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レーヴァティン

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第百九十七話 小田原入城その一

                第百九十七話  小田原入城
 英雄は小田原を自身が率いる軍勢で囲み続けていた、それはもう二十日に及んだが城を観るとだった。
 櫓や城壁のところにいる兵の顔が弱いものになってきていた、彼はそれを見て周りに確かな声で言った。
「効いているな」
「敵の士気が落ちていますね」
「囲まれていて」
「そして我等の宴を見て」
「そのうえ謀も受けて」
「少しずつだが」
 それでもというのだ。
「そうなってきていてな」
「顔にも出てきましたね」
「櫓や壁にいる者達のそれにも」
「門にいる者達もそうですし」
「いい感じに士気が落ちてきていますね」
「もう相模にあるのはあの城だけだ」
 敵の城はというのだ。
「周りはどの城も幕府のものとなっている」
「まさに孤城です」
「そうなっていますね」
「周りは敵ばかりで」
「完全に孤立していますね」
「そこで周りは連日連夜楽しんでいる」
 英雄の命じた通りにというのだ。
「酒に馳走にな」
「それに女に男に」
「歌舞も楽しんでいる」
「それを見てですね」
「羨ましく思ってもいますね」
「目の前でいつもそうされると戦でなくてもだ」
 つまり今の様でなくともというのだ。
「嫌になるな」
「はい、確かに」
「それだけで」
「かなり士気が落ちます」
「何事も」
「しかもだ」
 英雄はさらに言った。
「俺達は城の中に噂も流し続けている」
「誰が裏切っただの内応しているだの」
「そう言っていますね」
「そしてそれがですね」
「尚更いいですね」
「そうだ、惑わせてだ」
 その様にしてというのだ。
「敵の士気をだ」
「さらに落としますね」
「そうして戦をする気をなくさせて」
「そのうえで」
「何事も完全にやる気をなくすとだ」
 そうなればというと。
「もう戦えないな」
「はい、確かに」
「そうなってしまいます」
「どういった戦でも」
「やる気を完全になくしますと」
「そうさせるのだ、だからだ」
 それ故にというのだ。
「俺達はこのままだ」
「敵に楽しみを見せ」
「そして謀も仕掛け続け」
「そうしてですね」
「そのうえで、ですね」
「降す、降るまでだ」
 英雄は今は茶を飲んでいる、茶道のそれを飲みつつ述べた。
「このままだ」
「宴と謀を続けますね」
「その両方を」
「そしてその後で」
「その様にな、しかしな」 
 英雄はここでこう言った。
「今の茶は駿河の茶だな」
「左様です」
「それがこの茶です」
「これは駿河の茶です」
「美味いな」
 飲んでみての言葉だ。 
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