とある地球外生命体が感情を知るまで
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1 しりたい
前書き
ここでは初めての投稿です。
よろしくお願いします。
──私は、感情が知りたい。
こんなことを思うようになったのはいつ頃だろう。前の星で感情が無いやつと言われてからだろうか。それとも感情という言葉を知った時からだろうか。
とにかく最近、感情というやつについて深く考えていることが多い。考えれば考えるほど、よく分からないという結論に達するのだが。
そんな考えをしている間に目の前で一つ、星が崩壊していき、自身へそのエネルギーが注がれていくのを感じる。確か…前の星でこれを行っていたときに言われたんだったっけ……やはり分からない。
私はブラッド族。星を喰らいそれをエネルギーとして活動する種族。私のやっていることは生きるための生命活動だ。スケールは違うかもしれないが、他の種族も動物とか植物とかを食って生きているわけであって、それは私のやっていることとほぼ同じではないのか?
ただの生命活動が無情だと言われる。それは逆に自分達には感情があると言っているようにも聞こえる……やはり分からない。感情とは、一体なんなのか。
「……よし」
星の吸収をエネルギーが僅かに残った状態で打ち切る。これをすることにより再び星が形成されるだろうから、連鎖の輪が途切れることはない。きちんと再生出来るようにしてるのになんであんなに言われたのだろう。さらに分からない。
「……知りたい」
この思いも感情じゃないのか。私は感情を持ってないのか。そもそも感情とは何なのか。色んな考えが駆け巡っては消えていく。そのたびに知りたいという思いが更に増していく。
「……ん」
どうやったら知ることが出来るのかを考えてみることにする。もうブラッド族の星であるブラッド星そのものは無くなってしまったらしいからそこで学べないし、感情があるという感じだった前の星の種族は多分もういないし、ブラッド族自体感情が無いらしいからそもそも参考にはならないだろうし……。
「……」
探す、しかないか。感情があるっぽい種族のいる星を探して、その星でその種族を観察する。これが最適解のはずだ。
幸いにもエネルギーには蓄えが全然ある。あと100年はもつだろう。
もしエネルギーが大量に無くなってしまったとしても、その時はその時でいい。その時はその星を喰らってしまえばいいだけの話だ。
「……うん、行こう」
宛もなく、ただひたすら宇宙空間をさまようことにした。星を見つけたら行ってみて、そこにいる種族を少し見てみる。求めているものと違うと感じればまた別の星へ行く。エネルギーがいると感じればその星を喰らう。それでいいだろう。
私の思いを満たしてくれる星は見つかるのかな?
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この星は……違う気がする。確かに言葉を発することのできる生物はいるが、感情を持っているという感じではない。
淡々とただ生物学的欲求を満たしているのみ……これではむしろ機械に近い。
ここに居続けても意味はない。別の星へと向かうとしよう。
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……この星もだ。生物はいるものの、そいつらは言葉を発することの無い生物ら。ただの動物に過ぎない。
仮に感情を持っていたとしてもここから何か学べるとは思えない。
無駄足を踏んでしまった。とりあえず別の星を探さなくては。
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外れだ。動物はおろか、生物すらいない。来て損をするだけだった。ただ質量の大きいだけの星だ。
星など大量にあるのだからすぐに求めている生物のいる星にたどり着けると思っていたが、そうもいかないようだ……少し手法を変えてみるべきなのか?
ともあれまた別の星へまた向かいたいが、想定していたよりもエネルギーを多目に消費してしまった……
……仕方ない。始めよう。
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──────────────────────
……やっと、やっと見つけた。私の求めている感情を持つであろう生物──人間がいる星を。少し隠れて見てみただけで求めている感情であろうものを持っていそうなのが確認できた。暫くこの星に居れば何かが掴めるかもしれない。そうと決めたら、ここに住むとしよう。
擬態するにしても元々の姿と近いから細胞を動かすのは最小限で良さそうだからそこまでエネルギーを消費しないだろう。
持っている道具一式は私の身体に同化させておこう。時間が出来れば手入れをしなくては。まだこの星も期待外れの可能性はあるわけで、その時はエネルギーにしてしまうつもりだから、いつでも使えるようにしておかなくてはならない。
とりあえず分からないから体の大きさはこの星における5歳の身長をそのまま応用した。理由は私が5歳であるからだ。
後、人間は何故か全身の周りに布のような物を纏っているため、私もとりあえずそこらで拾った布のようなものを纏っている。
しかしこの体……慣れが必要そうだ。先ほど言ったように、元の私と近い姿ではあるが、細かいところでは色々と異なる部分もある。
特に何故かバランスは取りづらかった。今はもうないが、先ほどまでは慣れなくて何回か転けてしまった。まだ少し痛い……。
だが、奇跡的にこの身長はこの星における子供の身長であるから、物事は有利に働いてくれるだろう。少し観察した限り、人間は子供に弱いようだからだ。
そしてどこで観察するかと言えば、それこそ人間が大量に集まるところ……えっと……読めない……
と、とにかく子供とそれに続く人間が沢山集まり、さらにそこに謎の形をしたオブジェがそこらにあり、それぞれが思い思いにオブジェを利用しつつ自由に過ごしていくところだ。ここなら感情とは何かを学べるに違いないだろう。よし、ここをこの星における拠点としよう。
「──そこの嬢ちゃん」
「……私?」
辺りに誰も居なかったので自分のことかと思い、その方を向く。そこには何人かの大分汚れた服を纏った人間がいた。性別は男だろう。
今の私の容姿は所謂女の子になっている。『嬢ちゃん』というのはこの星における女の子を呼ぶときの呼び掛けのようなものだろうか。
「お前さん……両親はいないのかい?」
「……いない」
両親か。何故そんな事を聞くのだろう……。そういえば私は今まで殆ど一人だったな。不便はなかったが。
もしや子供に着いていた人間は両親なのか? だとするとこの星では子供が一人でいるのは不自然なのか。
……何故目の前の人間達は私を見ているのだろう。
「……住んでるところは?」
「……今日からここに住む」
更に目付きが変わったように感じた。なんだこの感覚は。これが感情……? だとしたらこの星に来たのは正解だった。
「……嬢ちゃん、名前は何かな?」
「名前……?」
名前、名前……名前? そういえば私の名前はなんだ……?
ブラッド族、宇宙人とは言われたことはあるが……。
「……名前、ない」
素直に答えておこう。ここであると言っても意味はないから。
「…これは」
「捨て子…か?」
「いや、虐待から逃げてきたという可能性もあるぞ……」
何やら話し合いを始めたようだ。人間に擬態しているせいか普段より耳が遠くよく聞こえない。
「警察案件じゃないか……?」
「ワシらの話を警察がまともに聞いてくれると思うか?」
「どうせ迷子扱いされて元いた所に戻されるのがオチだ。仮にこの子が虐待を受けていたとすればまた……」
「だったら……」
……どうやら終わったようだ。何やら顔つきを変えて全員私の方を見ている。
「……お前さん、ワシらと来ないか?」
「見ての通り俺らもホームレス。近くの土手辺りで共同生活をしているのさ。どうだい?」
「……私が?」
「そうさ。嫌ならいいが……」
いや、これは丁度いい。この星の人間がどういう風な生活をしているか見てみたかったのだ。それも観察するつもりだったのだが、向こうから来ないかと誘われるとは好都合。
あくまで一例に過ぎないのだろうが、一つでも知れるのは有難いことだ。
「……いく」
「! そうか!」
「よっしゃ、今日は嬢ちゃんの歓迎パーティーだな!」
「あんまり豪勢にゃ出来ないけどな! はっはっは!」
こうして私は地球へと潜入し、この地球の人間を観察するための最低限必要なものを手に入れたのだった。
感情……理解できる日はこの地球で訪れることを願おう。
後書き
アンチ・ヘイトの違いがいまいちわからないのでタグが間違っている可能性があります。間違っていたら教えてくださると助かります。
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