戦国異伝供書
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第百三十話 時が来たりてその五
「武士ではありませぬ、何よりもお父の子なので」
「それで、であるな」
「尚更武士ではないと」
「そうなるな」
「はい、皆武士ではありませぬ」
「左様、しかし織田殿は武士であられぬ方でもな」
「用いられるのですね」
「羽柴殿を見よ」
今や織田家の重臣となっている彼をというのだ。
「あの御仁をな」
「元は百姓であられたが」
拳は腕を組んでその羽柴のことを話した。
「それが今では」
「織田家の重臣であられるな」
「万石取りの」
「そこまでなられたのはな」
「羽柴殿の才覚を織田様が認められた」
「それでじゃ」
百姓の倅だった彼がというのだ。
「お主達もじゃ」
「用いられる」
「必ずな」
そうなるというのだ。
「お主達にはそれだけの力があるのだからな」
「お父が教えてくれた」
「それがあるからな」
だからだというのだ。
「お主達は必ず用いられる、そして皆十石位は貰える」
「十石?それだけもでやんすか」
煙は十石と聞いて驚きの声をあげた。
「貰えるでやんすか」
「それが働き次第で百石にもなる」
「百石でやんすか」
「そうじゃ、十石でも立派な武士の禄であるが」
しかしというのだ。
「それがな」
「働き次第で、でやんすか」
「百石にもな」
それこそというのだ。
「貰える様になる」
「そうでやんすか」
「だからな」
それでというのだ。
「用いられてな」
「それからも働けば」
「百石にもじゃ」
それだけの禄にもというのだ。
「なる」
「百石なんてね」
獣は信じられないという顔で述べた。
「夢みたいだよ」
「いや、お主達は戦で兵を率いることは出来ぬが」
「それでもなんだ」
「うむ、一人一人の働きは誰にも負けぬ」
忍としてのそれはというのだ。
「だからな」
「それでなんだ」
「百石取りにもなれる」
今の彼等から見れば夢の様な立場になれるというのだ。
「だからよいな」
「これからだね」
「織田様とお会いするのじゃ」
「わかったよ」
「それと織田様だけれど」
ここで言ったのは萌だった。
「今も傾いておられるのかな」
「間違いなくな」
「そうなんだ」
「元服前の奇矯な振る舞いはないが」
それでもというのだ。
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