母犬の愛情
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第一章
母犬の愛情
テキサス州南部のシェルターの中に茶色と白の毛でやや耳が垂れた大きな雌犬がいた、毛はボロボロでかなり痩せている。
その後ろにはこげ茶色と白でやはりやや耳が垂れている子犬がいる、大きな犬はその子犬の傍から決して離れず必死に守っている。
ニューヨークから来た保護センターのスタッフであるシュンカ=リー黒髪と黒い切れ長の目がアジア系であることを知らしめている彼女はその犬達を見てスタッフの人達に尋ねた。
「母犬がサディーで」
「はい、子犬が息子でベンジーです」
スタッフの人も答えた。
「母子でこのシェルターにいまして」
「いつもですか」
「子犬は恐怖に震えていつも縮こまっていて」
「全然知らない場所に連れて来られてですね」
「はい、しかもここは殺処分もありますから」
「余計にですね」
「怖がっていて。母犬がです」
そのサディーがというのだ。
「ああしてです」
「いつも子犬の傍にいてですね」
「守っています」
「そうなんですね」
見ればサディーは隅で寝て縮こまっている息子の前に立っている、そして必死の顔で守っている。
そのサディーを見てだった、リーは言った。
「本当に必死ですね」
「母親ですからね」
「やっぱりです」
「必死に守っていますね」
「自分も殺処分されるかも知れないのに」
「ああして」
「他の子達もそうですが」
リーは意を決した顔で言った。
「この子達は」
「救われるべきですね」
「家族を手に入れて」
「そうでないといけないですね」
「こちらでも飼い主を探します」
リーはスタッフの人達に約束した。
「そうします」
「そうしてくれますか」
「ではお願いします」
「この子達の里親を探して下さい」
「そちらでも」
「そうします」
リーはすぐに母子を自分達の団体のサイトでも紹介した、すると。
暫くしてデーヴァ=ハンマック、四匹の犬と暮らしている赤毛で濃い青の目の中年女性が娘のマリアに言った。見れば娘も赤毛で濃い青の目である。ただ娘は十七歳位で母より痩せていて髪の毛は長い。
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