ソードアート・オンライン 剣が有るなら盾も必要じゃない?
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剣と盾
デスゲーム始動
再開
前書き
再会できた貴方には毎度おおきに。初めての貴方は、これからよろしくお願いします。
再開です。再開するんです。
では、始まります。
恥ずかしいトラブル。訳して恥ずブル。
出オチである。
さて、この世界で感動の再開を果たした俺たちは、あの嬉恥ずかし空間から離脱を果たして、比較的人通りの少ない場所の花壇に腰掛ていた。あれから暫く経ったおかげで、互いに違った意味で混乱していた思考が落ち着いてきた所だ。
「あの、お、おにい。」
「待て、この世界でそれは不味いよ。俺の事はシルドと呼ぶように。」
まだ、妹は落ち着いていなかった。いや、落ち着いていても俺の事を現実世界の呼び方で称していただろう。やはりこういった仮想世界の経験が無いのだから仕方がない事だ。そういった所をフォローする為に、俺は今この子の傍にいるのだから。
「あ、はい、えぇと、その、シルドさん、先はありがとうございます。」
「いや、あのな、呼び方は変えなきゃなんないけど、俺に対してはさんは付けなくてもいいし、喋り方までそんな事にならなくてもいいんだよ?」
物凄く丁寧にお礼を言われた。むず痒過ぎて思わず可愛い物を見た時の笑みが浮かんでしまうが、妹の思考はそうでもないらしく、俯いてしまったその表情には少しばかりの影が挿す。
いかん、落ち込んでいる相手。更には真面目な相手が落ち込んでいる場合は、冗談でも戒める様な事を言うべきではなかった。
空気を変えねば。
「なぁにを暗い顔してますか、シリカちゃんは。」
うりうりと、少し乱暴に、その精神的に凹んでいる頭を撫で繰り回す。
「あのな、もっと色んな事を、一杯失敗していいんだぞ?俺だって最初は色々と失敗して、その度に色んな事を覚えてきたんだ。それに、その失敗を教えるのが俺と来たもんだ。遠慮せずに失敗しまくれ。その度に俺が何とかするから。その内に勝手に慣れてくるさ。」
出きるだけ明るく声を掛けてやると、落ち込んでいた顔を上げて遠慮気味に頷いて返してきた。まだ完全復活とまではいかないが、先よりかは精神的にましになったのを確認すると、立ち上がてシリカに手を差し出す。
「じゃあ、早速色々と見て回りますか。街を見て回るだけでも凄く楽しいぞ。」
少し過剰演出気味なフェイスエフェクトは、俺の感情を正確に読み取ってくれているのだろう。今の俺の表情は満面の笑みになっている筈だ、その筈だ。
一瞬呆けた表情になったシリカは、次いでその表情を俺と同じ笑顔に変えて、元気よく「はい。」と答えて手を握ってきた。
始まりの街の商店街。
所狭しと並ぶ商店。色取り取りのテント屋根と、現実世界では見る事も無いであろう品々が並ぶ其処は、既に数多くのプレイヤーでごった返していた。
その中の2人である俺たちは、少し歩いては店に並ぶ品々に目を向けている。その度に営業スマイルを向けて「何をお求めでしょうか?」と声を掛けてくるNPCを無視して、シリカに色々とレクチャーしている所だ。
因みに、シリカが最初に話しかけてきたNPCに、律儀にも返事を返したのは言うまでもない。
「ほれ、商品にこうやって指を振ってみな。」
説明しながら、目の前で人差し指と中指の2本を縦に振って実演してやると、俺の目の前に、店の商品がリスト化された紫色の半透明なディスプレイが現れる。真似た動作で、何所かぎこちなくも指を振った彼女の目の前にも同じ物が出てくる。
それを見た彼女は、これで?と言いたげな表情を向けてくる。
「基本的に、その店で売ってるものは、こうやって並んでるから目には見えるんだけど。それがどんな物かってのを知る為には、商品名をタッチして内容を見る他には無いんだ。
ここは、装飾品の店だから、指輪とかイアリングにブレスレット、ネックレスなんかも売ってる。興味の有る名前をタッチしてみな。」
黙って頷くと、リストの一番上の名前に指を触れる。
新しく表示されたディスプレイには、銀の指輪と言う商品名の他に、装備する事で銀の指輪が任意の指に装備されます。と書かれている。それと同時に、彼女の目には店頭に並んでいる商品の1つに矢印のアイコンが出ていることだろう。
おれも同じ物をタッチして商品の説明文に目を走らせる。
「こうやって、商品の内容と、その見た目が解るわけだ。これは、ほんとに唯の指輪だな。本当は身に付ければ色んな効果が付くのが当たり前なんだけど、何の効果も無いって逆に珍しいな。なんに使うんだ?これ?」
教えている立場の俺自身も、何の意味が有って態々こんな唯のアクセサリーが存在しているのか解らずに居ると、妹はそんな事は知らんとばかりに、次々と商品名をタッチしては説明文と商品に目を走らせていく。
その表情は実に楽しそうでいて真剣である。
俺も最初はこんなんだったな。と感傷に浸りつつ、未だにディスプレイを真剣に見つめる彼女に声を掛ける。
「さて、装飾品もいいけど、この世界での一番の目玉を見に行こう。」
ディスプレイから此方に向けられたその表情は、それはもう眩しい位に輝いていた。
プレイヤー達が犇く商店街から外れ、裏路地えと足を向る。建ち並ぶ建物の影の所為で、少し薄暗さのある通路を抜けると、見覚えの有る2本の剣を交差させた看板が目に入る。その店は商店街に有った出店のような物とは違って、立ち並ぶ建物の中にあって、俺も教えて貰うまでは知らなかった店だ。
βテスト版と同じ造りになっていた事に安堵しつつ、それを表情に出さずに彼女の手を引いて店の中に足を踏み入れる。
「いらっしゃい。」
扉を開けると直ぐに声が掛けられる。声のした方に目を向けると、カウンター越しに立つ、褐色肌のむさ苦しい感じの鬚面のNPCが目に入る。これもβ版と同じか。
それと同時に視界の端に、NPC以外の人影を確認して目を向けると、2人の男の姿が確認できた。相手も此方を見ていたのか視線がぶつかる。
1人は赤み掛かった髪と赤いバンダナの男。もう1人は黒の髪に見た事の有るイケメェン。
「キリト?キリトか?」
「シ、シルドなのか?」
流石の俺も、これには驚いた。
同じβテスターなのだから、効率よく進んでいると、何所かでは会うだろうとは思っていたが、まさかこんなに早く、しかも始まりの街で会えるだろうとは夢にも思って居なかったのだから。
だが、思い返してみれば彼がここに居るのは当然と言えば当然なのかもしれない。何せここを教えてくれた相手と言うのが彼なのだから。
「そっか、そうだよな、インしたら、初期コル片手に、ここに来るのは当たり前だよな。」
「まぁな。」
短い会話の内にキリトに歩み寄ると、あの時のように手を差し出す。所謂握手の催促だ。
キリトは一瞬呆けた後に、視線を逸らして頭を掻くと手を握ってきた。
「握手ぐらいで照れるなよ、こっちまで恥ずかしくなる。」
「照れてねぇよ。」
映像化されたら、使いまわしかよとか言われそうです。
お互いに、あの時の別れの場面を、今度は出会いの場面で再演出した所で、どちらからともなく吹き出して笑い合う。
そんな俺達の行動を、直ぐ傍で見ていた赤いバンダナの男が声を掛けてくる。
「あぁと、その、リアルな知り合い?」
男は、自分の連れに、行き成りフレンドリーに話しかけた俺を見ながら聞いてくる。今日から始まったオンラインのゲームで、現実の姿ならまだしも、そうではないであろう姿を確認した瞬間に、ここまで親密な態度で接しているのだから。現実の姿か何かを照らし合わせていると思うのは当然だ。
「いや、違いますよ。キリトとはβテストの時に知り合ったんです。俺はシルド。先にも言ったけどβ上がりです。」
手を差し出すと、キリトと同じように頭を掻きながらも笑顔で握手をしてくる。
「ども、俺はクラインって言います。フルダイブ自体が初めてな、超が付く初心者っす。」
へこへこと頭を上下させる彼は、言葉通りに初心者のだろう。と思った所で、うちの初心者を忘れていた。
忘れていた俺よりも、先に気が付いたキリトの視線が、後ろで小さくなっているであろう彼女に向けられる。視線で彼女は?と聞かれたので、いそいそと彼女の手を半ば強引に引いて、輪の中につれて来て紹介する。
「彼女はシリカって言うんだ。この子は、あぁとその、俺のリアルな知り合いなんだ。」
2人は簡単な説明を受けると、「ほぅ。」と声を出し、その姿に再び視線を向ける。視線が恥ずかしかったのか、俯いてもじもじとした態度をとってしまった彼女に、少し困惑する2人に急いで事情を説明する。
「その、この子はオンライン自体が初めてなんだ。だから、いま色々と教えてた所なんだ。その、色々と大目に見てくれると助かる。」
俺の説明に納得がいったのだろう、2人は軽く頷いてくれた。同時にクラインが笑顔でシリカに手を差し出す。
「俺は、クラインって言うんだ、宜しくねシリカちゃん。」
差し出された手に、未だにどうして良いか解らずに、おろおろとしている彼女の肩に手を置く。そんな俺に視線が来るのを確認してから優しく頷いてやると、視線を差し出された手に再び向けた後、クライン自身とも視線を合わせる。
彼が、俺と同じく頷いたのを見ると、おずおずと手を握る。
「あの、シ、シリカって言います、その、よ、よろしくお願いします。」
「うん、宜しくね。」
本当に初心者?と思わずには居られない余裕の有る行動に、感心していると。クラインの視線がキリトに向かったのに気が付いて、俺もシリカも視線を向ける。
注目が集まった事に気まずさを感じたのか、その視線を軽く泳がせた後に手を差し出す。そのキョドリ具合を見る限り、どう見ても此方の方が初心者然としている。
「えぇと、キリトって言います、宜しく。」
実に恥ずかしそうだ。
先ので少しは慣れたのか、はたまた彼のキョドリ具合に余裕が出来たのか、今度は自然とその手を握り返して、笑顔で自己紹介をするシリカ。その笑顔に更に照れたのか、視線を逸らして頭を掻く。
それを見た俺とクラインが、顔を見合わせてから、悪戯な笑みを浮かべてこう言ったのは想像に難しくないと思う。
「握手ぐらいで照れるなよ。」
「握手ぐらいで照れるなよ。」
「照れて……ねぇ…ょ。」
返って来るであろう思っていた台詞が、今まで違って尻すぼみになって行くのを聞くと、俺たち2人はどちらからともなく笑い出し。仕舞いにはシリカまでもがクスクスと笑い始める。
笑い者にされたキリトには悪い事をしたけど、ここは妹の為に犠牲になってもらおうと、謝罪を込めて視線を向けると、そのキリト自身も軽く笑みを浮かべていた。
今しがた出会ったクラインもそうだが。やはり、彼は本当にいい奴だと思う。
後書き
終始、和やかを意識。
本当は、こう言った出会いがあり、和気藹々とした楽しいゲームなのだろう事を想像します。
だからこそ、裏返った時の驚愕や絶望が際立つと思うのでぇぇぇぇぇす。
はい、では次は狩です、狩に行きます。んでから茅場さんの出番です。
「早くしてくれ、私もそう暇では無いのだ。この役を終えた後は、アンパンが主人公の名犬を演じなければならないのだから。」
だそうです。出来るだけ早くしたいですねっ。ねっ。
では、また次回に会いましょう。
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