蛍合戦
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第五章
「是非ね」
「手を合わてね」
「ご冥福を祈りましょう」
「それが人の筋だからね」
「ああ、そうしような」
柳崎は二人のその言葉に頷いた。
「やっぱりホトケさんには手を合わせないとな」
「そうよね」
「それじゃあな」
「ええ、今からね」
「蛍いや戦いで死んだ人達にな」
「手を合わせましょう」
「それで帰ろうな」
柳崎は笑ってこうも言った。
「そうしような」
「ええ、それじゃあね」
りみは叔父の言葉ににこりと笑って頷いた、そうしてだった。
三人で蛍達に対して手を合わせた、すると蛍達は。
三人の周りに集まってそうして一際眩しく光ってから元の場所に戻ってまた戦う様に動き回った。それを見てだった。
船は港に帰った、叔父は湊に帰ると二人に言った。
「いいもの観させてもらったぜ」
「叔父さんが言うの」
「ああ、蛍の光は好きだしな」
それにというのだ。
「勉強になったしな」
「叔父さん勉強嫌いじゃないの?」
「学校の勉強はな、けれど人生の勉強はな」
「好きなのね」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「お礼を言わせてもらうぜ」
「そうなのね」
「またそうした話があったら一緒に連れてってくれよ」
「それじゃあね」
「確かに凄い勉強になったわね」
愛美も言ってきた。
「今日のことは」
「叔父さんの言う通りにね」
「本当にそうよね」
「ええ、蛍は人の魂でね」
「ああしてこの世に留まっているのね」
「そして手を合わせると感謝してくれる」
「人の魂だから」
それでというのだ。
「そうしてくれるのね」
「そして死んだ人の魂には手を合わせないとね」
「そのことも勉強になったわね」
「これこそがこの世の勉強ね」
「本当にそうね」
「じゃあこれからもね」
「学んでいきましょう」
二人でこう話してだった。
叔父と一緒に港を出てそれぞれの家に帰った、叔父はまずはりみと一緒に愛美を彼女の家まで送って次はりみをそうした。二人はそれぞれ彼にお礼を言ってだった。
次の日二人で蛍のことを話した、その話は和歌にあるよりも深いものがあった。壇ノ浦で知ったものが。
蛍合戦 完
2020・10・17
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