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戦国異伝供書

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第百二十六話 推挙その九

「だからな」
「それで、ですな」
「こちらも急ぐ」
「そうしますな」
「わしは織田殿と戦うつもりはない」
 それはないこともだ、義久は話した。
「決してな」
「ですな、我等は天下を望んでおりませぬ」
「ただ九州探題になる」
「その職に就くだけで」
「それで、ですな」
「それ以上はな」
 決してというのだ。
「求めぬ」
「だからですな」
「それでは」
「これよりですな」
「急ぐぞ」
 こう家臣達に告げてだった、義久は出陣を急がせた。すると皆これまで以上に旗らして出陣は予定より速く進み。
 そしてだ、出陣出来る様になると。
「時は来た」
「はい、それでは」
「これよりですな」
「出陣ですな」
「そうしますな」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「よいな」
「岩屋城に向かう」
「五万の軍勢で」
「そしてその上で一気に攻め落とし」
「大友殿に迫り」
「それが受けられぬなら」
「大宰府まで、ですか」
「そうする、時は我等の味方ではなくなった」
 皆にこのことも告げた。
「それは自覚せよ」
「ですな、織田殿が動かれるならです」
「もう悠長なことは言っておられませぬ」
「今すぐ出陣し攻めて」
「九州探題になりますな」
「わしがその職に相応しくないと思うならだ」
 義久は前にいる家臣達に問うた、そこには三人の弟達もいる。まさに島津家の主な者が全て集まっている。
「言ってみよ、今ここでな」
「ここで、ですか」
「我等が思うなら」
「それならですか」
「決して罰することはない」
 相応しくないと言ってというのだ。
「碌を減らすこともな」
「首もある」
「そうなのですか」
「そちらも」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのだ。
「思うなら今言うのじゃ」
「その筈がありませぬ」
 皆義久に強い声で答えた。
「どうしてそう思うでしょうか」
「我等は三国を再び一つにしました」
「薩摩と大隅、日向を」
「大友家と龍造寺家を破りました」
「最早九州の覇者です」
「ならば九州探題に相応しいです」
 九州を治める者としてというのだ。
「大友家はもうその力を失いました」
「そして龍造寺家にもありませぬ」
「無論他の家にも」
「ならば」
「そうか、ならな」
 それならとだ、義久は応えた。 
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