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とある地球外生命体が感情を知るまで

作者:えんぜ
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3 あそび

『だんぼーる』というのは素晴らしい。簡単に持ち運びが出来、色んな物を収納することが可能、さらに作業台とすることも出来るという優れものだ。こんな便利なものが地球には溢れていたとは……本当に素晴らしいの一言につきる。

 扱い方次第ではもっと様々な活用方法がありそうだ。この『だんぼーる』は違う星に移ることになったとしてもこれは持っていくとしよう。

「……ん、そろそろ」

 体内時間で今を把握し、『だんぼーる』の手入れを止め足を『こうえん』へと向かわせる。

「今日もかい? 嬢ちゃん」

「……違う、『あおいちゃん』」

「俺たちにとっては嬢ちゃんは嬢ちゃんなのさ」

「……私は『あおいちゃん』」

「拘るねぇ」

 カッカッカとか言ってるやつを放っておいてその場所へと向かう。この件に関しては全く話が通じない。何故だ。

 まぁそれはいい。そろそろなのはが『こうえん』に来る頃だ。自身の時を地球に切り替えるも時間がかかったが、終わってしまえばこちらもの。なのはが来るであろう時間丁度に『こうえん』にたどり着くだろう。

 と、思っていたのだがなのははまだ来ていないようで──



「あーおーいーちゃーん!!」

「……きた」



 ──はなかった。今来た。そしてなのははそのまま私の胸の方へと飛んできてガシッと抱き締めてきた。

「ぎゅー!」

「……ぎゅー」

 これはなんだろう。まるで私の存在を確かめているかのようだ。それとも単なる挨拶的なものだろうか。

 こんな挨拶をしてきたのはなのはが初めてであったが、なのは独特の挨拶なのかもしれない。それは地球の挨拶の一つでもあるということだ。とりあえず私も抱き締め返してはいるが、これでいいのかは分からない。

「えへへ♪ おはようあおいちゃん!」

「……おはよう。なのは」

 ふむ、いつもよりも笑みの度合いが大きく感じる。地球っぽく言えば、いつもより元気...か。これは...喜?

「……なのは、今日はいつもより元気」

「あ、わかる?! えへへ、あのねあのね!」

 話を聞くと、どうやらなのはの父親が怪我をしていて……『にゅういん』? をしていたよう。しかし、昨晩に容態が回復していき目が覚めたらしい。

 ……ふむ。

「……なのは、今はどんな気持ち?」

「うん! すっごく嬉しいの!」

「……そっか」

 これが……嬉しいと感じる一例か。身内...いや、この場合は身近な存在の容態が回復すると嬉しいと感じるのか。

 なるほど、一つの感情を感じるだけでも複数の過程が存在するとは知っていたが……やはりかなり複雑であるのだな。

 やはり、なのはといるとよい勉強になる。

「あ! もちろん今日あおいちゃんと会えたこともとっっっても嬉しいの!」

「…………そう」

 それと、まだなのはと居ると暖かくなるのはよくわかっていない。初めて感じた時から時間は経ってはいるが、未だに暖かいは継続している。

 更に今、その暖かいは急に温度を高めた。暑いという段階にまである。

 確信はない。根拠もない。だが、こういう感覚をおそらく……『おともだち』というのだろう。

「……なのは」

「なぁに? あおいちゃん」

 だが、足りない。判断要素も何もかも。今のはただの考察に過ぎない。だからこそ...

「……私と、永く『おともだち』でいてくれる?」

「! うんっ! うんっ!! もちろんだよ!!」

 口約束だが、なのはなら受け入れてくれると思っていた。これで感情について永く効率良く知れるようになったわけだ。

 確か、地球ではこういうときはこう返すはず。

「ありがとう」

 ……それを告げた瞬間何故かまた抱き締められた。なんで? ……わからない。




 ──────────────────────




「──じゃ、遊ぼっか!」

「……何をする?」

「おままごと!」

「ん」

 少し時が進み、なのはが本日やる遊びを提案してくれた。

「……前と、同じ?」

「うん!」

 なのはとの遊びは興味深いものがある。例として今からやる『おままごと』が挙げられる。この『おままごと』は何故か地球人が地球人の真似事を行うというもので、基本的には夫婦の真似事を行うものらしい。

 いつもではあるが、この時私が夫役、なのはが妻役となっている。

「……ただいま」

「おかえりなさい! ご飯にする? お風呂にする?」

「……それじゃ、ご飯」

「はーい!」

『べんち』を台とし、なのはが架空の場所から何かを取り『べんち』に置く動作をする。それらは『りょうり』らしい。

「はい! めし上がれ!」

「……いただきます」

 今のはなのはに教えてもらった地球での作法らしい。何やら食事を行う際、感謝の意味を込めて『いただきます』と言うのだとか。

「……おいしい」

「えへへ、たくさん食べてね!」

 あと、『おいしい』と言わないとダメみたいだ。何が『おいしい』のか分からないけど。

「……ごちそうさまでした」

「お粗末様でした!」

 さらに、食べ終わった後『ごちそうさまでした』と言わなくてはならないらしい。不思議なものだな……

「じゃあ次はお風呂だね!」

「ん」

『おふろ』、と言えばたまにあの者たちに言われ近くの川で身体を水で洗浄したりするが、それだろうかといつも思う。

 最初纏っている布──『ふく』というらしい──を取ろうとしたら何故か止められた。

 結局これも風呂に入るということの真似事であるからだという。

「痒いところはありませんかー?」

「……ない」

「流しますよー……じゃばー……よし、終わりなの!」

「ん」

 今日の遊びはこうして時間が来るまで行われたのだった。

 ……今日も沢山学べたような気がする。なのはとの遊びはやはりよいものだ。 
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