毛布好きのライオン
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第一章
毛布好きのライオン
ランバートは生まれて三ヶ月でテキサス州ワイリーの野生動物保護施設に来た、何故来たかというと。
「ちょっとそれは」
「酷いですね」
「子供がアニメが好きで飼ったって」
「それも違法に手に入れて」
「それで飼えないから三ヶ月でこっちにですか」
「捨てたんですか」
「そうなんだよ」
施設の創設者で運営にもあたっているヴィッキー=キング銀髪で灰色の目の初老の背の高い男性は周りに苦い顔で答えた。
「それであの子はだよ」
「これからはですね」
「うちで面倒見るんですね」
「そうしていきますね」
「そうなるよ、まあ捨てるにしても」
それでもとだ、ヴィッキーは周りに話した。
「まだうちに預けるだけましだよ」
「それはそうですね」
「殺処分とかその辺りに捨てるとか」
「そうしないだけましですね」
「それはそうですね」
「無責任な人なら」
それならというのだ。
「普通に殺処分させたりね」
「その辺りに捨てますね」
「ライオンでも」
「そうしますね」
「可愛くなくなったから捨てる、欲しければあげるなんてね」
そうしたというのだ。
「無責任な人もいるね」
「そうですね」
「確かに酷い話ですがうちに預けるだけましですね」
「それは事実ですね」
「この子はこれからはうちで育てるよ」
その三ヶ月の雄ライオンを見ながら話した、今は檻の中にいる。
「そうするよ」
「わかりました」
「それじゃあですね」
「これからはうちがこの子のお家ですね」
「そうなりますね」
「そうなるよ」
事実そうなると話してだった。
ヴィッキーはランバートという名前のその犬を施設に迎え入れた、そしてだった。
ランバートを育てているとだった。
「はじみて見る場所で」
「そして周りも見たことがない生きものばかりで」
「かなり戸惑ってますね」
「ずっと家にいたから」
「そうだね、そして捨てられたから」
ヴィッキーはランバートのこの経験も話した。
「家族にね」
「悲しんでいますね」
「ライオンも生きものですからね」
「心がありますからね」
「やっぱり捨てられたら悲しいですよ」
「そのことは当然です」
「それで落ち着いていないね、寝るにしても」
それでもというのだ。
「安心していないね」
「そうですね」
「せめて寝る時位はですよね」
「ほっとなって欲しいですね」
「安心して寝て欲しいですね」
「そう思うよ。どうしたものか」
檻の中で寂しく悲しそうなランバートを見て言った、そして。
ヴィッキーはここでランバートの以前の暮らしを確認して言った。
「家ではベッドで寝ていたそうだね」
「そうなんですか」
「床でなく」
「ベッドの中で寝ていたんですか」
「そうらしいね、可愛がってはいたそうだから」
粗末にするのではなく、というのだ。
「そうみたいだね、だからね」
「だから?」
「だからといいますと」
「ランバートに毛布をあげよう」
ベッドにあるそれをというのだ。
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