ドリトル先生と不思議な蛸
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第四幕その五
「生態系に影響が出ますので」
「だからですか」
「はい」
それでというのです。
「生態系を維持する為に。それに捕鯨も文化ですから」
「いいというのですね」
「はい、むしろ環境や生態系を無視した極端な運動は」
「よくないですか」
「捕鯨に反対するにしても」
そうだというのです。
「ですから」
「捕鯨は賛成で」
「鯨も食べます」
「そうしたお考えですか」
「そもそも白鯨という小説がありますね」
「ああ、アメリカの小説ですね」
「ハーマン=メルヴィルの」
ダイバーさんも知っています。
「子供の頃映画を観ました」
「それでご存知でしたか」
「モビーディッグが凄かったですね、私が観た映画では倒していないですが」
「そのまま帰っていますか」
「何か小説では違うんですね」
「はい、戦って」
そのモビーディッグとです。
「主人公以外は全滅という」
「そうした展開ですね」
「そうでした」
「私もそれは知っていましたが」
「それでもですか」
「小説は読んでいないので」
それでというのです。
「そちらは何も言えないですが」
「それでもですね」
「知ってはいます」
「小説の方の結末は」
「そうです、ですが」
「それでもですか」
「捕鯨は確かにしていましたね」
ダイバーさんも言いました。
「日本以外の国も」
「そうでしたね」
「しかもお肉を食べていませんね」
「そうでした」
実際にとです、先生も答えました。
「目的は鯨油でした」
「鯨の油ですね」
「あれを夜の灯りの燃料に使っていたので」
それでというのです。
「それを手に入れる為にです」
「捕鯨をしていましたね」
「そうでした」
「日本ではもうです」
「鯨のあらゆる部分を使っていましたね」
「もうその全てをです」
こう先生にお話します。
「使います」
「無駄なくですね」
「昔は鯨を捕まえた漁村は一年楽に暮らせました」
そうすることが出来たというのです。
「それ程でした」
「そうですね、無駄なく使うので」
「だからですね」
「そうでしたが」
「白鯨の頃の欧州やアメリカは」
「鯨油だけだったので」
それだけを採っていてというのです。
「思いますに」
「無駄が多いですね」
「全く以て」
先生はダイバーさんに答えました。
「元々ペリー提督もです」
「あの黒船の」
「捕鯨の基地が欲しくてです」
その為にだったのです。
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