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猫のきおく

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シーン11

 少し、日差しがやわらかくなってきた頃、その日は朝からお父さんお母さんかけると三人で車に乗って出て行った。俺は庭の木陰から見送った。すずりチャンはどうしたかなと思いつつ。しばらく、見なかった黒カラがいつもの場所に戻ってきた。

 木陰でうずくまっていると、道路からすずりチヤンが呼び掛けてきた。「ブチ ブチッ散歩にゆくよー」って。つばの大きな帽子をかぶって、今日はひざ下までのズボンで底の厚いサンダルに編みあげたバックを肩からさげていた。声をかけるなり、坂道のほうに歩き出した。俺は、トットットと後を追いかけてついていった。すずりチャンは濃い茶のリボンで髪の毛を結んでいた。ときおり後ろを振り返っていたが、俺がついてきているのかを確かめているのかな・・・。

 あの公園に入っていった。誰もいなかったせいか、ブランコブラブラしながら歌を口ずさんでいるようだった。俺は何かの匂いを探すでもなく、植え込みの下を歩き回っていた。

 水色の服を着た女の子がすずりチャンに手を振りながらやってきた。髪の毛は長いが、結んでなくて、広がって風になびいていた。すずりチャンの隣に座って笑いながら話し込んでいる。たぶん友達なんだろうね。二人は大きな樹の木陰のベンチに移って、水色の女の子がバックから二つとりだして、二人で飲んでいた。ときたま、二人とも楽しそうにキャーキャーと大きな声で笑っていた。なんだか周りも光って見えた。

 「プチ、プチッ」って呼ぶので、すずりチヤンの近くに姿を見せて、お愛想でニャーと泣いた。その女の子が「可愛いー」って言ってくれた。優しそうなので、安心してすずりチャンの方にすり寄ると、その女の子が俺の頭をなでて、又、「可愛いねぇー」と言っている。少し、うれしかったかな・・・。
 
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