五人の娘を
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第三章
「今日もだな」
「そうね」
「赤ちゃんは夜泣きするな」
「この夜泣きもね」
「仕方ないな」
「何かあって」
それでというのだ。
「泣くものだから」
「そうだよな、じゃあ俺が行くよ」
「いいの?明日もお仕事でしょ」
「昨日奥さんが言っただろ」
夫は妻にベッドから起き出しながら答えた。
「だからな」
「それでなの」
「俺が見るよ」
同じ部屋にいる子供達をというのだ、こう話してだった。
夫はベッドから出て子供達の幼児用のベッドを見た、見れば三つ子の一人である美奈代が泣いていた。それでだ。
見るとおむつを替える必要があった、それでおむつを替えてお尻を奇麗に拭いた。そうしてから寝た。
こうした日が続いた、二人共かなり大変で家に来た妻の親戚が二人を見て言った。
「大丈夫?」
「まあ何とか」
「やっていってるわ」
二人はその親戚、四十過ぎの中年女に答えた。
「倒れてないから」
「安心して下さい」
「安心していいの?」
親戚は二人の疲れきった顔を見て言った。
「本当に」
「私は今育児に専念しているから」
今度は妻が答えた。
「お昼はね」
「ちゃんと面倒見ていられるの」
「育児休暇取って」
そしてというのだ。
「やっていってるし」
「こちらの会社も理解がありますので」
夫も言ってきた。
「ですから」
「大丈夫なの」
「はい」
そうだというのだ。
「本当に」
「かなりやつれて疲れている感じだけれど」
顔を見ればわかった、実際に二人共以前よりやつれていて肌も髪も乱れている。大変な状況であることは明らかだ。
「赤ちゃん五人女の子だし」
「いや、大変だとは思っていたけれど」
妻がまた答えた。
「実際にだけれど」
「それでもなの」
「やっていけているから」
だからだというのだ。
「安心してね」
「大変なのはこれからもだけれど」
「自分達の子供だし」
「やっていくのね」
「子供は公平にでしょ」
「そう、面倒見てね」
「大事にしてちゃんと教えて」
そうしてというのだ。
「立派な人にしないといけないから」
「手を抜かずやっていくのね」
「そうするわ」
「子供を放り捨てたり誰かを贔屓にしたり邪険にするとか」
そうしたことはとだ、夫も言った。
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