どうして行き来しているのか
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第一章
どうして行き来しているのか
ブラジルサンパウロでのことだ。
ルチア=ヘレナ=ド=スーザアフリカ系の夫と共に暮らしている面長の浅黒い肌の中年女性の彼女は夫と共に家に十三匹の犬そして三十匹の猫を育てていた、どの子も身寄りがないのでそれで面倒を見ているのだ。
「うちはそれだけの金も人手もあるから」
「これだけの犬や猫を育てられるな」
「ええ、けれどね」
「これが限界だな」
「流石にね、けれどね」
それでもとだ、妻は夫に話した。
「助ける位はね」
「出来るな」
「人も犬も猫も命だから」
「命は大事にしないとな」
「出来る限りのことをしてね」
そうした話をしてだった。
夫婦は家族と共に犬や猫を助けていった、その中で。
夫婦はリリカと名付けた雌の野良犬茶色の毛の痩せた耳が立っている彼女が来るといつも餌をあげていた。だが。
その彼女を見て夫に話した。
「あの子だけれど」
「ああ、リリカだな」
夫も彼女のことは知っていた。
「あの子はな」
「ええ、ご飯あげたら」
「随分と奥まで歩いてくな」
「お家まで遠いのかしら」
「ちょっと気になるな」
「だから確かめてみましょう」
「そうしようか」
夫婦で話してだった。
二人はある日リリカにご飯をあげると。
彼女の後をついて行った、見れば。
リリカは車の行き来の多い道を進んでいった、そして廃品置き場に着いたが。
「三キロ以上あったな」
「往復で六キロ半はね」
「随分長いな」
「車も多かったし」
「危なかったな」
「本当にね」
夫婦で廃品置き場に入ったリリカを観つつ話した、見れば。
リリカがそこに入るとだった。
「ワン」
「ワンワンッ」
「ニャア」
「コケッ」
「ヒン」
リリカが鳴くと犬だけでなく。
猫や鶏、ラバまで出て来た、そしてだった。
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