アーノルド
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第三章
「イギリスと戦争した時にイギリスについたな」
「そんな人いたんですね」
「アメリカの建国の時ですね」
「その時のことですね」
「独立戦争では大活躍してな」
この時はというのだ。
「大砲を六十も分捕ったりサラトガの戦いでも活躍したんだ」
「それなのにアメリカを裏切ったんですか」
「そこまで活躍して」
「それでもですか」
「金遣いの荒い奴で汚職までしてな」
そしてというのだ。
「情報をイギリスに流していてそれがわかったらな」
「イギリスについたんですか」
「そうした人ですか」
「アメリカにはそんな人もいるんですね」
「そしてだ」
コシュシコはさらに言った。
「あのオーナーはそのアーノルドやユダみたいなな」
「裏切者ですか」
「そうなんですか」
「ニューヨークの人達にとっては」
「そうなんですね」
「今はヤンキースとメッツがあるけれどな」
この二つのチームがというのだ。
「昔はドジャースもあったんだ」
「それでロスに移ったんで」
「お爺さんドジャース嫌いなんですね」
「そうなんですね」
「そうだ、とはいってもこのことを覚えている奴も少なくなった」
ドジャースがかつてニューヨークに本拠地があったことをだ。
「わしは覚えているがな」
「まあ日本でもそうですしね」
「西武は西鉄だった頃九州が本拠地でしたし」
「ダイエーだって南海の時は大阪が本拠地でした」
「チームの本拠地も変わりますね」
「そうなりますね」
「そうだな、だからわしは嫌いだが」
ドジャースというチームがというのだ。
「ニューヨークにいても若い奴があのチームをどうでもいいと思うのはな」
「別にいいですか」
「そうなんですね」
「お爺さんにしても」
「ああ、かく言うわしもな」
老人は今度は枝豆を食べて言った。
「今は日本にいるしな、戦争の時は海軍にいてあんた達の祖父さん達と戦ったんだがな」
「そうだったんですね」
「それで戦争に行ってたんですね」
「俺達の祖父さん達と戦ってたんですか」
「そうだったけれどな」
それがというのだ。
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