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歪んだ世界の中で

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第九話 決意を述べてその二

「その人達も希望を大切に思ってくれてるよ」
「そうだね。それは僕もわかるよ」
「だから。希望がそうお願いすれば」
「おばちゃん達もいいって言ってくれるかな」
「絶対にそうなるよ」
 絶対にだと。微笑んで話す千春だった。
「いい人達だったら」
「そうした人達だったら」
「絶対になるから。それでね」
 おばちゃん達とだ。一緒に暮らしてだというのだ。
「幸せになればいいよ」
「そうなればいいんだ」
「それかね」
「それか?」
「希望がよかったらね」
 彼さえよければだと。前置きしてからの言葉だった。
「千春のお家でもいいよ?」
「えっ、千春ちゃんのって」
「いいよ。千春のお家に来ても」
 このうえなく暖かい笑顔でだ。千春は希望に告げる。
「そうしていいよ」
「いいの?けれど」
「いいよ。希望だからね」
 彼だからだと。また言う千春だった。
「だからね」
「けれどそれは」
「いいよ。だって希望だから」
 またこう言うのだった。
「そうしてね。千春も希望と一緒にいたいし」
「僕と」
「それとだけれど」 
 千春はさらにだ。希望に述べるのだった。
「希望ってやっぱりね。最初から一人じゃなかったのよ」
「そうだね。友井君がいてくれてて」
「そのおばちゃんとポポちゃんがいるよね」
 二人の大叔母達もだというのだ。
「その人達もいれくれているから」
「完全に一人じゃなかったんだ」
「孤独じゃなかったんだよ」
「そのことは気付いていたけれど」
 だがそれでもだったのだ。かつての希望は。
「それでもそのことをね」
「感じていてもだよね」
「辛かったよ」
 完全に孤独でなくてもだ。そうだったというのだ。
「学校では友井君だけだったし。家では」
「居場所がなかったから」
「居場所がないって。家にそうだと」
「辛いのね」
「家って大事だよ。帰る場所だから」
 その家に温もりも愛情もない。それならばだというのだ。
「辛くて仕方がないよ」
「千春にはわからないことだよね」
 千春がわかるのはこのことだけだった。家については。
「千春のお家はとても暖かい場所だから」
「そうだね。あのお家はね」
「暖かい場所にいたら。寒い場所のことはわからないよね」
 少し悲しい目になってだ。希望に述べたのだった。
「そうだよね」
「そうだよ。けれどね」
「けれど?」
「寒い場所から暖かい場所には行けるよね」
 それは可能だとだ。希望は微笑んで千春に言った。
「そうすればいいよね」
「そうだよね。それはね」
「そう。だからね」
「暖かい場所に行くのね」
「行くよ。寒い場所から出るよ」
 家、そこからだと言ってだった。
 千春にだ。また笑顔で述べた。
「じゃあその中にはね」
「千春のお家もなのね」
「おばちゃん達の家にいたいけれど」  
 今第一にそうした場所はそこだった。しかしだ。
 千春のその笑顔も見てだ。希望は言ったのである。
「それでもね。千春ちゃんがそう言ってくれるのなら」
「千春のお家にも」
「行かせてもらいたいね」
「暖かい場所なら」
「もう寒い場所は嫌だから」
 笑みにだ。悲しみを宿らせての言葉だった。 
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