魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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最終章:無限の可能性
第281話「求めていたモノ」
前書き
帝sideの続きです。
優奈達も若干出番あります。
「がはっ!?」
拳が腹にめり込み、帝の体が吹き飛ぶ。
地面に叩きつけられ、クレーターを作り出すと同時に地面をまくり上げる。
既に、何度も地面が抉れ、捲り上がった事でまるで岩場のようになっている。
「っ……!」
すぐに起き上がり、バク転で追撃を躱す。
さらに気弾を連射し、牽制しつつ間合いを取り……
「ぜぇあっ!!」
瞬間移動で回り込み、首に回し蹴りを叩き込む。
しかし、それは腕で防がれ、脚を掴まれてしまった。
「しまっ……!?」
「おおっ!!」
棒切れのように振り回され、何度も地面や壁に叩きつけられる。
「ッ、はぁっ!!」
気を開放し、さらに至近距離から気弾をぶつけ、帝は何とかその場から脱する。
さらに蹴りを叩き込み、間合いを取る。
「波ッ!!」
自由落下しつつ、“かめはめ波”を叩き込む。
さすがに防御の上からでもダメージを受けるからか、転移で躱される。
「ッ……!」
瞬間移動を連発する。
何度も隙を突こうと回り込み、同時に回り込まれる。
その連続を繰り返し、ようやく捉える。
「ごはっ……!?」
だが、食らったのは帝だ。
放った拳を躱され、逆に腹を殴られて吹き飛ばされる。
「がぁああああああっ!!?」
さらに、地面に叩きつけられ、蹴りがめり込む。
ついに拮抗が崩れ始めたのだ。
「ッ……はぁああっ!!」
「っ……!」
神の体をどかそうと、至近距離から気を放つ。
防御の上から吹き飛ばし、即座に瞬間移動を使う。
「がッ!?」
「もう見切ったぞ」
直後、瞬間移動に干渉されて再び地面に叩きつけられた。
「(瞬間移動にも干渉してくるのか、こいつは……!)」
転移魔法より遥かに使い勝手の良かった瞬間移動。
しかし、それにすら干渉されるとなれば、空間跳躍は最早使えない。
自身の超スピードのみで立ち回る事になる。
「っ、ぁあああああっ!!」
使用する力を“スーパーサイヤ人ゴッド”から“スーパーサイヤ人ブルー”へ変える。
さらに“界王拳”を上乗せし、無理矢理振りほどく。
「はぁああああああっ!!」
力を底上げした事で、再び殴り合う。
超スピードで何度も移動しながら、攻撃と防御の応酬を繰り返す。
「所詮は他者の力。……それがお前の限界だ!」
「ッ……!?」
その時だった。
「かはッ……!?な、何が……!?」
体の至る所を殴られた感覚が突き抜け、捲り上がって壁となった地面をいくつも貫通して帝の体は転がった。
「確かにその力は凄まじいモノだ。……だが、それでは俺に勝てん」
「っ―――」
そこからは、最早一方的だった。
吹き飛ばされ、叩き落され、防御を破られる。
どんなに力を高めようと、その上を行かれてしまう。
拮抗は完全に崩れ、防御すら儘ならずに打ちのめされるしかなかった。
「がっ、ぐっ、っっ……!」
地面を転がり、帝は倒れ伏す。
立ち上がろうと力を籠めるが、上手く行かない。
「(くそっ……!)」
“固有領域”を発揮してからの明確な敗北に、立ち上がれずにいたのだ。
「帝!?」
「っ……!」
声の方に目を向ければ、そこには未だに戦い続ける優奈の姿があった。
神夜も合流したのか、三人で四人の“天使”と戦っている。
「くっ……!」
「させないよ!」
帝に気を取られた優奈が隙を晒すが、葵がフォローする。
現在、四人の“天使”の内、一人は瀕死だ。
葵の無理矢理な同化でかなり“領域”を削っていた。
「(一人は倒している。なら、せめて俺が足止めしないと……!)」
目の前の神は、冗談抜きに強い。
なぜイリスの味方をしているのかと思う程、堂々とした強さだ。
そんな神が優奈達の戦いに乱入すれば、それこそ敗北してしまう。
それだけは阻止するために、帝は再度奮い立つ。
「はぁあああああっ!!」
気を開放し、再度“スーパーサイヤ人ゴッド”へとなる。
赤い燐光を撒き散らし、神へと挑みかかった。
「(目を逸らすな。決して見失うな。見極めろ、動きを―――ッ!)」
繰り出される拳と蹴りを、気合で防ぐ。
防ぐ度に衝撃が痛みとして体を駆け巡る。
だが、それすらも我慢して攻撃を受け止める。
「まだ立ち向かうか……」
「お前は、ここで止める……!」
一方、神は先ほどまでと違い、帝をどこか冷めた目で見ていた。
既に負けたからなのか、最早興味がない目だった。
「っ……!」
しかし、状況はすぐに変わる。
防ぎきれなかった一撃が顔を捉え、帝はたたらを踏む。
間髪入れずに腹に拳がめり込み、怯みで顔が下がった所を蹴り上げられた。
「かはっ……!?」
地面に倒れ、血反吐を吐く。
「(ダメだ……一度負けたら、勝てる気が……)」
憧れた存在の力ですら敵わなかった。
その事実が帝を苦しめる。
「(そりゃあ、こいつも興味を失うわな……)」
結果、帝は先ほどまでより弱くなっていた。
だからこそ、神は興味を失っていたのだ。
「―――トドメだ」
目の前に来ていた神が、掌に理力を集束させる。
優奈達はそちらの戦いで精一杯となっており、助けに来れる状況じゃない。
それを見て、“最早これまでか”と帝は目を瞑った。
「―――……?」
しかし、来るべきである衝撃は来なかった。
「―――まったく、私がいないと相変わらずダメなんですね。マスター」
「ッ―――!?」
直後、聞こえてきた声に帝は耳を疑った。
すぐさま体を起こし、声の聞こえてきた方に目を向ける。
「……エ、ア……?」
「はい。貴方の相棒、エアですよ」
そこにいたのはエアだった。
乖離剣エアを模した剣を持って、帝へ放たれるはずだった攻撃を受け止めていた。
「造られた命か。そんな存在が、俺に勝つつもりか?」
「私だけでは勝てないでしょう……ですが……!」
押し込まれそうになる剣を両手で支える。
そんなエアが纏うのは、魔力ではない。これは、理力だ。
「私とマスターの二人ならば……!」
「理力だと……!?」
「神界謹製のデバイスを嘗めないでください!」
拮抗する理力と剣。
だが、それでもエア単身では神に勝てない。
「帝!」
「ッ、はぁっ!!」
だからこそ、マスターである帝がいる。
気を開放し、横合いから神を蹴り飛ばす。
「エア……」
「再会を喜びたい所ですが、後です」
「……ああ」
隣に並び立ち、帝は蹴り飛ばした神を睨む。
「単に二人掛かりで戦った所で私は足手纏いです。飽くまで私はデバイスですから」
そう言って、エアは帝に手を差し伸べる。
「エア?」
「……握ってください。そして、信じていますよ。マスター、貴方が勝つ事を」
言われるがままに帝はエアの手を握る。
直後、エアの体が光に包まれる。
「ユニゾン・イン」
「ッ……!!」
エアは神界の神に作られたデバイスなだけあり、途轍もなく高性能だ。
デバイスは本来、ストレージやアームドなど、長所別に種類が分けられている。
だが、エアは全ての種類の長所を併せ持つ。
だからこそ、ユニゾンデバイスの機能であるユニゾンが使えた。
『私とマスターで、打ち勝ちましょう』
「……ああ!」
光が収まる前に、神が転移と同時に仕掛けてくる。
「第二ラウンドだ……!」
「……ほう……!」
繰り出された理力を纏った一撃を、帝が真正面から受け止める。
拮抗した力が弾け、爆発を起こすと同時に二人は姿を消す。
「おおおおおおおおっ!!」
「はぁあああああっ!!」
力と力がぶつかり合う。
衝撃波を撒き散らし、何度も拳と蹴りをぶつけ合った。
「ッ……らぁっ!!」
「ぐっ……!」
拳が顔面を捉え、帝は吹き飛ぶ。
だが、即座に瞬間移動と併用して肉薄。顔を殴り返す。
「はぁっ!」
「ッ……!」
吹き飛んだ神は、ここで動きを変えてきた。
膨大な理力の弾幕で帝を撃ち落とそうしてきたのだ。
理力の弾幕一つ一つも軌道が違い、かなり避けづらい。
弧を描くもの、単純に速いもの、追尾してくるもの。
様々な理力による攻撃を、帝は躱し、迎撃する。
『このままでは隙を晒します!どこかで強行突破を!』
「おう!」
ユニゾンしたエアから声が響き、帝は即座に腰だめに気を溜める。
目の前に迫るのは、本来なら躱した方がいい規模の極光。
「波ッ!!」
それを、真正面から打ち破る。
気を体に纏い、自らを打ち出す形で、極光を正面から貫いた。
「(やはり誘い込みがあったか……!)」
もし極光を躱していれば、そのまま誘い込まれていた弾幕が視界の端に移った。
エアの助言がなければ、今頃またもやピンチになっていただろう。
「(やっぱり、お前がいないとな……!)」
『正面、二時の方向!弾幕が薄いです!次は十時の方向……誘い込みです!』
「わかった!」
エアの声は、ただ喋る訳ではなく思考を叩きつけるものだ。
そのため、どれだけ高速で動き続けても指示が遅れる事はない。
帝も指示を聞き逃さず、弾幕を切り抜けていく。
「はぁっ!」
「ッ、ふっ!!」
「ぐっ……ずぁッ!!」
肉薄に成功し、拳を繰り出す。
その拳は片手で受け止められ、蹴りの反撃が迫る。
空いた腕でそれを受け止めるも、その強さに顔を歪める。
だが、繰り出した拳から気を放出し、受け止められたその上から吹き飛ばした。
「ッッ……!」
直後、後ろに転移され、防御の上から殴り飛ばされる。
「負け、るかぁッ!!」
吹き飛んだ先に回り込まれる事は嫌でも理解できた。
故に、無理矢理体を捻り、回し蹴りを放つ。
結果、相打ちの形で双方の攻撃が命中。お互いに吹き飛ぶ。
「ッ……ぉぉおおおおおおおお!!」
「くっ……!」
空中で静止した神が、理力を無差別に放出する。
無差別故に、速度と威力の優れた弾幕が全方位に放たれる。
『このままでは優奈様達が!』
「(三人を巻き込む訳にはいかない……!)」
ギリギリだからこそ、余計な横槍はすべきではないと帝は判断する。
そして、優奈達を庇うように射線上に立つ。
「はぁあああああああああっ!!」
捌く、弾く、逸らす。
あらゆる手段を用いて、優奈達の戦場に向かわないように弾幕を防ぐ。
「ぐっ……!?」
「捉えたぞ」
『っ……私達の思考を利用しましたか……!』
一発被弾した瞬間、神の声が響く。
同時に、帝は大きく移動できないように結界で行動範囲を制限された。
神は誘導していたのだ。帝が優奈達を庇うのを想定した上で。
「くそっ……!」
全方位だった弾幕が帝へと集中する。
移動が制限された範囲内全てを埋めるように、弾幕が飛ぶ。
速さが尋常じゃないため、帝の超スピードでも避け切れない。
「がっ……!?」
防御を抜けられる。
一発、二発と続けば後はなし崩しだ。
耐えは出来るが、連続で弾幕を食らい続ける事になる。
「ぁぁぁああああああああ……ッ!?」
それでも、倒れる事だけはしない。
身を挺してでも、優奈達の戦いを邪魔させない。
その“意志”で、自らを盾に耐え続ける。
『マスター!』
「大、丈夫、だ……ッ!!」
絶え間のない弾幕。
どうにかして切り抜けない限り、倒れるまで弾幕は続くだろう。
そんな事は、考えなくとも帝とエアにはわかっていた。
「(絶体絶命……なのに、なんでだろうな……)」
どうしようもない状態。
しかし、帝はどこか落ち着いていた。
「(……そうだ。俺は、英雄にばかり憧れていた訳じゃない)」
何もない空洞に、火が灯る感覚を味わう。
それは蝋燭のような小さな火だったが、徐々に変わっていく。
「(エアといるからか、こんな状況でも―――)」
燃え上がる。闘志が、心が、“意志”が。
決して消えぬ炎のように、全てを焼き尽くさんとばかりに燃え上がる。
「(―――俺は、燃えている!!)」
無意識に笑みを浮かべる。
そんな帝の心情を理解できたのは、ユニゾンしているエアだけだった。
「行くぞ、エア」
『……はい!』
未だに続く弾幕を、帝は見据える。
そして、息を大きく吸い、“ソレ”を開放した。
「いつまでも上位に立ってんじゃ、ねぇぞぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!」
「ッッ―――!?」
気が光となって爆ぜる。
次の瞬間、帝は弾幕を突き抜け、神に肉薄していた。
「っづ……!?」
「ぉぉぉおおおおおおおおおおおッッ!!」
腕をクロスし、神が防御する。
その上から、帝は押し込むように突き進み続ける。
まるで、これが限界ではないと。まだまだ行けると、吼え立てるように。
「ッ……二人、目……!!」
「……よく耐えたわ。葵」
一方で、優奈達の戦いも進んでいた。
葵が仕掛けた同化の効果が身を結び、二人目の“天使”を倒し切った。
これで、数は五分五分になった。
「はぁ……はぁ……っ!」
「無理は禁物よ。……ふッ!!」
だが、代わりに葵もかなり消耗している。
優奈がそんな葵を庇うように立ち回り、追撃を防ぐ。
「おおおおおおおおッ!!」
神夜も“意志”で攻撃を相殺し、何とかギリギリで拮抗を続けている。
「ッ、あれは……!」
そんな時、離れた位置の上空で大きな力の鳴動を感じた。
目を向ければ、そこには帝の姿があった。
「主が、互角……!?」
「隙ありだッ!!」
「しまっ……!?」
“死闘の性質”の“天使”がそれを見て動揺する。
その隙を逃さず、神夜が“意志”の一撃を直撃させた。
「ふッ……!」
「邪魔を……ッ!」
「“可能性”、確定。その行く先を断つ!」
―――“τέλος πεπρωμένο”
外的要因による一瞬の隙。
それで仕留め損なう程、優奈達は油断していなかった。
神夜の一撃で“領域”へ大ダメージを負わし、そこへ優奈が仕掛けた。
“可能性の性質”の“天使”が妨害しようとするが、逆に葵がそれを妨害した。
そして、優奈が“可能性”を固定し、確実に“天使”を仕留めた。
「……これで、どっちに転ぶか分からなくなったわね?」
「ッ……!」
“死闘の性質”の“天使”はこれで全滅した。
残るは“可能性の性質”の“天使”のみ。
物理的戦闘での優位性は既にない。
「『油断だけはダメよ。……相手は、私達と同じようにどんな劣勢をも覆す事が出来る。……そういう“性質”なんだから』」
「………」
「っ……」
それでも、油断だけはしない。
その油断を突いて勝利してきたのが優輝、そして優奈達なのだ。
故に、決して相手を侮らない。
「ッッ!!」
「ふッ!!」
拳と掌がぶつかり合い、衝撃波を撒き散らす。
即座に拳を解き、手刀で反撃を逸らす。
すかさず蹴りを繰り出すが、それは躱された。
「ぐッ……はぁッ!!」
「っ……っづ!?」
背後に回られての手刀を食らう。
だが、負けじと後ろ回し蹴りを放ち、防がせる。
同時に理力の弾を放ち、神を吹き飛ばした。
「ふーッ、ふーッ……!」
ここに来て、帝は神と互角になっていた。
その要因として、理力を扱えるようになったエアとユニゾンした事で帝も理力を扱えるようになっている事にあった。
「っづ……りゃぁっ!!」
「がっ……!?」
殴られ、殴り飛ばす。
防ぎ、躱し、防がれ、躱される。
攻撃が当たれば当て返させ、逆もまた然り。
決して圧倒される事はなくなったが、圧倒する事も出来ない。
完全に拮抗した攻防となり、お互いにダメージを蓄積させていく。
それは、まさに“死闘”だった。
「おららららららぁッ!!」
「はぁぁあああああっ!!」
腹を殴り、顔を殴られる。
顔を蹴り返し、腹を蹴り返される。
攻撃の内、ほとんどが防がれるか躱される。
だが、残りの攻撃はお互いに命中し、傷を刻んでいく。
「負けるか!!」
「ッ、おおッ!!」
ここに来て、帝の“意志”が一際燃えていた。
その影響で、神も“死闘の性質”の影響下に落とされたのだ。
そのため、帝と神は互角の“死闘”を繰り広げている。
「趣向を変えようか……!」
「っ、待て!」
お互いに吹き飛び、そこで神が動きを変える。
帝に背を向け、優奈達のいる方へと飛んで行ったのだ。
「はぁあああっ!!」
「ちぃッ……!!」
理力の弾幕で互いに撃ち合う。
肉弾戦ならまだしも、この撃ち合いでは互いに命中はしないだろう。
飽くまで、肉薄のための布石にしかならない。
「ッ―――!?」
だが、神の狙いはそこではない。
優奈達のすぐ傍を通り、同時に弾幕を放つ。
戦いに巻き込む形で、優奈達を攻撃したのだ。
「させるか!!」
それを、帝が阻止する。
同じく理力の弾幕を放ち、弾幕を相殺する。
「掛かったな?」
「ッ―――!!ちぃッ!!」
直後、神に背後を取られる。
防御の上から地面に叩きつけられ、衝撃波と共にクレーターを作り出す。
同時に、その衝撃波で優奈達と“天使”を吹き飛ばした。
「っらぁッ!!」
即座に蹴り飛ばし、体を起こして離脱する。
そのまま再び肉弾戦に持っていき、大勢を立て直す。
「帝……ゴッドじゃない……!?」
そこで、優奈が気づく。
帝が使っている力は、彼の憧れる存在の力ではないと。
「まさか、エアと自分の力だけで……!?」
いくら“固有領域”の効果とはいえ、憧れの存在の力は、所詮借り物だ。
帝の想像の域を出ないため、無制限のようで限界はある。
だが、今の帝はそれらの力を一切使っていない。
“固有領域”の力は使っているが、憧れの存在の力は使っていなかったのだ。
「だらららららら―――らぁッ!!」
「ぐっ……ふんッ!!」
「がッ……!?ッの野郎!!」
拳と蹴りの応酬を繰り返し、その都度一撃二撃を決める。
逆に帝も食らうが、即座にやり返す。
そして、徐々に戦い方がノーガードになっていく。
「……“固有領域”の力を、全部自分に還元している……」
普段使う憧れの存在の力は、全て“固有領域”の力だ。
その“固有領域”の力を、帝は全て自身に吸収している。
そのため、純粋な“力”として帝を強くしているのだ。
加え、エアとのユニゾンによる、理力の取得もある。
二つの要素が絡まり、さらに“意志”によって神を同じ土俵に引き摺り下ろした。
これが、今互角に戦えている絡繰りだった。
「ッ!!ふッ!!」
「くっ……!」
「……こっちも、集中しないとね」
咄嗟に、優奈が“性質”を使って障壁を張る。
確実に命中するはずだった極光が、その障壁で逸らされた。
「帝も頑張ってる。私達も勝つわよ!!」
「うん!」
「おうッ!」
まだ“天使”は残っている。
いつまでも帝の方に気を取られてはいけないと、優奈達も再び戦いに身を投じた。
「ッ、ッッ!!」
「は、ははッ……!!」
衝撃波が迸る度に、どちらかが仰け反る。
防御も回避も捨て、ただ互いに殴り、倒れるまで続ける。
「はーッ、はーッ……!」
「はははははははッ、はははははは!!」
傍から見れば激闘だが、やっている事自体はただただ泥臭い殴り合いだ。
帝も、神も、防御などに割く“意志”や“領域”を既に持ち合わせていない。
ただ相手を倒すためだけに“意志”や“領域”を費やしていた。
「はっ、はは……!!」
「いいぞ、いいぞぉ!」
互いにダメージは蓄積していく。
この戦いが永遠に続くはずもなく、そう時間もかからない内に決着は着くだろう。
……だが、二人は笑っていた。
「……そうだ。これだ……!これこそ―――」
「お前のような人間を待っていた!!お前こそ―――」
お互いの姿が掻き消え、激突する。
「「―――俺の求めていたモノだ!!!」」
拳と拳がぶつかり合い、一際強い衝撃波を迸らせる。
既に戦いの舞台は優奈達のいる地上から遥か離れた上空だ。
お互いの戦闘に干渉する事はなく、故に存分に戦えた。
「おおおおおおおおおおおおッ!!」
「はぁあああああああああッ!!」
雄叫びと共に、拳と蹴りを何度も放つ。
最早、周りの事など関係ない。
この戦いに全てを賭し、お互いに戦い尽くす。
ただそれだけを頭に、二人は殴り合う。
「ッ!!」
「ッッ!!」
姿が掻き消える。
帝と神の姿が現れる度に、拳か蹴りがぶつかり合い、衝撃波が迸る。
「ごはっ……!?ッ、ぜぇあっ!!」
「がふっ……!?ッ、ぉおっ!!」
腹に拳が決まり、体がくの字に折れ曲がる。
だが、帝はその腕を掴み、やり返す。
神もくの字に折れ曲がり、すぐさま反撃に出た。
「ッッ!ずぇあっ!!」
「っ……!」
紙一重でその反撃を躱し、渾身の回し蹴りを放つ。
しかし、その攻撃は後退する事で避けられた。
「は、ははっ!」
「く、くく………!」
間合いを取り、仕切り直しになる。
しかし、次の瞬間には再び戦闘を始めるだろう。
「―――負けねぇ!!」
「―――勝ってみろ、人間!!」
まさに“死闘”と呼ぶべき戦いが、そこにあった。
後書き
界王拳…ドラゴンボールシリーズより。自らの力を倍加させる事が出来るが、倍率が高い程体への負担も大きい。なお、神界ではそれを無視できる模様。
τέλος πεπρωμένο…“運命の終わり”。“可能性の性質”を用いる事で、確実に仕留める技。相手の“領域”が破壊寸前であるほど、効果は高まる。通常に放つだけでも、因果逆転(or因果確定)によって確実に命中する。
若干ドラゴンボールZ神と神のオマージュ。ゴッドの力を吸収した悟空のように、帝は“固有領域”の力を吸収して素の状態で強くなっています。
帝も神も、物語にあるような意志のぶつかり合いによる“死闘”を求めていました。
帝の場合はそう言った展開に憧れ、神の場合はその“性質”故に。
だからこそ、お互いに“死闘”に興じる事が出来たため、テンションが上がっています。それにつれ、帝の“意志”も爆発的に強くなりました。
この戦い限定ですが、強さだけで言えば普通にイリスを倒しうる程です。
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