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Fate/WizarDragonknight

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冬はバーベキュー

 多田(ただ)コウスケは学生である。
 聖杯戦争などという不可思議な現象に巻き込まれはしたが、それでも大学生という身分は変わらない。
 今日も大学での講義を終え、フィールドワークのために河原に来ていた。

「つうわけで、オレ今日明日のうちに、調査して来週中にまとめなくちゃいけないわけよ」

 バックパックを背負ったコウスケは、響へ言った。

「だから、今日はこのあたりの調査だ」

 コウスケは、自然が多い河原の崖を指さした。
 見滝原の中でも奥の方に位置するこの河原。周囲は深い森に覆われており、足元には、まだ水にそれほど削られていない石がゴロゴロしている。

「先生! 質問!」
「おう、何だ?」

 響が元気よく尋ねた。

「たしかコウスケさんって、人の古代歴史を調べてるんだよね?」
「おう。この前お前が行ったっていう、ムー大陸も、それに近いかな? まあ、オカルトじゃねえことだけど」
「どうしてこんな山奥に来たんですか?」
「うむ。いい質問だ」

 コウスケは悪い足場をのっしのっしと歩いていく。響も少し拙いながらも、コウスケの後ろに付いてきている。

「この近くには遺跡があってな? まあ、掘りつくされちまってるから、もう目新しいものもねえんだが。それでも極稀に新発見がある場合もある。その調査が、今回の目的だ」
「その遺跡に行くの?」
「遺跡に行って、そのレポートを書く。本当はお前がこの前言った博物館のことを詳しく聞いて、あることないことレポートに書けばいいんだけど、お前あんまり詳しく教えてくれねえからな」
「すごかった!」
「それだけで単位くれるなら教授はいらねえんだよ……」

 コウスケがげんなりと言った。

「先生! 質問があります!」
「みなまで言うな! オレは最初っから何か見つけるつもりできたんだぜ! ほれ、こんなものもあるしな!」

 コウスケはそう言って、首にかけたデジタルカメラを見せつけた。

「オレのバイト貯金をつぎ込んで買ったカメラだ! くまなく調査するぜ! きっとどこかにまだお宝が眠ってるからな!」
「はい! 先生!」

 響の元気な返事とともに、コウスケは響とともに河原の歩を進めた。



 見滝原の中央を流れ、木組みの街を通っていく見滝原川。
 その上流であるこの河川敷は、バーベキューとしても有名な場所だった。
 もうすぐでクリスマスにもなる時期。学生や社会人などが、一足早い忘年会としてこの場所を選ぶ者も多く、臭いによって猛烈な空腹が襲い掛かる。

「こ、コウスケさん……」
「みなまで言うな! ここは、耐えるんだ……」

 ぐったりとした顔の響に対し、コウスケが言い張る。
 どうやら遺跡があるのはもう少し上流の部分であり、バスを降りるのが少し早すぎた。
 結果、コウスケと響は徒歩で上流に行くことになったのだが、その途中でバーベキュー地帯に差し当たってしまった。
 家族連れ、学生、社会人。老若男女がそれぞれ肉をジュージュー焼いているなか、埃くさい器具を背負って登山をする。

「何この鍛錬! 師匠の特訓よりも軽く十倍はキツイよ!」
「みなまで言うな!」
「いや言いたくもなるよ! 私もお腹空いた! バーベキュー食べたい!」
「オレだって腹減ってんだよ!」

 コウスケは半ば叫んだ。だが、他に道がないとは言え、この場所を通過するのは中々に苦行だった。

「くそう……今年中にレポート仕上げねえと単位がヤバいんだよ……最近禄に出てねえせえで課題たんまりだしよ……このままだとオレ留年の危機なんだよ……!」
「ずっとあちこちのバイトを掛け持ちで回ってたもんね」
「みなまで言うな! 金がねえんだよ、金が!」

 コウスケは大きなため息をついた。

「ねえ、コウスケさん。前に実家から仕送りもらってるって言ってなかったっけ?」
「使わねえよ。あれは。オレはあくまで自立を条件に大学に通ってるからな。ばあちゃんが送ってるけど、あれは一切使わねえ」
「苦学生……」

 だが、そんな目の前に、肉がジュージュー焼かれる音がどうしても防げない。思わず足が、バーベキュー会場に向かってしまう。

「コウスケさん!」
「は、いけねえいけねえ」

 響の呼びかけに足を止めるが、すでにコウスケはバーベキュー会場の真ん中に来てしまった。

「ああ……」
「やべえ。響、どうする?」
「どうするもこうするも……」

 腹の機嫌がどんどん悪くなる。やがて真っすぐ立てなくなったコウスケは、腹を抱えだした。

「ウェーイ!」
「っくっそおおおおおお!」

 元気な掛け声に、コウスケは悲鳴を上げる。

「速く行くぞ! このままだと、オレらもバーベキューに染まっちまう!」

 そう高らかに宣言したコウスケは、遺跡への足を急ぐ。そして。

「っぷはぁ! やっぱりビールはうめえ!」

 バーベキューに染まった。



「……」

 響は目を点にして、酒をグビグビと飲むコウスケを見つめていた。
 結局バーベキューに負けた彼は、そのまま若い社会人たちに引き込まれ、バーベキューに参加した。そのまま響も同じように参加させられることになり、響に渡された紙皿には、串焼きが乗せられている。

「ほらほら。袖振り合うも他生の縁。いっぱい食べていきなって」
「ありがとうございます!」

 もともと社交性のある性格の響とコウスケにおいて、遠慮というものは存在しない。話が乗ってしまえば、もうそこにいる者たちと旧知の仲だったかのようにともに食事に興じていた。
 リーダー格の女性からもらった串焼きを、響は口に運んだ。すると。

「ん! 美味しい!」
「へっへ~ん。でしょでしょ?」

 金髪の女性が得意げに言った。黒シャツとロングスカートの彼女は、髪などの手入れもほとんどしていないのにも関わらず、美人で誰もが振り向くような容姿をしていた。

「はい! これなんかもう、食べた瞬間に肉の香りが口の中に一杯に広がって、すごいです!」
「おお? 君いい反応するね。もしかしてまだ学生?」
「色々あって、無職の彼氏いない歴十七年です!」
「あっははは、そっかそっか。よかったらウチの会社来る?」
「ええっ!? そ、それはちょっと……まだ未成年だから、できることならもっといろいろ見たいと思ってしまうお年頃なのです!」
「がっははは! 冗談冗談!」

 金髪の女性は響の肩を組む。

「なんたって今日は、ウチの一年お疲れ様会だからな? 多少のジョークは許せ! ほらりん! 酒じゃんじゃん持ってこい!」
「もう、昼間から飲みすぎよ」

 すると、彼女の同僚らしき女性が釘を刺してきた。派手な美人の印象だった金髪の女性とは真逆に、おしとやかそうな外見の彼女は、金髪の女性にペットボトルの水を渡す。

「ごめんね。巻き込んじゃって。この人、仕事はできるんだけどそれ以外がズボラで」
「なんだよ、いいじゃんかよ~! ついでだ、この子にもビール! ビール!」
「ええええっ!? 私未成年!」
「やめなさい」
「ちぇ」

 おしとやかそうな女性の言葉で、金髪の女性は次にコウスケに絡みだした。すでに酔い始めているコウスケとは少し喋っていたが、やがて意気投合し、互いに浴びるように酒を踊り飲みし始めた。
ポカーンと開いた口が塞がらなくなっていた響の隣に、別の人物が腰を下ろした。

「ごめんね。ウチの人がなんか迷惑をかけて」

 淡い紫のツインテール。年下なのかと見紛うような同顔。誰かの娘なのだろうかと思いながら、響は首を振った。

「ううん。全然。お腹空いてたから、むしろ助かったよ」
「そう言ってくれるとありがたいかな。仕事はすごい人なんだけど、お酒の席だとこうなっちゃうからな……」
「え? でも、君、まだ子供だよね? そういうことわかっちゃうの?」
「え?」
「え?」

 驚いたような顔をするツインテール。彼女はしばらくしてから、合点が行ったように手を打ち、

「ああっ! もしかして、私子供だと思われた!?」
「ええっ!?」

 響は慌てて口を抑える。だが、ツインテールはそれでは収まらず、

「私これでも十九ですよ!?」
「!?」

 見えない、とは言えない。
 だが、頬を膨らませる彼女を、響は不覚にも可愛いと思ってしまった。

「なあなあ」

 その時、別の声が聞こえてきた。低い男性らしき声。響たちと同じ通りすがりなのだろうか。

「オレも混ぜてくれよ」

 それに対して、金髪の女性の肯定の声が聞こえてきた。

「ああ! いい……ぜ……」

 だが、酔っぱらった金髪の女性の声が途中で止まった。
 響が振り向くと、その表情も凍り付いた。

「あんがとよ!」

 近くの社員を蹴り飛ばし、直接バーベキューの機械から串焼きを奪い、口に運ぶ存在。
 青い体と四つの黄色の目。錨のような鎌のような義手を持った異形。

「バングレイ!」

 響が叫ぶよりも先に、バングレイは他の社員を蹴り飛ばし、クーラーボックスの中から缶ビールを取り出す。

「お? これビールって奴じゃねえか? ラッキー」

 バングレイはそのまま缶ビールを口に運ぶが、プルタブというものを知らないバングレイは、缶を数回振る。

「ああ? これどうやって開けんだ?」

 しばらく缶ビールを撫でまわしたバングレイは、結局上部分を左手の鎌で両断した。そのまままるでコップのように中のビールを飲み干し、投げ捨てる。

「悪くねえな。コイツもいただくぜ!」

 バングレイは残りの串焼きも全て取り上げ、バーベキューコンロを蹴り倒す。

「うわあああああ!」
「逃げろおおおお!」
「コウちゃん! 早く!」

 おしとやかな女性に背負われた金髪の女性も離れていく。
 響はバングレイに立ち向かおうとするが、ツインテールがそれよりも先に響の腕を掴んだ。

「逃げるよ!」
「ええ?」

 響が止める間もなく、ツインテールに引っ張られていく。
 そのまま、響の視界は、バングレイから森の中へシフトしていった。



 バングレイは、どんどんバーベキュー場の料理を平らげていく。
 地球はなかなか美味しい料理が揃っている。
 バングレイは、ここ数日間の滞在で地球の料理を片っ端から食らっていた。中でも、このビールという飲み物は気に入っていた。

「っぷはぁ! 快適快適」

 バングレイは残されたバーベキュー道具を蹴り飛ばしながら、むしゃむしゃとバーベキューの食材を、生だろうが焼いたものだろうが食い散らしていく。

「うぃ~」

 その時、間の抜けた声が聞こえてくる。耳障りなそれに振り向くと、川のそばで、ビールを飲んだくれている男がいた。

「まだいやがったのか? そいつもよこせ!」

 バングレイは彼から缶ビールを奪い、飲み干す。

「あ! おい、返せ! そいつはオレがもらったんだぞ!」
「うるせえ!」

 掴みかかってくる彼を殴り飛ばし、バングレイはビールを飲み干す。

「奪って飲むビールはバリうまいぜ」
「返せやこの野郎!」

 すっかり顔を赤くしている下等生物を蹴り飛ばし、そのまま相手は川に転倒。ブクブクと水の中で泡立てている。

「がっははは! この星の奴らは大抵弱え癖に、飯だけはいい。最高じゃねえか。ったく、こんなことなら聖杯戦争に参加するのはもう少し後にしとけばよかったぜ」

 バングレイは倒れた机に座る。まだまだ残っている串焼きの味は、なかなかビールに合うではないか。

「この街から出られねえってのは不便だからな。早いうちに狩りつくして、他のところの飯も食いに行かねえとな」

 すると、水音が聞こえた。
 さっき殴り飛ばした下等生物が、酔いから冷めたような顔で頭を振っていた。

「あれ? 響? それに、皆どこに行った?」

 下等生物は馬鹿らしく、逃げていった羽虫を探している。
 バングレイはしばらくその様子を観察しようかと考えていたが、それよりも先に相手がバングレイを指さした。

「うわっ! なんだお前!」
「バリ失礼な奴だな?」

 バングレイは顎肘をつきながら吐き捨てる。

「下等生物ごときが。もう少し面白い行動して見せろよ」
「何が面白い行動だ!?」

 下等生物は川から上がってくる。しばらくバングレイが踏み荒らしたバーベキュー場を見渡し、

「おい。お前、まさかここをこんなにしたのはお前か?」
「だったら何だ?」

 バングレイは座っていた机を蹴り砕いた。

「この星は、俺の狩場だ。バリかゆ」
「お前宇宙人か……? 待てよ。この前響が出会った新しいマスターってのは……」
「はっ! お前、聖杯戦争の参加者かよ」

 バングレイの声に、下等生物は右手の甲の紋章を見せる。花のように広がった(フォニックゲインの)形状をしているそれは、バングレイの右手にもある令呪に相違なかった。

「ハッ! バリ面白れぇじゃん」

 バングレイは左手の鎌で右手を数回叩く。四つの目を光らせ、少しずつ下等生物に近づく。

「食後の運動だ。俺に狩らせろ!」
「うおっ!」

 下等生物はバク転でバングレイの鎌を回避する。
 バングレイはさらに右手に持った錨の形をした剣、バリブレイドを振るう。下等生物は再びバク転で攻撃を反らすが、バリブレイドが穿った川には、大きなクレーターができた。

「おいおい、マジの攻撃かよ……?」
「バリ当たり前だ! 狩りは徹底的にいたぶってこそだぜ? 聖杯戦争も、そういうルールなんだろ? オラオラァ!」

 さらにバングレイは手を緩めない。何度も何度も、バリブレイドで下等生物を襲う。
 だが、動きがすばしっこい下等生物には当たらない。
 だが、ここでイライラするのは三下の極意。バングレイは少しずつ距離を取っていく下等生物を深追いすることはなかった。
 下等生物は背負ったバックパックを下ろす。

「仕方ねえ。オレは別に聖杯戦争なんざ興味ねえし、そもそも願いなんてねえ。けどな」

 彼は右手に付けていた指輪を腰に掲げる。すると、『ドライバー オン!』と獣の咆哮のような音声が流れた。
 彼の腰に、黒いバックルが出現する。あたかも扉のような形状のそれに、バングレイは首を傾げた。
 下等生物は続ける。

「食い物を粗末に扱ったり、他の奴のバーベキューをメチャメチャにするやつが、いいやつなわけがねえ! 一回ぶちのめしてやる!」

 彼は何やら金色の指輪を左手に付けた。同時に、左手を真っすぐ空へ伸ばす。

「変~身!」

 両腕を回転させ、腰を低くしたポーズを取る。すさかずバックルの左に付いているソケットへ、金色の指輪を突っ込む。

『セット』

 そして指輪を捻ると、バックルの扉が開く。

『オープン』

 開いた扉からは、金色の獣の顔が現れた。今にも動き出しそうなほど緻密な造形のそれは、吠えると同時に金色の魔法陣が吐き出される。魔法陣は下等生物の体を包めるほど巨大化し、その体を通り、消滅。
 すると、下等生物の姿は完全に変化していた。

「……お前、何者だ?」
「オレはビースト!」

 金色の獣はそう言った。
 ライオンの顔のオブジェが右肩に付いた、金と黒の戦士。
 緑の目を持つ、ビーストと名乗ったそれは、バングレイを指さす。

「聖杯戦争とか関係ねえ。食い物を粗末にするやつに、お灸をすえてやる!」 
 

 
後書き
可奈美「どう?」
ハルト「もうちょっと右」
可奈美「右ってこの辺?」
ハルト「そうそう、その辺」
可奈美「よし。旗の貼り付けおしまい! これで完成?」
ハルト「だね。だんだんクリスマスっぽくなってきたんじゃない?」
可奈美「そうだね。楽しみだよ! ココアちゃんたちも友達呼ぶって言ってたから」
ハルト「可奈美ちゃんはいいの?」
可奈美「あ……私は……みんなを呼んじゃうと、連れ戻されそうな気もするし……」
ハルト「まあね……」
ココア「何の話してるのかな?」ヌッ
ハルト「うわ! びっくりした」
可奈美「ココアちゃん、いつの間に……」
ココア「むふふ。お姉ちゃんサプライズだよ! 私もクリスマスたのしみ! 早くみんなにシャロちゃんと千夜ちゃんを紹介したいよ!」
ハルト「リゼちゃんも同じこと言ってたな」
ココア「というわけで、今日のアニメ、いってみよー!」


___いつか誰かとまた恋をして 違う道を行くパラレルストーリー___


ココア「ラクエンロジック!」
ハルト「2016年の1月から3月までやってたアニメだな」
可奈美「剣美親(つるぎよしちか)君が、女神アテナと一緒に、異世界の敵フォーリナーと戦っていくお話だよ! ロジックがキーワードにもなっている点にも注目だね!」
ハルト「あと、カードゲームをテーマにしているアニメなのにカードゲームをしていないんだよね。最近だとあんまり珍しくないけど」
ココア「(まな)ちゃん可愛い! 無口なところとかチノちゃんそっくり!」
ハルト「ココアちゃんは本当に節操なしだな」
ココア「違うよ! 私は、この世の全ての妹になりうる人を愛しているんだよ!」
ハルト「人たらしみたいなこと言い出した!」
可奈美「私はケッツーさんを飼いたいなあ」
ハルト「ここにも訳わかんないこと言う人がいたぁ!」 
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