イベリス
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第一話 卒業してその九
「あそこのことはね」
「表はな」
「安全なの」
「ああ、ただな」
「ちょっと裏に入ったら」
「やっぱりな、おかしなお店もな」
「あるのね」
「だから父さんもあそこに行くときはな」
その歌舞伎町にというのだ。
「くれぐれもな」
「裏に行かない様にしてるの」
「そうしているんだ」
「そうなのね」
「勿論おかしなお店にも行かないぞ」
そうした店にもというのだ。
「安心出来るお店にしかな」
「行かないのね」
「ああ」
そうしているというのだ。
「そうしているしな、東京自体がな」
「そうした人もお店も多いから」
「注意しろよ、お前も東京で生まれ育ってるしな」
「わかってるっていうのね」
「そうだと思うがな」
それでもというのだ。
「注意しろよ」
「高校になったら特に」
「これまでは基本お家と中学の行き来だったが」
それがというのだ。
「高校になったら電車通学になってな」
「色々な場所にも行くから」
「注意するんだ」
「そうしていくわね」
娘は父の言葉に真剣な顔で答えた。
「高校に入ったら」
「絶対にな」
「まあね、こうしたことはね」
母は腕を組んで首を傾げさせつつ話した。
「夢ちゃんが強いから」
「夢姉ちゃんそんな風ね」
「あの娘確かに外見は軽いけれど」
そうであることは事実だがというのだ。
「あれでしっかりしてるから」
「だからなのね」
「そう、こうしたことについてもね」
「詳しいから」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「あの娘は強いから」
「それでなの」
「そう、だから」
「こうしたことはお姉ちゃんに聞いたら」
「わかるから」
「じゃあ春休みの間に」
つまり高校に入学するまでにというのだ。
「夢姉ちゃんと会って」
「ええ、聞いてね」
「そうするわね」
「あの娘のあの外見はね」
本当にとだ、母は困った顔で言った。
「困りものだけれど」
「昔から派手な娘だしな」
父も困った顔で話した。
「夢ちゃんは」
「そうなのよね」
「服装は派手でな」
「色々ちゃらちゃらして」
「そのままギャルだからな」
「それも派手な部類のね」
「わしもずっと注意しているんだが」
自分から見て姪にあたる彼女にというのだ。
「それでもな」
「ファッションはね」
「ずっとああだからな」
「私もよ。小学校の時からね」
母も母で言った。
「派手過ぎるって言っても」
「それでもな」
「あのままで」
どうしてもというのだ。
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