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ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-

作者:地水
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第1話:二つのデアイ

 
前書き
 ディケイド放送10周年、仮面ライダージオウにて10年ぶりにディケイド登場。
何かと愛されている仮面ライダーディケイド。
これは完結せず終わった『心残り』を夢見た物語。 

 
 曇天が覆う空が広がっており、その下では高層ビルが並び立つ都会の光景が浮かんでいる。
人々が行きかう大通りから離れた何処かの路上裏、人気がまったくなく薄暗い場所を一人の人物が歩く。
フードを目深に被り、ところどころに傷が見られた服装を着用した若い青年らしき人物は人目に付かない事を好んで入ったのか構わず進んでいる。

「………」

青年は何事も言葉を発せず進んでいる。目的地にはなく、ただ漠然とした感じで彷徨っているに過ぎない。
そんな彼の目の前に立ちふさがる者たちがいた……。

「目標補足、直ちに駆逐します」

「……またか、相も変わらずあきらめの悪さは折り紙付きだねえ」

『ライオトルーパー』……複数人の連隊からなる量産型の仮面ライダー達は目の前にいる男にコンバットナイフの形の武器・アクセレイガンを構える。
戦闘態勢をとった相手に対して、呆れた様子で青年はフードの奥でほくそ笑むと、一枚のカードを取り出す。
黒を基調とした仮面の戦士が描かれたライダーカードを構え、『彼』は彼らに言い放った。


「さぁ、こい。全て破壊してやる」


数分後、曇天から雨雲に代わり雨が降り始めるころ、男を取り囲んでいたライオトルーパー部隊は僅かな残骸を残して全て消え失せていた。
代わりにたった一人だけ立っていたのは、青い複眼を仮面に宿す黒い戦士だった。
黒い仮面の戦士は敵がいなくなったその場からゆっくりと離れていき、降り注ぐ雨の中へ姿は消えていった。




世界の破壊者ディケイド。
二つの出逢いを巡り、その瞳は何を見る?




前の世界での役目を終えて、次の世界へやってきた光写真館。
窓を開ければそこは近未来を思わせる建物が連なった街の光景が広がっていた。
その街並をフレームで狙いを定め、シャッターを押す一人の若い男性。

「新しい世界か。しかし、今までと違って妙なもんを感じるな」

窓から一望しながら呟くカメラを携えた茶髪の男の名は、『門矢士』。
またの名を『仮面ライダーディケイド』……いくつもの世界を掛け渡り、巨悪を打ち壊してきた仮面ライダーの一人だ。
つい先日に起きた"生まれ故郷の世界"で失った自分の過去と向き合い、いくつもの並行世界に侵略を企んでいた大ショッカーの戦いを繰り広げ勝利した。
大ショッカーが壊滅した後も、世界を巡る旅を続けている。
今回も例にもれず、次なるこの世界にやってきたのだが…。

「違うって私達が旅して来た世界とどう違うんですか?」

「さてな、何故だかそんな気がする」

何処かの違和感を感じ取る士へ、話しかける二人の仲間。
長髪の女性……『光夏海』と、青年……『小野寺ユウスケ』だ。
光写真館の主・光栄一郎の孫である光夏海は自由気ままに動く士の世話役。
小野寺ユウスケはかつて士が回った世界の一つ【クウガの世界】の住人であり、仮面ライダークウガだ。
彼らは士にとってはかけがえのない仲間達だ。
そんな彼らが疑問に思ったのは、背景ロールに描かれた絵の事だ。
背景ロールに描かれていたのは、暗闇が広がる空間とそこに舞い落ちる模様の入った羽根。

「しかし、これはなんでしょう……羽根、ですか?」

「模様書いてあるけど一体なんだこれ?」

「分からない以上、行ってみれば何か分かるだろう」

「まーた適当なこと言って、士も分かってはないんじゃないか?このこのー」

ユウスケは士の頭をわしゃわしゃとしながら、人懐っこい笑顔を向ける。
その笑顔を手で押しのけ、ユウスケを離すと士は身支度を始める。
目的は外に広がる街の様子を伺うためだ。

「そうだな、散策でもしてみるか」

「そうですね、行きましょう!」

「やっほう散策だー!」

「ほっほっほ、いってらっしゃい」

台所から首だけ覗かせている栄一郎を背に、士たち三人は街へと散策に出た。
彼らに待ち受けるのは『同じく旅する人々』とは知らず……。

――――――――

同じ頃、同じ世界の同じ街。
この世界の人々が忙しなく行きかう中、そこに風景が溶けるように歪みが生じる。
通りかかった人々はなんだなんだと思いながら見守っていく中、歪みが液体が弾けるように消え、その中から現れたのは……。

「ぷぅ!次の世界へ到着!」

「うわぁ、高い建物がいっぱいだねー」

「……おい、なんかこっち注目されてるぞ」

「小狼君大丈夫?」

「はい姫、おれは大丈夫ですよ」

この世界にやって来たのは、別の世界からやってきた旅人達。
玖楼国の考古学者の卵で真面目な少年・『小狼』。
玖楼国の姫君で優しい心を持った少女・『サクラ』。
日本国の不愛想で腕っぷしの強い忍者・『黒鋼』。
セレス国のいつも笑みを浮かべる魔術師・『ファイ・D・フローライト』。
そして一同を様々な世界へ導く謎の白い生き物・『モコナ・モドキ』。
彼らは様々な理由で共に様々な次元の世界を旅をすることになり、様々な次元に散らばったサクラの【記憶の羽根】を求めて旅をしている。
タオの国を後にした小狼達はその後もいくつもの世界へ赴き、記憶の羽根を回収してきた。
そして次にたどり着いたのはこの世界だった。

「おい、てめぇら見せもんじゃねえんだぞ!」

「どうどうどう、くろぴー落ち着いて。ほーら怖がってるじゃん」

「もしかして、私達の恰好が怪しまれてるのかな?」

「……一刻も早くこの場所から離れますか。騒ぎになっては困ります」

小狼達の言う通り、周囲には彼らを注目する人だかりができていた。
怪訝そうにこちらの様子を伺うもの、手持ちの携帯端末で写真を撮るものと人々の反応は様々であった。
そんな周囲をかき分けてやってきたのは、複数の軍服姿の人達を連れた眼鏡をかけた男。

「貴様達、一体何者だ。こんなところで騒ぎを起こしよって」

「何者…と言われましてもー。旅の者ですけど」

にこやかに答えるファイに対して眼鏡の男は舌打ちをうつ。

「おい、面倒だ。こいつら捕縛しろ」

眼鏡の男に命令されて、そのうちの一人がサクラに手を伸ばそうとする。
だがその腕を小狼の手が払いのけ、彼女の前に立ち塞がる。

「……その人に触るな」

「チィッ!あったまに来た!!おい、やっちまえ!」

眼鏡の男の指示をすると、軍服の人達が小狼達を取り囲む。
すると、軍服の姿が変わり始め、その姿を異形へと変える。
灰色の体色を基調とした怪人と、黒い体にステンドグラスのような模様が入った怪人。
二種類の怪人の出現に野次馬だった人だかりは蜘蛛のように散って去ってゆく。

「「きゃああああああっ!!」」

「なんだ?こいつら……化生の類か?」

「黒りん、人間じゃないないのは確かだよ」

「へっ、やって来て早々戦いなんつうのは」

黒鋼はモコナの口から吐き出された愛刀・蒼氷を手にし、勢いよく抜刀。
それによって巻き起こした突風を怪人達に浴びせ、何体かを近くの壁まで吹き飛ばした。
蒼氷を肩に担いだ黒鋼は怪人達へ目掛けて言い放った。

「かかってこい、バケモノ風情に負けるほどやわな鍛え方しちゃいねえ」

『『『グガァァァァァァ!』』』

挑発を仕掛けた黒鋼へ向けて襲い掛かっていく怪人達だが、黒鋼は蒼氷の刀身で攻撃をいなしながら、斬りつけていく。
一方、ファイは自分に襲い掛かってくる怪人の攻撃を躱しながら翻弄していく。

「黒ろんやるぅ!ひゅー!」

『てめぇっ!避けんじゃなねえ!!!』

「えー?でも当たると痛そうだしやだよー!」

怪人達が振るう武器を避けるファイ。その隣では小狼がサクラを守りながら、体術によって一体の怪人と応戦していた。

「くぅ!」

「小狼君!」

「大丈夫です姫、おれがあなたを守ります」

『グオオオオオ!!』

「―――ハァ!!」

突撃してきた灰色の怪人をジャンプして避け、その背中へと蹴りこむ小狼。
怪人は勢いあまって吹っ飛び、タイミングよくしゃがんだサクラを飛び越えて建物の中へ突っ込んだ。
壁にできた穴を恐る恐る様子を伺うサクラの元へ、小狼が駆け寄る。

「大丈夫ですか。サクラ姫」

「うん、小狼君凄い」

「うーん!小狼凄い!悪い奴らをやっつけるなんて!」

サクラの肩に乗っていたモコナが小狼を褒めたたえる。
そんな中、先程の眼鏡の男が再び現れて、二人を睨み付けながら舌打ちを打つ。
彼の傍らから出てきた砂の怪人と共に。

「チッ、ホントにイラつかせやがって…!!」

『おいおい、尚樹ィ?少しは落ち着けよ。面白いことしてるならオレに変われ』

「ふざけんなゴースト!こいつは俺の仕事だ!」

"ゴースト"と呼ばれた黒と緑を基調とした骸骨の怪人は、眼鏡の男――尚樹の制止を他所に大振りの剣を掲げて小狼達へ切っ先を向ける。
下卑た笑い声を上げつつ、二人へ歩んでいき迫りよる。

『お前達、オレを楽しませてくれるか?くれるだろうなぁ!!』

「小狼君!」

「姫…!」

サクラを庇いながら、小狼は目の前の怪人と向き合う。
やがてゴーストが刃を振り上げようとしたその時、その場にバイク音が鳴り響き、一同はある方向へ目を向ける。
そこには、二機のバイクがこの戦場へとたどり着いた。
二機のうちのバイクのハンドルを握っていた青年が、ヘルメットを脱ぎながら言い放った。

「随分と派手な歓迎だな。大昼間から怪人達が闊歩してるとはな」

「士、これの何処が歓迎かよ。初っ端から暴れてるじゃないか」

青年―――士は、怪人達がいる事も気にせず、飄々と涼しい顔で呟き、同行していたもう一人の青年――ユウスケに突っ込まれていた。
しかし、状況をパッと見た三人は『この世界特有の違和感』に気づき、士のバイクに乗っていた女性――夏海がその事について第一声を上げる。

「しかも、あれって確か……ファンガイア?」

「オルフェノクに加えイマジンもいるな。どうなっているんだこの世界」

夏海の疑問に付け加えるように士はゴーストや他の怪人達にも見やって口にした。
三人が今まで旅をしていた世界では、「キバの世界」にいたステンドグラス状の模様を持った吸血鬼の怪人・ファンガイアや、「ファイズの世界」にいた灰色の体色が特徴の蘇った死者・オルフェノクといった、各ライダー世界に対応する怪人はいた。
こうして同じ世界に別のライダーの世界の怪人がいるのはなかなか珍しいとも言える。
だが、今はそれを論議している場合ではないと判断した士はあるものを取り出す。

「まあいい、考えるのは後だ。目の前で襲われてる奴がいるんだ。助けないわけにはいかない」

白いバックルがついた変身ベルト・ディケイドライバーを腰に装着し、本型アイテム・ライドブッカーから一枚のライダーカードを取り出す。
ライダーカードを敵に向けて翳しながら、あの言葉をつぶやく。

「変身」

【KAMEN RIDE…DECADE!】

サイドハンドルを引き、露になったカード挿入口にライダーカードを装填し、サイドハンドルを閉める。
ディケイドライバーから鳴り響いた電子音と共に、士の周囲にいくつものシルエットが出現。
シルエットが士の姿に重なってアーマー姿に、ディケイドライバーから出てきたライドプレートが頭部に突き刺さると、灰色部分のアーマーが鮮やかなマゼンタ色に染まる。
そこ立っていたのは、緑色の複眼を宿した仮面の戦士。

「さて、やるか」

「貴様、一体何者だ!」

突然乱入した存在に対して尚樹がイラつきながら訪ねた。
仮面の戦士に変化した士はやれやれと言いながら、言い放った。


「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」




「あれは……」

「――ディケイド」

突如登場した通りすがりの仮面ライダー……ディケイド。
未知との遭遇に対して、目の光を失ったサクラは知るはずのない破壊者の名をそう静かにそうつぶやいた。
 
 

 
後書き
はい、どうも地水です。初めまして。

今回描いたのはCLAMP原作のツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-及びそのアニメ作品ツバサ・クロニクルと、石ノ森章太郎原作の仮面ライダーディケイドのクロスオーバー作品。
実を言うとこの作品、かつて今でいうフォロワーさんが作っていた二次創作の作品を自分なりにアレンジして作ったモノです。
その小説は個人的に気に入っている組み合わせだったので毎回楽しみに完結せずに終わってしまい、当時は少し悲しかったです。

今となって続きが読めなくなった現在、これを読むには自分でやるしかないなと思い、作品を投稿した次第です。
様々な次元・世界を旅する者たちが出会い、どんな結果を生むのか。

ちなみに時系列時系列扱い
・ディケイドSide……『オールライダー対大ショッカー』後
・ツバサSide…………『ツバサ・クロニクル』第二期終了後


次回はツバサ組とディケイド組が接触編。


 
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