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突然腕の中に

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第一章

               突然腕の中に
 この時トニオ=メンドーサは犬や猫の保護センターに来ていた、背は一七一程で浅黒い肌に痩せた身体黒い縮れた髪の毛で黒の明るい目に彫のある顔立ちである。ロサンゼルスでガソリンスタンドを経営している。
 その彼がセンターに来るとセンターのスタッフに問われた。
「ご連絡があったメンドーサさんですね」
「そうだよ」
 メンドーサは白人女性のスタッフに笑顔で答えた。
「猫を観たいと言ったね」
「そうでしたね」
「それでだけれど」
「はい、これから」
「猫を観ていいかな」
「どうぞ」
 スタッフは彼に笑顔で答えた。
「ではこれから」
「そうさせてもらうね」
「こちらです」 
 スタッフはすぐにだった。
 メンドーサは猫達がいる場所に案内された、そこには様々な猫達がいたがスタッフは彼に話をした。
「どの子も保護猫でして」
「新しい家族を待っているんだね」
「はい」
 そうだというのだ。
「それで私達もです」
「家族を探しているね」
「そうです、宜しければ」
「そのつもりで来たし」
 メンドーサにしてもだ。
「是非ね」
「そうした子をですね」
「見付けさせてもらうよ」
「それでは」 
 こうした話をしてだった。
 メンドーサは実際に猫達を見ようとした、だが。
「ニャア」
「!?」
 ある猫アメリカンショートヘアの耳の大きい子がいきなりメンドーサの腕の中に飛び込んできた、これにはだった。
 メンドーサも驚いた、そして猫を抱きながらスタッフに尋ねた。
「この子は」
「はい、女の子でして」
 スタッフもすぐに答えた。
「今うちでいる猫で一番元気なんですよ」
「そうした子なんだ」
「それで愛嬌もあって」
「ニャア」
 見れば猫はメンドーサを彼の腕の中で見上げている、その顔は実際に愛嬌があった。それでだった。
 メンドーサは他の猫も見て回ってだった。
「何度か来てな」
「そしてですね」
「そうしてな」
 そのうえでというのだ。
「決めたいから」
「また来られますか」
「そして猫達をじっくりと見て」
 そしてというのだ。
「決めたいけれどいいかな」
「家族に迎えるので」
「それだけにな」
 じっくりと見てというのだ。
「決めたいからな」
「賢明ですね、世の中トイプードルの娘ですが」
「犬かい」
「はい、日本のお話ですが一目惚れしてその場で家に連れて帰って」
「後で捨てたんだな」
「暫く可愛がっていたのに自分達の子供が出来ると」
「その娘が可哀想だな」 
 メンドーサは顔を顰めさせて応えた。
「トイプードルのな」
「飼育放棄、そして殺処分のある場所にです」
「そんな連中地獄に落ちろ」
「幸いその娘はすぐに新しい飼い主にもらわれましたが」
 それでもというのだ。
「世の中そんな人もいますので」
「慎重に選んでもか」
「むしろそうしてくれるなら」
「いいか」
「はい」
 まさにというのだ。 
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