叺親父
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第二章
「悪い子になるわよ」
「高校生でかよ」
「そうよ、今は高校生でも子供だから」
そうみなされるからだというのだ。
「悪い子はいねえかって来るわよ」
「母ちゃんそれ秋田だと」
佐藤は母の言葉にこう返した。
「ナマハゲだろ」
「あの鬼ね」
「ああ、それだろ」
悪い子はいないかと言って来るのはというのだ。
「ここ青森だからな」
「ナマハゲは来ないって言うのね」
「そうだろ」
「何言ってるのよ、出るものは出るわよ」
「何が出るんだよ」
「叺親父が出るのよ」
母は息子とその友人達にむっとした顔で言った。
「それがね」
「何だよそれ」
「泣いている子供とか悪い子供を背中の大きな袋に入れて攫って行く妖怪よ」
「そんなのいるのかよ」
「ええ、鬼みたいな大男らしいわよ」
母は妖怪の外見の話もした。
「それが出て来るわよ」
「そんなの青森にいたんだな」
佐藤は母のその話を聞いてしみじみとして言った。
「そうだったんだな」
「そうよ、あんた達も知らなかったみたいね」
「ああ、俺達妖怪ってゲゲゲとか位しか知らないけれどな」
「そういうのに出てる妖怪なら知ってますよ」
河竹は佐藤の母に笑って話した。
「砂かけ婆とかバックベアードとか」
「バックベアードってアメリカの妖怪でしょ」
瑞希がすぐに突っ込みを入れた。
「だから違うわよ」
「ああ、そうだったね」
「砂かけ婆は日本の妖怪だけれど」
「そういう妖怪以外にもいるのよ」
佐藤の母は飲みながら話す二人にも言った、そこにいる息子以外の三人も子供の頃から知っているので砕けた感じだ。
「青森にはね」
「そうだったんですね」
「そうよ、だから飲むなとは言わないけれど」
今更というのだ。
「いいわね」
「あまり、ですね」
「飲んで管巻かないことですね」
「そう、飲むなら楽しく飲むことよ」
これがいい飲み方だというのだ。
「いいわね」
「そんなの別にいいだろ」
佐藤は母にこう返した。
「寒さが悪いんだからな」
「それを理由に飲んでるだけでしょ」
「それは違うからな」
「違わないでしょ、とにかくね」
「管巻くなか」
「そうよ、じゃあいいわね」
「そんなの別にいいだろ」
まだこう言ってだった、そのうえで。
佐藤は友人達と共に飲み続けた、炬燵に入ってそうし続けた。そして母は夕食を作りに台所に向かった。
四人はさらに飲み続けた、安い焼酎四人でそれぞれ金を出して買った四リットルのそれを一緒に飲みそうしてやはり管を巻いていたが。
不意にだった、部屋の障子が開いた。四人共また佐藤の母が来たのかと最初思ったが。
何と赤鬼が来た、腰巻は虎のそれで背は二メートル以上ありしかも背中には大きな袋がある。その姿を見て四人共悟った。
その四人にだ、鬼は聞いて来た。
「悪い子はおらんか」
「ええと、津軽にいません?」
河竹は咄嗟にこう返した。
「生まれてきてすいませんって言う子が」
「あの人もう亡くなってるじゃない」
麻子がすぐに突っ込みを入れた。
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