窓の外の景色が好きな猫
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第二章
家族に迎え入れた、すると休日に小さな目で面長の顔を持ち黒髪が短い森鴎外に似た顔の一七〇程の痩せた身体の夫は二人の間に生まれた赤子の息子林一の傍にいながら窓の方を見ているエイブに対して言った。
「エイブはよく窓の外を見るな」
「ええ、暇があったら窓の傍にも行くしね」
「窓の外の景色が好きなんだな」
「そうね、エイブは窓の外の景色が好きなのね」
「ニャア」
エイブはそうだという感じの返事をした、その間も窓の外を見ている。妻はエイブのその返事を見て夫に言った。
「そうみたいね」
「飼われていたかも知れないんだな」
「それでその時にね」
「窓の外から景色を見ていたのか」
「そうかもね。あと蛇口から出るお水を飲むのが好きなのも」
このこともというのだ。
「これもね」
「前に飼われていた時にか」
「そうかも知れないわね」
「そうか、まあそのことはわからないけれどな」
「エイブが窓の外から見える景色が好きでね」
「蛇口からお水を飲むのが好きなことなな」
「そのことは事実ね」
紛れもなくというのだ。
「そうね」
「そうだよな、そうした特徴も一緒にいるとな」
「面白いわね」
「そうだな、猫が一緒にいるとそう思えるんだな」
「猫はいいわね、施設でこの子を一目見て何か感じて」
所謂運命を感じた、一目惚れではないがそうしたものを感じてだったのだ。
「この子を家族にしたけれど」
「よかったな」
「林一の傍にいてお兄さんとして守る感じだしね」
「林一も猫アレルギーじゃなかったし」
「本当によかったわ、じゃあこれからもね」
「エイブともな」
今も窓の外の方を見ている彼を見つつだ、夫は妻に話した。
「仲良くな」
「皆で過ごしていきましょう」
「そうしような」
「エイブもそれでいいわね」
「ニャア」
エイブはここでは家族に顔を向けて鳴いて応えた、夫婦はそんな彼を見て笑顔になった。妻はその彼の背中を撫でたがこの時彼は窓の外に顔を戻していた。そうして喉をゴロゴロと鳴らしていた。
窓の外の景色が好きな猫 完
2021・2・24
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