石の格
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第四章
「ここに千年前からあるな」
「千年もなの」
「そうだ、しかし上の小石は出来て一年か二年、魂も持っていないひよっこだ」
そうだというのだ。
「そんなひよっこに上にいられてだ」
「悲しいのね」
「だから泣いているのだ」
「いや、その石もね」
天は岩に言った。
「同じでしょ」
「同じとな」
「そうよ、この石も千年経ったらね」
そうなればというのだ。
「あんたみたいにね」
「見事な岩になるというのか」
「大きさはどうかわからないけれど」
それでもというのだ。
「喋る位にはね」
「魂を持ってか」
「そうなるでしょ」
こう言うのだった。
「やがてね」
「そうなのか」
「石の大きいのが岩なら」
それならというのだ。
「あんたが上なの」
「大きいぞ、わしは」
「じゃあ岩は大きければ大きい程いいの」
「違うか」
「それを言ったらあんたダイヤモンドより上?」
「金剛石か」
「宝石にね」
天は岩に問うた。
「どうなの?」
「それを言われるとな」
岩は空に口ごもって返した。
「どうもな」
「弱いでしょ」
「宝石は輝くからな」
「そうでしょ」
「それによ」
今度は夏織が言ってきた。
「こそこそ岩ってあるわね」
「むっ、その岩か」
「あの岩はどんなに小さくても磨いていけば」
その岩をだ。
「中にお魚いるわね、お水の中があって」
「よく知ってるな」
「子供の頃妖怪の本で読んで知ってたわ」
「そうなのか」
「その岩とあんたはね」
「あの岩と比べるな」
こそこそ岩と、とだ。岩は夏織にも言い返した。
「流石にな」
「そうでしょ、結局岩とか石とかの格なんてね」
それこそというのだ。
「意味ないわよ」
「そう言うか」
「そうよ、別にね」
「では言うことは」
岩は二人に問うた。
「そんなことで泣くなか」
「そうよ、どうってことないでしょ」
「石の一個位ね」
「むしろ喋って魂持ってる位なら」
「千年生きてるんだし」
岩で二人に話した。
「それならね」
「ちょっとは心を広く持ちなさいよ」
「そうあるべきか」
「そうよ、いいわね」
「というか上でうんこされるよりましでしょ」
「うんこだと、冗談ではない」
岩はそれはと聞いて怒った。
「しようものならわしも怒るぞ」
「実際今怒ってるしね」
「そうなってるしね」
「そうじゃ、論外じゃ」
「それより遥かにましと思えば」
「何ともないでしょ」
「それはそうだな」
岩もここで納得した。
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