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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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A's編
  第六十四話 新たな力の起動   ★

 先日の海鳴スパラクーア以降はなのは達とシグナム達が会いそうになる事もなく、平穏に時は流れていく。

 プレシアに闇の書の動向や資料を調べてもらっているが、相変わらず対策は思いつかない。
 シグナム達は他世界のリンカーコアを持つ大型動物達からも魔力を集めているという情報を聞いたが、管理局は痕跡などは見つけることが出来ても、はやての事やシグナム達の完全な補足には至っていない。

 結局ただ日々が過ぎてしまっている。

 学校が終わり、いつものように帰る準備を始める。
 今日はバイトも入っていないから、図書館でも行ってみるか。
 もしかしたらはやてに会えるかもしれない。

 そんな事を考えていると

「士郎、今日大丈夫?」
「ああ、バイトもないし大丈夫だが」

 フェイトに話しかけられる。

「バルディッシュとレイジングハートが戻って来るから今日本局に行くんだけど一緒にどうかな?」
「ああ、俺は構わないぞ」

 図書館はまた今度だな。
 最近会っていないはやてに内心で謝りつつ、フェイトの言葉に頷く。

「お待たせ。
 士郎君も一緒に来るの?」
「ああ、今日は特に予定もないからな」

 レイジングハートを迎えに行くならなのはが行くのも当然だな。
 三人で習い事のあるアリサとすずかに別れを告げて帰路につく。
 それはそうと

「なのは、リンカーコアの調子はどうなんだ?」
「ユーノ君に診てもらってるけど、順調に回復中だよ。
 今日、一緒にお医者さんにも診てもらうから」
「そうか。
 完治しているといいな」
「うん」

 分かれ道で個人的に制服のまま行くのは考えどころなので一旦別れて、服を着替えてフェイトの家に集合となった。
 特に俺は赤竜布の外套は別だが、最初から着ていなければ、着替える事も難しい。

 戦闘時のズボンと長袖のシャツを着て、私服のコートを纏う。
 本当に戦闘になったら赤竜布は投影すればいい。

 そして、フェイトの家で皆と合流して本局へ転送ポートで移動する。

「じゃあ、僕たちはデバイスを受け取ってくるよ」
「私は検査だから後でね。
 士郎君は?」
「俺はなのはに付き合うよ。
 と言っても診察室の入り口までだけどな」

 フェイトとアルフ、ユーノと別れて、なのはと共に診察室に向かい

「それじゃ、外で待ってるから」
「うん」

 なのはが診察室に入るのを見届けて近くの窓から外を眺める。
 地球は冬だが本局は違うのでコートは脱いで手に持っているから暑くはないが

「上着は持ってきた方が良かったか」

 元は普通の服とはいえ、戦闘用のモノなのでこれを着て堂々と立っているのもどうかと内心思う。

 そこに近づいて来る人の気配。
 気配は三人。
 うち一人は

「お久しぶりです。グレアム提督」

 言葉を発してからゆっくりと視線をグレアム提督に向ける。
 そして、グレアム提督の数歩後ろに立っている二人の女性。
 リンディさんやエイミィさんが着ている制服とは違う黒い服に、耳に尻尾。
 グレアム提督の使い魔か?

「久しぶりだね。士郎君。
 今日はどうしたのかな?」
「なのはとフェイトの付添です」
「なのは君とフェイト君の?
 ああ、デバイスの修復の件か」
「はい。ところで提督。
 後ろの二人は?」
「ん? ああ、初対面だったね。
 私の使い魔のリーゼアリアとリーゼロッテだ」
「リーゼアリアよ。よろしく」
「リーゼロッテだ」

 会釈をする二人に会釈をし返す。
 それにしても二人には警戒されているようだ。
 特にショートヘアーの方、リーゼロッテには

 会った事はないはずだが、気になる事もある。

 彼女達の耳や尻尾を見る限り素体は猫のようだが、我が家の近くにいた猫の毛と色が同じという点だ。
 だがこれから会うかもしれない人間の前にわざわざ現れるとも思えない。

 アルフのような珍しい毛色の犬が仔犬で出会えば、人の姿をしていても耳や尻尾から正体がばれる可能性が無いとはいえない。

 それなら変身魔法で毛の色も変えるだろう。
 そんな事を考えていると

「ところで士郎君。
 模擬戦をしてみる気はないかね?」

 模擬戦?
 ずいぶんと唐突だな。

「ずいぶんと唐突ですね」
「何、前から考えていたんだ。
 クロノとの模擬戦の記録映像は見せてもらったが、もっと君の実力を知りたくてね。
 アースラ内の狭い訓練場などではなく、もっと広いところでどうだろう?
 勿論、私やリンディのように君の秘密を知っている者にしか見せないと約束する」

 さて、この申し出どうしたものか。

 恐らくは俺の事を警戒しているというのもあるのだろうが、俺の実力を測りたいという思惑もあるだろう。

 俺の情報はリンディさんからの話とクロノとの模擬戦だけなのだから。
 この前のシグナム達の結界を破壊したゲイ・ボルクの一撃は、あくまで一撃の重さであり、俺の戦闘技能はわからない。
 しかし

「申し訳ないですが、お断りします」
「そうか、残念だ」

 断られるのがわかっていたかのように頷くグレアム提督。

 そもそも今の状況でその話を受ける事はできない。

 俺という存在は上層部の中ではかなり有名になっている。
 その一番の原因はゲイ・ボルク。

 時の庭園の時とは違い、アースラの監視があった中での宝具の使用。
 そのデータを提出しなければリンディさん達の立場が危うくなる。

 俺ともっとも関わりの深く、信用のできるリンディさん達と交流が断たれるのは避けたかったので、提出も承諾した。

 それにここで模擬戦となれば間違いなく、管理局にばれる。
 アースラのような船内という隔離された所ならまだしもここは管理局の本局だ。
 完全に隠し通せるはずがない。
 その状況で俺の模擬戦データを提出しない訳にはいかないだろう。

 そんな事はグレアム提督もわかっているはずだ。
 あえて俺の情報を少し見せる事で管理局の上層部を満足させるつもりなのか、断るとわかっていて質問をして、俺よりの人間ではないとアピールしているのか。
 意図はわからないが、やはりこの人はリンディさんやレティさんのように完全に信頼は出来ないな。

 そんな時廊下の向こうから駆けてくるフェイト達。

「仕方がない。
 また今度の機会にお願いするとしよう」

 踵を返すグレアム提督とそれに続くリーゼ姉妹。
 リーゼロッテは最後まで睨んでいたが。

「士郎、お待たせ」
「そんなに待ってないよ」

 うれしそうな笑みを浮かべたフェイト達を迎える。

「今のってグレアム提督だよね」
「ああ、ちょっと挨拶をな」
「ふ~ん」

 アルフは本能的にリーゼロッテが放っていた敵意に気がついてるのかもしれないな。
 そんな時

「ありがとうございました」

 扉の向こうからなのはの声が聞こえた。
 こちらも終わったようだ。

「お待たせ」

 満面の笑みを浮かべて検査室から出てくるなのは。

「どうだった?」
「無事、完治!」

 なのはの答えにその満面の笑みの通りだと思いながら

「相棒の方も無事完治したみたいだしな」
「士郎、知ってたの?」
「フェイトの表情を見ればわかるさ。
 なのはも病室から出た時点でわかったからな」
「そんなわかりやすいかな」
「にゃはは」

 俺の言葉に顔を少し赤らめるフェイトとなのは。

「はい。なのは」
「ありがとう、ユーノ君。
 レイジングハート、またお願いね」
「Yes, my master」

 本局の用も終わったし、こちらを監視している目もあることだ。

「それじゃ戻るか、なのははフェイトの家に泊まるんだろ?」
「うん。その予定だよ」
「ならフェイトの家で腕を振るわせてもらうよ」
「プレシア母さんと士郎も泊まる?」
「プレシアはまだしも俺はな……」

 さすがに女の子の家に泊まるのはどうなのだろう?

 のんびりとこの後の予定を話しながら転送ポートに向かって歩き始めた。




side リンディ

 士郎君達があとどれくらいで帰ってくるのか、聞いてみようとエイミィのオペレーション室にいったら

「そうよかった。
 今どこ?」
「二番目の中継ポートです。
 あと十分ぐらいでそっちに戻れますから」
「そう、じゃあ、戻ったらレイジングハートとバルディッシュについての説明を」

 その時、急に鳴り響くアラート。

「エイミィ」
「はい!
 至近距離にて緊急事態」
「武装隊に指示を出します。
 通信を開いてちょうだい」
「了解」

 エイミィはすぐに通信モニターを開いてくれる。

「状況の報告を」
「都市部上空にて捜索指定の対象二名を補足しました。
 現在、強装結界内部で対峙中です」

 場所はここからそんなに離れていない。
 この前といい、海鳴の時といい魔法技術のないこの世界で二回。
 それも近い位置で補足したという事は、案外近くに潜伏しているのかもしれないわね。

「相手は強敵よ。
 交戦は避けて外部から結界の強化と維持を」
「はっ!」
「現地には執務官を向かわせます。
 エイミィ、クロノに連絡を取ってちょうだい」
「了解」

 そんな時

「リンディさん、横から失礼します。
 なのは達もそちらに向かうと言っていますので、俺も参加させてもらいます」
「ええ、士郎君もいると心強いわ。
 ぜひ、お願い」
「はい。
 ユーノ、このコートをフェイトの家に転送しておいてくれ」

 手に持つコートの中から取り出すように赤い外套を取り出し、纏う士郎君。

 コートを送っておいてくれって、士郎君の言葉に少し気が抜けてしまった。

「士郎君にも着替えと通話用にデバイスを持たせた方がいいかもしれないですね」
「そうなると記録機器をつけろって言ってくるだろうから、難しいのよね」

 苦笑しながらのエイミィの言葉にため息を吐く。
 士郎君が嘱託にでもなってくれればまた違うのでしょうけど。

 なかなか思い通りにはいかないものね。




side 士郎

 手に持つコートのポケットから取り出すように赤竜布を投影し纏う。
 コートは

「ユーノ、このコートをフェイトの家に転送しておいてくれ」
「うん、わかった」

 念のため戦闘用の服を着ていて正解だったな。
 それにしてもやはりデバイスの用に一瞬で戦闘用の服を纏う事が出来ないというのは便利が悪い。

「エイミィさんから、座標情報も貰ったからいくよ」
「ああ、頼んだ」

 光が俺達を包みこむ。

 そして光が収まった時、魔力の気配を感じ、上を見上げると

 クロノとその周りに浮かぶ青き剣。
 それを見上げるヴィータとザフィーラ。

「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト」

 振り下ろされた杖を合図に降り注ぐ剣の雨。

 一歩前に出て防御をするザフィーラ。
 ザフィーラとぶつかりあい爆発する剣。

 俺のソードバレルと似ているな。

 そして晴れた爆煙から出てきたのはヴィータとザフィーラ。
 ザフィーラの腕には剣の破片のようなのが数本刺さっているが、それもすぐに砕けて消えた。

 ダメージはほぼ無いか。

 その時、ヴィータとザフィーラも俺達の存在に気がつく。

 ビルの屋上にいる俺とアルフ、ユーノ。
 そして少し離れたところに立っているなのはとフェイト。
 その手には完治して戻ってきた相棒がある。

「レイジングハート」
「バルディッシュ」
「セーット・アーップ!」

 二人の相棒が輝き、二人は光に包まれた。



side out

 デバイスの光に包まれるなのはとフェイト。
 その中で

「え? これって」
「今までと違う?」

 今まで見せた事のない相棒の動きに困惑の表情を見せる二人。

 そんな二人をフォローするように

「二人とも落ち着いて聞いてね」

 エイミィからの通話が入る。

「レイジングハートとバルディッシュに新しいシステムを積んでるの。
 その子たちが望んだの。
 自分の意思で、自分の思いで」

 エイミィの言葉で勝つために、守るために自分達に応えようとしてくれる自身の相棒を改めて見つめる二人。

「呼んであげてその子たちの新しい名前を」
「Condition, all green. Get set.」
「Stand by ready.」

 そんな二人の呼ぶ声を待つように準備が出来た事を告げる相棒達。

 その声に応えないはずがない。

「レイジングハート・エクセリオン!」
「バルディッシュ・アサルト!」
「Drive ignition.」

 その呼び声に応え、二人は新たなバリアジャケットを纏う。
 相棒達も自身の新たなる姿を現し、主の手の中で



「Assault form, cartridge set.」
「Accel mode, stand by ready.」

 戦いの準備を終えた事を伝えていた。 
 

 
後書き
遂ににじファン時代で未掲載に突入しました。

ここまでもう少し時間かかるかと思いましたが、意外とスムーズといって安心です。

挿絵は貫咲賢希さんから頂きております。

あとはこのままペースを更新ペースを維持できればいいな~とは思っています。

それではまた来週お会いしましょう。

ではでは 
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