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イベリス

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第一話 卒業してその七

 咲は家に帰った、すると母は今の娘の姿を見て言った。
「また随分と変わったわね」
「そうよね、私もね」
「驚いたでしょ」
「ええ、髪型変えてコンタクトにして」
「メイクもして服も変えたら」
 そうしたらというのだ。
「こうなったわ」
「本当に別人ね」
「ええ、ここまで変わるなんてね」
 自分でもというのだ。
「思わなかったわ、けれど今凄く素敵な気持ちだから」
「このままいくのね」
「そうするわ、お父さんにも見せてあげるわね」
 今は仕事に行っている父にもというのだ。
「そうするわ」
「いいわね、お父さんも驚くわ」
「そうよね」
 二人で笑って話して実際に帰宅した父にも自分の姿を見せた、すると父も今の娘の姿を見て驚いて言った。
「咲だってわかっても別人にしかな」
「見えない?」
「垢抜けたな、アイドルは無理でもな」
 父は笑って話した。
「まああの娘奇麗だなって言われる位にはな」
「なったかしら」
「ああ、そうなったな」
 こう言うのだった。
「本当に」
「そうなのね」
「東京のな」
 父は笑って言った。
「女子高生だな」
「東京のなの」
「やっぱり東京は違うだろ」
「垢抜けてるっていうのね」
「世界の流行の最先端でな」
「世界はオーバーでしょ」
「いや、実際な」
 それはとだ、父は娘に少し真面目な顔になって話した。
「今や東京はだ」
「世界の流行の最先端なの」
「ニューヨークと並んでな」
「あそことなの」
「そうだ、そうなったからな」
 だからだというのだ。
「元々百万の人口がいた大都市だぞ」
「江戸時代よね」
「その頃から世界屈指の街だったんだ」
 その繁栄ぶりを見て朝鮮通信使が仰天したという、もっともそれは江戸だけでなく大坂や京都、名古屋についてもだった様だ。
「そしてだ」
「今はニューヨークと並んでなの」
「世界の流行の最先端でな」
「その東京の女子高生になのね」
「お前もなったな」
「そうなのね」
「いや、別人みたいだ」
 父はにこにことして話した。
「これはもてるな、だからな」
「悪い男にはよね」
「注意しろよ、一見恰好よくてもな」
 それでもというのだ。
「中身は腐れ外道とかあるからな」
「さからよね」
「悪い男には気をつけろ」
 そこは絶対にというのだ。
「いいな、それとだ」
「それと?」
「女の子もだ」 
 同性もというのだ。
「悪い女には気をつけろよ」
「悪友っていうの」
「それも只の悪友じゃなくてな」
「本当の意味でなのね」
「悪い娘とはな」
「付き合わないことね」
「そうだ、もててもな」
 それでもとだ、父は娘に真面目な顔で忠告した。 
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