからだった。
 今度はダイアナがだった。
 買いものの帰りにだった。
 血溜まりの中にいる茶と黒の虎模様の猫を見た、血溜まりを見てこれは駄目だとまず思った。だがもしかしてと思い。
 すぐにその猫を助け上げて病院に連絡をしてそこに駆け込んで診てもらった、だが獣医は彼女にこう言った。
「後はこの子の頑張り次第です」
「そうですか」
「はい」
 そうした返事だった。
「ですから」
「後はですね」
「神とこの子次第です」
「わかりました」
 ダイアナは応えた、そして。
 猫を病院に預けた、そのうえで夫と息子に話すと二人はそれぞれこう言った。 
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