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ドサド巫女

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第二章

「嫌われてはいない」
「悪名ではないんじゃな」
「そうだ」 
 まさにというのだ。
「そのことは確かだ、お前は嫌われていない」
「それが不思議か」
「それは何故だ」
「私の人徳じゃな」
「人徳か」
「それのお陰じゃ」
「横柄で意地悪をする奴にあるのか」 
 その人徳がというのだ。
「果たして」
「あるから嫌われておらんのじゃ」
「そうなのか、ではだ」
 三日月は愛の返事を聞いて目を光らせた、見れば癖のある鬣の様な黒髪で強い感じの眉できりっとした顔立ちだ。顎の先が尖っていて口は小さい。背は一七四センチ程で均整の取れたスタイルだ。贅肉は殆どない。
「それを見ていいか」
「私の人徳をじゃな」
「そうしていいか」
「思う存分見るのじゃ」
 愛は三日月に胸を張って答えた。
「私の人徳をな」
「それではな」
「というか友達でもそれがわからんか」
「お前と友達になったのは最近だ」
 三日月は愛の言葉に冷静な顔で答えた。
「だからだ」
「わからんのじゃな」
「人は何十年一緒にいてもわからないことがあったりするな」
「人程難しいものはない」
 愛はこのことは真顔で述べた。
「それこそわかろうとするとじゃ」
「難しいな」
「一生かかってもな」
「それでもか」
「わからなかったりする」
「それが人間だというのだな」
「それで私もじゃ」
 愛は三日月に自分から話した。
「わからんでもじゃ」
「仕方ないか」
「まして友達になって確かに短いな」
「大学で同じ学部と学科になって最初の講義で隣同士の席になってからだからな」
 二人は八条大学宗教学部神道学科に通っている、三日月は学問の為だが愛は将来巫女になるつもりで入った。
「それから半年だ」
「僅か半年ではのう」
「わからないことがある、というかだ」
「わからないことの方が多いのう」
「そうだな、だからだ」
「私が何故嫌われていないのか」
 その性格でもというのだ。
「見るな」
「そうしたい」
「なら神社に来るのじゃ」
 愛は自分から言った。
「私がアルバイトをしているな」
「そこに行けばだな」
「ある程度はわかるじゃろ」
「全部でなくてもだな」
「だから人のことをわかることはな」 
 理解することはというのだ。
「どうしてもじゃ」
「非常に難しいな」
「この世で一番難しい」
 こうもだ、愛は言った。
「だからじゃ」
「そのことはだな」
「全部わかる筈がない」
「そう考えてか」
「見ることじゃ」
 愛をというのだ。 
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