律儀に
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第三章
「百貨店行くか」
「百貨店か」
「そこは行ってないよな」
「まだな」
沙織はそうだと答えた。
「そうだった」
「横須賀にも行ってないな」
「そこもな」
「じゃあな」
「横須賀の百貨店か」
「駅前にそうしたところあったよな」
「横須賀中央駅の方だな」
その駅の前だとだ、沙織も答えた。
「あそこに行くか」
「そうするか」
「うむ、ではな」
「ああ、そっちに行こうな」
次のデートはというのだ。
「そうしような」
「わかった」
まさにとだ、沙織も頷いてだった。
そうして二人で横須賀の駅前の百官店に行くことにした、横須賀は横浜程でないが賑やかな街でありそれでだった。
八幡はその日の十時にと沙織と約束をして彼女を横須賀中央駅を出たところで待った、そこは人が行き交っていたが。
立体交差点の下の道路に右翼の街宣車が走っていた、八幡はそれを見てまた来たかと思った。そしてだった。
その彼等を見てだ、八幡は横須賀に行くとこれは風物詩かと思っていたがそう思っているとだった。
黒のズボンに白のブラウス、そして黒の鞄にボルサリーノという恰好の沙織が時間通りに来た。その彼女を見てだった。
八幡は彼女にこう言った。
「いつも時間通りだよな」
「時間は守らないとな」
「それにな」
「服装のことか」
「ズボンにボルサリーノか」
「男装の様だな」
「というかまんまだよな」
沙織のそのファッションにも話した。
「本当にな」
「今日は他の服は全てアイロンがけをしていなかった」
「スカートはか」
「そうだったからな」
「ズボンでか」
「今日は日差しが強く帽子を被らないと駄目だった」
「それでそのズボンに合う帽子はか」
「これしかなくてな」
持っているものではというのだ。
「それでだ」
「ボルサリーノなんだな」
「そうだった」
「そうか、しかしな」
八幡は沙織にさらに言った。
「お前いつも服はしっかりしてるな」
「洗濯してアイロンをかけている」
「アイロンがけの時糊効かせてるな」
「そうしている」
「それでそうした服がなかったからか」
「他にな」
それでというのだ。
「今日はこの服になった」
「そうなんだな」
「そしてだ」
それでというのだ。
「デートには申し訳ないが」
「ズボンなんだな」
「私の失態だ、スカートを全て洗濯してしまっていた」
「それでもよかったけれどな」
「そうはいかない、八幡君とのデートだ」
それに行くからだというのだ。
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