戦国異伝供書
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第百二十五話 誘い出しその十
「よいな」
「はい、首実検が終われば」
「その後で葬りです」
「しかと供養しましょうぞ」
「この者達を」
「そうする、そしてこれで龍造寺家はその力をかなり弱めた」
今度は龍造寺家のことを話した。
「もう肥前を守るので手が一杯の筈じゃ」
「ですな、この負けは大きいです」
「多くの兵を失いです」
「主な家臣の方も多く討ち取られ」
「ご当主殿もですし」
「それはかなりの痛手じゃ」
このことは間違いないというのだ。
「だからな」
「もう肥前を守るのが手が一杯ですな」
「それも島原の辺りを除いて」
「それならばですな」
「我等としては」
「これから楽になった」
大友家に続いて龍造寺家も衰えてというのだ。
「もう九州で我等を脅かす者はおらぬ」
「薩摩、大隅、日向は我等のものですな」
「完全にそうなりましたな」
「この二つの家が衰えた今」
「そうなりましたな」
「後はな」
まさにというのだ。
「憂いはない、織田殿にお話をして」
「三国の守護の座を認めて頂く」
「それでもうよいですな」
「そして織田家の天下の下で生きる」
「そうなりますな」
「うむ、そうなった」
こう言ってそうしてだった。
義久は首実検を終えて討ち取った者達の供養を行った、そうしたことが全て終わって薩摩に戻ってだった。
この度の勝ちを大いに祝った、その中で。
義久は酒を飲みつつ家の主な者達に話した。
「いや、皆よくやってくれた」
「いえいえ、これも殿のお力です」
「殿がおられてこそです」
「今の当家があります」
「三国を再び一つにしてです」
「大友家も龍造寺家も破ることが出来ました」
「全て殿がおられるからこそです」
家臣達は飲みつつ口々に言った。
「このことは」
「まさに殿のお働きです」
「実際に殿も出陣されていますし」
「そうして勝たれてもいます」
「そのことを思いますと」
「やはり殿があってです」
「わし一人でこうしたことは出来ぬ」
到底とだ、義久は家臣達に話した。
「だからな」
「そう言って頂けますか」
「我等の存在があってと」
「その様に」
「そう言われますか」
「そうじゃ、だからじゃ」
それでというのだ。
「心から感謝しておる、それで今宵の馳走であるが」
「いや、美味いですな」
「刺身もありますし」
「豚の料理も出ておりまする」
「肝もです」
「実によいですな」
「当家は贅沢はせぬ」
島津家はとだ、義久は語った。
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