ボヘミア王
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第三章
「いいな」
「それでは」
「その様にしていく」
こう言ってだった。
ハイドリヒはボヘミアの中産階級出身のインテリゲンチャ達の中でナチスに批判的な者を片っ端から処刑していった、そのうえで。
労働者達は厚遇する飴と鞭の政策を徹底させた、そうしてボヘミアの状況をナチスにとって非常にいいものにしたが。
その拠点はプラハ城だった、まさにボヘミア王の居城だ。彼はそこには定住せず田舎の家に住んで労働者に近い立場であることを示していたが。
ある日城にいる時にふと興味を覚えて周りに言った。
「王冠があったな」
「ベーメン王の」
「それのですか」
「その前に行こう、そしてだ」
そのうえでというのだ。
「それを一つ被ってみよう」
「閣下、ですが」
「あの王冠には言い伝えがあります」
「若し相応しくない者が被ればです」
「一年のうちに」
死ぬとだ、周りは口々に言った。
「そう言われています」
「そうなりますが」
「ですからそれはでs」
「我々としては」
「それは迷信だ」
ハイドリヒはここでもこう言った。
「だからだ、若し私が被ってもだ」
「それでもですか」
「何ともない」
「そうなりますか」
「私は副総督だが」
もっと言えばこの地の全権を握る実質的な総督つまり王と言ってもいい立場である。周りも今の彼はそう見ている。
「私がこの地の王と皆呼ぶな」
「即ち王冠を被るべき」
「その立場である」
「そうだというのですね」
「その私が被ってもだ」
それでもというのだ。
「何もなければ迷信だ」
「そうなりますか」
「その時は」
「左様ですか」
「若しくは私がこの地の王に相応しいか」
迷信、仮にそれが真実ならというのだ。
「どちらかだな、私は王になるつもりなぞないがな」
「ですか」
「閣下は」
「そうですか」
「王になぞな」
総統とは言わなかった、その野心は今は隠した。やがてヒムラーを蹴落としてヒトラーの後継者となり必要とあらば彼でさえと思っていることは。
「では試しに被ってみよう」
「今からですか」
「そうされますか」
「その王冠を」
「それが置かれている場所に行ってな」
こう言って実際にだった。
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