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イベリス

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第四話 家でこっそりとその九

「ちょっとね」
「わからないの」
「血生臭いとは思うけれど」
「私も知らないわよ」
 咲は咲でこう答えた。
「ヤクザ屋さんの世界は」
「そうでしょ」
「あの動画観たけれど」
「あれは悪い人達のサンプルでね」
「お姉ちゃんも観たことはないの」
「映画はね。というかヤクザ屋さんイコール悪い人で」
 それでというのだ。
「中の世界がどうとか抗争とか」
「知らないの」
「悪事の種類は頭に入れてるけれど」
 それでもというのだ。
「これといってね」
「映画は知らないのね」
「創作とかはね」
「それで中のやり取りも」
「そうなの」
「ええ、けれど新選組ってそうなのね」  
 愛はマイクを持ったまま言った。
「武士じゃなくて」
「何でもね」
「ヤクザ屋さんみたいなのね」
「そう聞いたわ」
「成程ね、まあ殺し合いばかりだしね」
「池田屋もそうだしね」
「それで中でも粛清ばかりでね」
 それでというのだ。
「血生臭いのは確かね」
「恰好よくてもね」
「それね、実際はね」
 新選組のそれはというのだ。
「やっぱり理想とかに燃えてるんじゃなくて」
「幕府への忠義とか武士道とか」
「それよりもね」
「もっと人間同士がぶつかって」
 そしてというのだ。
「エゴとかも剥き出しで」
「必要なら殺し合う」
「そうしたね」
 まさにというのだ。
「世界だったみたいよ」
「そうなのね」
 こうした話をしてだった。
 二人はまたそれぞれ数曲ずつ歌った、そして。
 そのうえでだ、愛はもう二杯飲んでいた咲に問うた。
「どう?今」
「ううん、もう結構ね」
「酔い回ってきた?」
「少しは」
「少しなのね」
「そんな感じになってきたわ」
 こう話した。
「何かね」
「まあね、ビールだと五百八本分はね」
 それだけはというのだ。
「飲んでると思うから」
「酔ってなの」
「当然よ」
 それだけ飲めばというのだ。
「やっぱりね」
「そうなのね」
「というか十五でそれだけ飲めたら」
 それならとだ、愛はさらに言った。
「お酒はいいわ」
「充分?」
「十二分よ」
 そこまでというのだ。
「もうね」
「そうなの」
「立派な酒豪よ」
 従妹に微笑んで話した。 
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