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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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荒んだ城下

 
前書き
あちゃ作品には珍しく、重めのお話「サマンオサ」編です。 

 
<サマンオサ>

周囲を絶壁に近い山々に囲まれた中に、広大な平地が広がる国サマンオサ。
サマンオサ王国の城下町に着いたのは、ジパングを出てから9日目の昼だった。
城下町に入り最初に目にした物は、荒んだ町並みだ…
「何だこの国………偽太后が幅をきかせていた頃のラインハットを思い出すなぁ…」
殆どの商店が閉まっている…いや、閉まるどころか開けっ放しで荒らされている!
人々の目には絶望の色が広がり、他人との関わりを避けようとしている。
「酷い国ですね…カンダタ、何か情報はあるの?」
「いや…何も聞いた事ねぇーな…モニカはどうだ?」
「アタイも何も聞いてないねぇ…この国は立地条件から、あんまりモンスターにも攻められなかったんだけど………疫病が蔓延してるって話も聞かないし…」

この国の現状に戸惑い呆然としていると、ウルフよりも少し年下ぐらいの子供が、勢い良くリュカにぶつかり走り去る………が、
「おい、待てガキ!」
走り去ろうとした子供の襟首を掴み、子猫を摘んで持ち上げる様に、子供を持ち上げた。
「な、何だよ!!ちょっとぶつかっただけだろ、離せよ!」
子供は浮浪児の様で、酷い悪臭を放っている。

「旦那…このボウズがどうしたんですか?小汚いし離してやりましょうよ!」
カンダタだけでなく、皆がその悪臭に顔を顰めてる。
「ボウズじゃないよ、女の子だよ。それにこの子…僕の財布をスッたんだ!」
「「「え!?」」」
リュカの言葉に皆驚く!
先ず、性別が判らないほど汚れている子供を掴める事に…
一瞬で女の子だと見抜いた事に…
そして財布をスッた事に…

「ふ、ふざけんなよ!ぶつかっただけなのに因縁付けんなよ!」
あくまでもシラを切る少女の服の中に手を入れ、財布を捜すリュカ。
「や、やめろ…このスケベ中年!!」
「スケベ中年だと!?訂正しろ、僕はまだ中年じゃないぞ!………お、あった!」
スケベである事には否定をせず、少女の服の中から自分の財布をまさぐり出す。
「あ!そ、それはアタシんだ…アンタのだと言う証拠は無いだろ!」

「ほぅ………じゃぁ中身を言ってみろ!」
「な、中身…は…お、お金だよ!何ゴールドかは忘れたけど…」
「ぶ~!残念でしたぁ!お金は1ゴールドも入ってません。中に入ってるのは、昨日ビアンカが着けていたブラとパンツです。淡いピンクのスケスケ下着ですぅ!」
リュカの言葉に少女は驚き、慌てて中身を取り出した!
財布から出てきた物は、リュカが言う様に淡いピンクのスケスケ下着…
「わぁ~ぉ!お母様セクスィ~!」

「リュ、リュカ…もういいでしょ…早くしまってよ………」
ビアンカは顔を真っ赤にして俯き呟く…
「ア、アンタ馬鹿なのか!?何で財布に下着入れてんだよ!」
憤慨する少女…逆ギレだろ、それ!
「うん。被ろうかなと思ったんだけどね…流石にそれは…ねぇ!?だから財布にしまっといた」
「は、早くしまってよ!」
少女の手からリュカの財布と自分の下着を引ったくり、慌てて懐に隠すビアンカ。
「意味分かんないんだけど!何なのアンタ…」


スリ少女を摘んだまま、裏路地へと入って行くリュカ達
閑散としているとは言えメイン通りで問答をしていると、ガラの悪い巡回兵の興味を引きかねない…
まだこの国の状況が掴めていない為、問題を起こすわけにはいかないのだ。
「いい加減離せよオッサン!」
「オッサンじゃない!イケメンお兄さんだ!言ってみろ!」

「ふざけんな馬鹿!死ねオッサン!」
「むぅ…口の悪い娘だ!こうしてやる!」
リュカはスリ少女を地面に下ろすと、徐に体中を擽りだした!
「ぎゃははははは…や、やめろ…あははははは…」
「ほら、超イケメンお兄さんって言ってみろ!」
「きゃはははは…うるさい…あははは…こ、このエロオヤジ…ひゃははははは…」
皆は信じられないという表情で、リュカと少女を眺めてる…
腐肉の様な酷い悪臭で、息をするのも苦痛なのに、リュカは気にすることなく少女の体中を擽りまくる。

「あはははは…も、もうやめて……ちょ、超…イケメ…ン…お兄さん…」
「よし、よく言えました。僕はまだ若いんだからね!」
裏路地の壁際にグッタリと座り込み、放心状態のスリ少女…
「さて………何だって君は、そんな恰好までしてスリをしてるんだい?」
「そんな恰好…?どういう事ですかリュカさん!?」
リュカの言葉に疑問を持ったアルルが、鼻と口をハンカチで押さえながら尋ねる。
「この娘、ワザと悪臭を服に擦り付けてスリをしてるんだ!多分この臭いは、腐ったネズミの死骸かな?」
先程までグッタリしてた少女が、リュカの言葉に驚き目を見開く。

「凄い…よくこの悪臭の根元が分かったね…」
「まぁね…顔と鼻と女運は良いんだ!」
「うぇ…何でワザワザそんな事なさるんですの?」
ウルフの服で鼻と口を覆っているマリーが、吐きそうな声でその奇妙な行動理由を尋ねる…
「………ふん!」
が、少女は答えない…代わりにリュカが答えてくれた。

「悪臭を纏う事で、スリへの注意を逸らすのが目的なんだ。こんな悪臭の人がぶつかって来たら、思わず突き放そうとするだろ!?自分の財布を確認するよりも、相手を突き飛ばす方が優先されるわけだよ」
「……そんな事まで分かるんだ…凄いねアンタ…で、アタシをどうするんだい?詫びを入れさせる為に、此処で犯すかい!?…それとも犯罪者として、警備の兵に引き渡すのかい?…ふっ、警備兵に引き渡されても、死ぬまで犯されるだけだね………私の未来は決まったね………」

「私達はそん「どうするかは君次第だ!何故スリを?」
リュカはアルルの言葉を遮って、少女にスリの理由を再度尋ねる。
「そ、そんな事…何だって関係ないだろ………さっさと犯すなり、殺すなり、好きにしなよ!」
リュカは少女の目を覗き込み、優しく問い続ける…
「関係なくは無いよ…どうして君が、こんな事をしなければならないのか…それを知りたいんだ」
そしてリュカは悪臭を意に介さず、少女を強く優しく抱き締める。

「何か力になれるかもしれない…だから、教えてほしい…何故スリをしてるのか…何故そうなってしまったのか…」
リュカの優しさと暖かさに、先程まで人生を諦めていた少女が泣き出した。
「うぇ~ん……ご、ごめんなさい……私………ごめんなさい!」
そんな少女を抱き締めたまま、リュカは待ち続ける…彼女が泣き止むまで…少女の頭を撫でながら…



 
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