地下鉄で寝ている猫
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第一章
地下鉄で寝ている猫
ドイツのシュトゥットガルト駅に向かう地下鉄の中でだった。
乗客達は目を瞠って言っていた。
「何で猫が?」
「地下鉄に猫がいるんだ?」
「席の上で丸くなっているけれど」
「寝ているけれど」
「野良猫?」
「何で地下鉄に?」
誰もがその猫を診て首を傾げさせていた、茶色と白の虎毛の猫である。
その猫は席の上で丸くなって寝ている、家の中や外ではなく地下鉄の中なので誰もが首を傾げさせていた。
それで猫を見ていたが。
工場で働いていて丁度仕事が終わった帰りだったパトリック=マウラー金髪碧眼で面長で一八〇を越えていて最近腹が出ていて髪の毛も後退している彼は。
携帯のメッセンジャーで妻と今の状況について猫を見つつ話していた。
「画像送った通りで」
「地下鉄に猫がいるの」
「そうなんだ、随分毛並みがよくて」
「太っていて」
「野良猫とか言われてるけれど」
そう言う人が周りにいるがというのだ。
「随分とだよ」
「栄養がある感じなのね」
「それで人に囲まれていても」
地下鉄の中でそうなっていてというのだ。
「怖がっていないし」
「野良猫にしてはおかしいわね」
妻もメッセンジャーの中で言った。
「それはまた」
「そうだよな」
「ええ、何かしら」
妻は首を傾げさせた画像をここで夫に送った。
「それはまた」
「若しかして誰かの飼い猫が」
「家出なりして」
「地下鉄に迷い込んでな」
「乗ってるの」
「そうじゃないか?」
「そうなのね、じゃあ」
「ああ、とりあえずずっと寝てるし」
見れば実に気持ちよさそうに寝ている。
「終点までいったらな」
「そこでなの」
「猫を駅員さんに引き渡すか」
「そうするのね」
「動物の保護センターに預かってもらう様に話して」
そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「それがいいわね、ただ今こうした猫が地下鉄にいるってね」
その様にとだ、妻は夫に話した。
「そう知らせたら?」
「インターネットでか」
「ええ、フェイスブックなり何なりでね」
「それがいいな」
夫は妻のその言葉に頷いた。
「それじゃあな」
「そうしましょう」
「それで猫に心当たりないかって聞いて」
そしてというのだ。
「終点の駅からな」
「保護センターに引き取ってもらう」
「そうしてもらったってな」
その様にというのだ。
「連絡するよ」
「それじゃあね」
妻は夫にメッセンジャーに応えた、そしてだった。
夫は実際にそうした、猫は程なく保護センターに引き取られたが。
後日だ、彼が猫のことを掲載したフェイスブックからだった。
連絡があってだ、ハインツ=マーガスという青い目に丸眼鏡をかけた金髪を真ん中で分けた一八〇位すらりとしたスタイルの中年男性が彼の家を訪問して言ってきた。見れば地下鉄にいたあの猫も一緒である。
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