ロードトレーニングの途中で
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第一章
ロードトレーニングの途中で
トルコのボアシチ大学の研究員であるオズグネ=ネバースは同僚にこう言った。
「今から行って来るよ」
「ロードレースのトレーニングにですね」
「うん、行って来るよ」
黒髪を奇麗に切り揃え黒い理知的な目を持っている、やや面長の顔で背は一六五位だ。少し痩せた身体つきだ。
「日課だしね」
「ええ、じゃあ」
「走って来るよ」
自転車を用意してだった。
ネバースはトレーニングに出た、そして帰ってきたが。
彼は子猫と一緒だった、生後四週間位の黒と銀の虎模様だった。腹は白い。
その猫を見て同僚はネバースに問うた。
「その子は」
「空港に行って飛行機の写真を撮ろうとしたら」
その時にとだ、ネバースは答えた。
「この子を見付けてね」
「拾ってきたんですか」
「一匹だったからね」
「母猫とはぐれたんでしょうか」
「多分ね。子猫一匹では暮らしていけないから」
それでというのだ。
「保護してきたよ」
「そうですか」
「猫は大事にしないとね」
ネバースはその猫を懐、トレーニングウェアのそれから出しつつ言った。
「やっぱり」
「ムハンマドもそう言っていましたね」
「コーランでも書かれているし」
「見ているだけで癒されますから」
「だからね」
それでというのだ。
「拾ってきたんだ、僕も猫は好きだし」
「そういうことですね」
「そうなんだ、それでね」
ネバースはさらに言った。
「この子はうちで飼うつもりだよ」
「そうですか」
「うちには今猫いないしね」
「猫がお好きなので」
「一家全員がね」
「丁度よかったですか」
「これはアッラーの思し召しだよ」
ネバースは笑ってこうも言った。
「この猫と暮らせと」
「そういうことですね」
「この大学にも猫が多いし」
「ええ、保護猫が」
「皆可愛がっていてね」
「トルコもイスラムの国だから」
「それでだよ」
猫を大事にする宗教の国だからだというのだ、事実ムハンマドは猫好きでありコーランにも猫を大事にしろと書かれている。
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