とある地球外生命体が感情を知るまで
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裏2 管理局
前書き
管理局側の視点になります。
───第一管理世界ミッドチルダ。
そこは数多く存在する次元世界の中でトップクラスの発展がされており、魔法文化の最先端をいき、幾つもの戦乱の歴史を経て成り立った世界である。
そんなミッドチルダを含めた様々な世界の平和を維持するための組織──『時空管理局』が存在する。それは次元世界でその名前を知らない者はいないというレベルにまでの規模を誇るほどである。
そこに所属する者の一人、クロノ・ハラオウンは自室にて本を持ち勉学に励んでいた。彼は14歳という年齢でありながら指揮権を与えられているほどの指揮官である。それだけの実力を持ち、それが認められたということなのだろう。
そのため張り切っているのか、彼にはワーカホリックの傾向があったのだ。上司である彼の母親はこれを良くないと思い彼に短期間の休暇を無理矢理与えることとなったのだが...魔法の訓練が出来ないのならば勉学に励もうという気持ちが働きこうなってしまったそう。
「……」
「……クロノ? 入るよ?」
「……」
入ってきたのは彼の友人であるエイミィ・リミエッタ。どうやら、クロノの様子を見に来たようだ。
「はぁ……今日ぐらいゆっくり休みなさいって艦長が伝えたはずでしょ?」
「禁止されたのは魔法を使うこと、そして書類関連のみ。勉学は禁止されてない」
そう言い終わるやいやな、黙々と勉学を続けるクロノ。エイミィはまた深いため息をつき、チラッとクロノの見ている参考資料を見た。
「──あれ、珍しい。旧暦の歴史なんて……」
現在は新暦63年。旧暦とは、この新暦より前の時代のことだ。
「単純に興味あるし、人間は歴史からしか学べないからな」
「勉強熱心……まったく、変わらないなぁ……」
ここでふと、エイミィはあることを思い浮かべた。
「そういえば最近……『星喰らい』、無くなったよね」
「……あぁ、あの事件」
『星喰らい』。それは近年に起こった星の消失事件のことである。概要はある星達が急に跡形も無く消えてしまう、というシンプルで怪奇なものだ。その星の中には管理局の認知している星も存在していた。
目撃等が一切存在せず完全犯罪と言われ、綺麗さっぱり無くなってしまった様から一部からは星が喰われたという声が出たことで、この事件を誰かが『星喰らい』と名付け、その名前で広がってしまったのだ。
「それがいきなりどうしたんだ?」
「『星喰らい』と聞くと……どうしても『あの種族』が思い浮かぶんだよね。『星狩り族』っても呼ばれるあの種族。今回の事件ももしかしたら……と思ってね」
そんなエイミィの言葉に、今度はクロノがため息をついてこたえた。
「……エイミィも知っているだろ。この本にも書いてるが、『ブラッド族は旧暦の最後の年に次元世界総力を持って絶滅させた』んだ。ブラッド族が『星喰らい』なんてあり得えない」
資料には、最終的にブラッド族の故郷であるブラッド星ごと絶滅させた、という記載がある。これが、世間一般での通説なのだ。
「うーん、そうだよねぇ」
考えすぎか、とそれに関することを考えるのを止めようとするエイミィ。しかし、またふと別のことを考え付いてしまった。
「……ねぇクロノ」
「どうした?」
「もし……もしだよ? もしブラッド族が生きていて、この事件を引き起こしてたとしたら……どうするべき、なんだろうね……?」
その資料には、ただブラッド族を絶滅させたという記載のみがされているわけではない。何故そうなったのかの経緯、そしてブラッド族の恐ろしさ等も記載されている。
一般教養としてはあまり触れられることはないが、管理局にいる者の殆どにブラッド族についての情報は知られている。
「決まっている」
エイミィの恐怖が混じった問いに対して、クロノははっきりと言葉を紡いで答えるのだった。
「やるしかない。どれだけ強かろうが、どれだけ凶悪だろうが……倒してしまうしかないんだ。ブラッド族は、存在自体が悪、だからな」
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