イベリス
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第五話 入学間近その三
「今もね」
「飲んでるのね」
「そう、それでね」
そのうえでというのだ。
「背も高くなって」
「胸もなの」
「大きくなったらなってね」
「そうなのね」
「駄目?」
「いいわよ」
母の返事はあっさりしたものだった。
「別にね」
「そうなの」
「だってね、牛乳身体にいいから」
「それでなの」
「ジュース飲むよりね」
「牛乳の方がいいから」
「好きなだけ飲んだらいいわ」
こう娘に言った。
「そうしたらいいわ」
「それじゃあね」
「ええ、どんどん飲んでね」
「そうするわね」
「それじゃあね」
「まあ胸はね」
母はこうも言った。
「兎も角として背もね」
「伸びないの」
「そうなるかもだけれど」
「それでも飲んでいいの」
「だから身体にいいからよ」
それ故にというのだ。
「どんどん飲みなさいね」
「それじゃあね」
娘も頷いて答えた。
「そうするわね」
「飲んでね」
「これからもね」
「お酒よりもよ」
母の目がここで注意するものになった、そのうえでの言葉だった。
「牛乳よ」
「そこでそう言うの」
「言うわよ、牛乳は栄養の塊なのよ」
「だから背も伸びて胸もなのね」
「そうでなくても蛋白質とカルシウムの塊だから」
そう言っていいものだからだというのだ。
「筋肉にも骨にもなるから」
「お酒よりもなのね」
「飲むべきよ。だからどんどん飲みなさい」
遠慮せず、そうした言葉だった。
「そうしなさい、また言うけれどお酒よりもよ」
「お母さん私にお酒飲んで欲しくないのね」
「当然よ。飲み過ぎは身体に毒だし」
母は娘にさらに言った。
「あんたそもそも未成年でしょ」
「もうすぐ高校生で」
「だから尚更よ」
「あまり飲まない方がいいのね」
「そう、本当にお酒よりもね」
「牛乳をなの」
「飲みなさい。あとビタミンは」
こちらの栄養はというと。
「お茶を飲むことよ」
「お茶なのね」
「飲みもので摂るならね」
「お野菜や果物以外に」
「そう、飲むならお茶でね」
それでというのだ。
「摂るのよ」
「お茶もいいのね」
「そう、だからお母さんはお水を飲むよりも」
「牛乳やお茶なの」
「そうしたものを飲んで」
そしてというのだ。
「摂ってね」
「そういうことね」
「ええ、いいわね」
娘のその顔を見て言うのだった。
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