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戦国異伝供書

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第百二十九話 灰からはぐれた者達へその十二

「今までな」
「そうだったのか」
「うむ、日向とも日陰ともな」
 これといってというのだ。
「思わずにな」
「やってきたんだな」
「生きてきた」
 そうだったというのだ。
「これまでな、しかしわしもか」
「ああ、日向だろ」
 そこにいるというのだ。
「やっぱりな」
「お主から見ればそうなるか」
「だってな」 
 ここでだ、煉獄だけでなく。
 他の子達も居士の顔を見て笑って彼にこう言った。
「お父優しいもんな」
「怒ったら怖いけれどな」
「けれど温かくて」
「いつも私達のことを心配してくれていて」
「そして顔も明るいし」
「何処が日陰か」 
 こう言うのだった。
「暗くなんか全くないし」
「お日様みたいだよ」
「みなしごだったおいら達を拾ってくれたし」
「飯もいつもたっぷり食わせてくれて」
「服だってくれるし」
「家もあるし」
「いや、それは当然のことじゃ」
 居士は明るい顔で言う子供達にこう返した。
「至極な」
「どうして当然ですか?」
 命が問うた。
「そうしたことが」
「親であるからな、お主達の」
 だからだというのだ。
「そうしたことを全てすることはな」
「当然ですか」
「そうじゃ」
 こう答えるのだった。
「飯も服も家も用意するのはな」
「何でも教えてくれることもですか」
「そうじゃ、文字もな」
「文字まで教えてくれるなぞ」
「そうそうないだろ」 
 煉獄がまた言ってきた。
「親でもな」
「知っておるものは全て教えるのが親じゃ」
「それも当然のことか」
「わしは親として当然のことをしておるまで」
 居士の考えではそうだった。
「だからのう」
「それでか」
「わしは特にな」
 これといってというのだ。
「日向とか言われることはしておらん」
「そう言われることこそがです」
「日向だな」
 煉獄は命の言葉に頷いた。
「そうだよな」
「そうですよね」
「ああ、それに何よりお父は顔がいつも明るいしな」
「まるでお日様の様に」
「それじゃあな」
「日向ですね」
「日陰者の筈があるか」
 煉獄はあらためて言った。
「お父がな」
「そう言われたのははじめてじゃ、しかしそう言われてな」
 煉獄は笑ってだ、子供達にあらためて言った。
「悪い気はせぬ、なら尚更決めた」
「尚更って何だ」
「うむう、お主達を日向で生きる者達にする」 
 そうするというのだ。
「そうした忍達にな」
「天下人様にお仕えしてか」
「天下人様は日輪、その日輪にお仕えするな」
「日向で生きる者にか」
「しようぞ、そしてその光でな」
 日向のそれでというのだ。
「よいな、天下人となられる方に何かあればな」
「その時はだな」
「お助けしよ、よいな」
「ああ、わかったぜ」
 煉獄が笑顔で応え他の者もだった。
 居士に口々に約束の言葉を述べた、居士はその彼等を見て皆立派に育てることをあらためて決意しそれを実際にしていくのだった。


第百二十九話   完


                2021・1・8 
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