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種族は猛獣でも

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第一章

                種族は猛獣でも 
 その子は彼等を見てまず言った。
「無茶苦茶怖いよ」
「そう思うね」
 ジョージア州のアニマルシェルターノアの箱舟でのことだ、スタッフの人は怖がった子供に対して笑顔で答えた。
「この子達は」
「だってね」
 子供は彼等を見つつ答えた。
「ライオンに虎、熊だよ」
「猛獣ばかりだね」
「三匹共だから」
 それでというのだ。
「もうね」
「そうだね、けれどね」
「怖くないんだ」
「そうだよ」
 こう言うのだった。
「この子達はね」
「そうなんだ」
「とてもいい子達なんだよ」
「そういえば」
 ここで子供も気付いた。
「三匹共一緒にいるね」
「身体を寄せ合っているね」
「うん、とても仲がいいね」
「三匹共とても仲がよくて」
 スタッフの人は子供にさらに話した。
「僕達にも優しいんだよ」
「そうなんだ」
「そうだよ、だからね」
 それでというのだ。
「君も安心してね」
「観ていいんだ」
「彼等はね、ここにいれば安全だしね」
 万が一もないというのだ。
「このままね」
「観ていていいんだね」
「楽しくね」
 子供に笑顔で話した、そしてだった。
 スタッフの人は子供に彼等を見せた後でだった。
 彼等のところに行ってそのうえでご飯をあげたが。
 実際に彼等は大人しかった、スタッフの人はまずは熊、クロクマに声をかけた。
「バルーご飯だぞ」
「ガウ」
「シアーもだよ」
「ガルッ」
 今度はライオンに声をかけた、最後に虎に声をかけた。
「カーンもだよ」
「ガルル」
 三匹共彼の前に集まっていた、柵の向こうからご飯をあげる彼に随分懐いている。安全対策はされているがその必要がないまでに懐いている。
 その彼等にご飯をあげてスタッフの人は同僚に話した。
「いい子達ですね」
「本当にそうですね」
 同僚も応えた。
「不幸な過去がありましたが」
「それでも」
「まさかです」
 三匹にご飯をあげながら話した。
「麻薬組織に飼われていて」
「それでずっと虐待されていたなんて」
「生まれてすぐから」
「酷いことですね」
「種族は猛獣でも」 
 それでもというのだ。
「生きものです」
「生きものなら心があります」
「命ですよ」
「その命をいじめるなんて」
「やっていいことと悪いことがあります」
「あの組織が摘発されてよかったです」
 そうなってというのだ。 
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