Fate/WizarDragonknight
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奪い合う者たち
バングレイと名乗った怪物を追いかけて、響は博物館の屋上を踏んだ。
「待って!」
響はシンフォギア、ガングニールによって強化された跳躍力でバングレイとの間合いを詰める。
「はっ!」
発頸により、バングレイの背中を打った。
その衝撃により、バングレイの体は小石のように吹き飛び、博物館より外に放り出された。
「や、やるじゃねえか……」
バングレイはゆっくりと起き上がる。
彼はそのまま吟味するように響を見定めた。
「……いいぜ。ベルセルクの剣は返してやる」
「本当?」
「本当本当。バリマジだぜ? ただし……」
バングレイは鎌を持ち上げる。その時纏った彼の気配に、響は思わず身構えた。
それは明らかに、殺意という名の気配。
「テメエを狩った後ならな!」
「!」
襲い来る刃を白羽取りし、そのまま蹴り返す。
「どうして? 落ち着いて、話し合おうよ! そうすれば、争わずに済むはずだよ?」
「ああ? お前、そういうこと言うタイプ? バリかゆ」
バングレイは、その鎌で頬をかく。当然殺傷力のあるそれで自らの肌を傷つけているので、その青い表皮がすこし裂けていた。
「そういうこと言う奴はな? 問答無用でぶっ壊してやるのが正解なんだよ!」
「っ!」
今度は両腕を交差して防御。だが、バングレイの攻撃力はすさまじく、響は大きく後退。逃げ惑う人々の真ん中に飛ばされてしまった。
「……はっ!」
「ストライク!」
歓喜の声を上げるバングレイ。それもそのはず、投げ飛ばした響に、一般人が巻き込まれていたのだ。
「どうでもいい獲物一匹!」
「しっかりして!」
その青年を助け起こし、響は脈を測る。
「……生きてる……」
「よそ見してんじゃねえ!」
だが、安心する暇はなかった。すでに目の前にいたバングレイが、右手に持った大剣を振り上げていた。
「……っ!」
「させるか!」
そう、横から入ってきたのは、赤と黒の魔法使い。彼はそのまま回転蹴りで大剣を蹴り飛ばし、銀でできた剣でバングレイの体を二度斬り裂いた。
「響ちゃん! 大丈夫? ……その人……」
「大丈夫。まだ息はあるよ。……ハルトさん」
「いいから。ここは俺がなんとかするから、響ちゃんはその人を」
ルビーの魔法使い、ウィザードの言葉にうなずいて、響は戦場を離れた。
見滝原博物館の警報音が、ずっと鳴っていた。
「さて」
響を見送ったウィザードは、銀の武器、ウィザーソードガンを構えながら言った。
「盗んだもの、返してもらおうかな」
「ああ? バリかゆ」
バングレイは鎌で頬を掻く。
「オレはな。欲しいもんは全部力ずくで奪ってんだ。コイツも例外じゃねえ」
バングレイはパイプの首に手を突っ込み、そこからベルセルクの剣を引っ張り出した。それをウィザードに見せつける。
「オレの狩りの邪魔をすんじゃねえ」
「だったらそっちも、俺の休日の邪魔をしないでよ。せっかく面白い展示会だったんだからさ」
「……バリムカついたぜ。テメエも狩る!」
「っ!」
そのまま攻めてくるバングレイの鎌と、ウィザーソードガンが閃く。
「重い……」
この怪物の力が、手を伝ってくる。一撃一撃が重く、鍔迫り合いには勝てない。さらに、荒々しい体術も交わってくると、オールラウンダーの火のウィザードではとても対抗できそうになかった。
「だったら……!」
ウィザードはバングレイから離れ、左手の指輪を取り換える。
万能型のルビーから、パワー型のトパーズへ。
「こいつだ!」
『ランド プリーズ』
ウィザードが左手で足元を指すと、そこに黄色の魔法陣が出現。ゆっくりとウィザードの体を書き換えるように上昇していく。
『ドッドッ ド ド ド ドンッドンッ、ドッドッドン』
魔法陣が通過を終えたころには、、ウィザードはその姿を赤から黄色に変化し終えていた。
「ああ? 姿が変わったくらいで!」
「どうかな?」
再び、剣と鎌が打ち合う。
力はほぼ互角。そこで、ウィザードが突きでバングレイを押し飛ばせたのは、幸いだったのだろう。
「やるじゃねえか……」
バングレイは驚いたように言った。
「まだまだ行くよ」
ウィザードはそのまま、ソードガンを駆使してバングレイへ攻め立てる。
火のウィザードよりもスピードは劣るものの、力に秀でた土のウィザードは、やがてバングレイを防戦一方に追い詰めていった。
やがて、左手の義手となっている鎌を弾き、四回、バングレイの体を引き裂いた。
「ぐあっ!」
さらに蹴り飛ばし、バングレイは地面を転がった。
「はは……がハハハハハ!」
痛みを受けたはずなのに、笑い声を上げるバングレイ。彼はそのまま、改めて立ち上がった。
「なかなかやるじゃねえか。気に入った。少し本気で狩ることにするぜ」
「まだやる気なのか?」
全く戦意が失われないバングレイに、ハルトは戦慄が走った。それどころか喜んでいるバングレイの言動が、まったく理解できないでいた。
その時。
「ディバインバスター」
突如天より告げられた声に、大きく飛び退いた。
バングレイも同じく、上空からの脅威に警戒を示した。
「誰だ!?」
バングレイとともに、ウィザードも空を見上げる。
誰もが避難し、警察のアラームが聞こえてくる青空。青と白のキャンバスに、一点だけ黒があった。
「キャスター……?」
その存在を認めると、思わずウィザードの口からその名が出た。
銀の長い髪と、天使のように背中から生える四本の翼。だが、衣服も翼も漆黒に染まり、むしろ堕天使の印象を抱かせる。
赤い瞳から、まるで涙のように頬を走る赤い模様。左腕に装備された黒い籠手。以前ウィザードと敵対もした、サーヴァント、キャスターに他ならなかった。
キャスターは一瞬だけウィザードを捉えると、バングレイ……そして、その手元のベルセルクの剣を凝視し、告げた。
「その聖遺物はこの私が頂く」
彼女の指は、明らかにベルセルクの剣に向けられている。目を白黒させるウィザードを置いて、バングレイはベルセルクの剣を見下ろした。
「ロストロギアぁ? こいつことか?」
バングレイは指で見せつけるようにベルセルクの剣を見せる。キャスターはずっと黙り、ベルセルクの剣のみを睨んでいた。
「こいつを頂こうってか? ハッ! バリ笑える冗談だ。どこのどいつかは知らねえが、奪えるもんなら、力ずくで奪ってみろ!」
「……」
キャスターは視線をバングレイに移動し、やがて彼に手を向けた。
「望み通りに」
すると、彼女の手から、黒い光の柱が無数に発射された。
「面白え! ならこっちは!」
バングレイはバックステップで黒い光線を避けながら、ウィザードに近づく。
「!」
青い宇宙人は、ウィザードの剣薙ぎを回避し、右手をウィザードの頭に当てた。
「いい記憶だ。オラァ!」
バングレイが腕を突き出すと、そこから光が放たれる。
光は瞬時に人の形を成していく。
「ファントム?」
そこにいたのは、青い牛の姿をした怪人だった。ファントムと呼ばれる、ウィザードが普段から戦っている敵。そのうち、最近ウィザードが倒した個体だった。
「やれ!」
バングレイの指示で、ファントムはウィザードへ攻め立ててくる。
ウィザードは慌てて応戦するが、その間、完全にバングレイとキャスターからは目を離してしまった。
「続いてコイツだ!」
バングレイは、今度はキャスターに向けて手を放つ。新たな二体のファントム___猫のような茶色のファントム、ベルゼバブと、猟犬のファントム、ヘルハウンド。これもまた、以前ウィザードが倒したファントムたちである。
「やれ!」
バングレイの命令に従い、二体のファントムがキャスターへ向かってジャンプする。
だが、キャスターは眉一つ動かすことなく、左右から攻め入るファントムを眺めていた。静かに両手をファントムに当て、そこからの黒い光線により消滅させる。
『ディフェンド プリーズ』
ちょうど土の盾にファントムが激突し、動けなくなったところで、ウィザードはキャスターを見上げる。指輪を取り換えながら、こう呟いた。
「相変わらず……滅茶苦茶だな」
聞こえているのだろうが、キャスターはにこりともしない。彼女はどこからか取り出した、辞書のように分厚い本を放った。その本は彼女の傍らで浮遊し、パラパラとページがめくられていく。
「……ディアボリックエミッション」
彼女が唱えたそれは、広範囲の黒い球体。キャスターを中心に黒い球体がどんどん広がっていく。
「やばい!」
『ディフェンド プリーズ』
ウィザードは、再び今使った指輪を使用。目の前にまた新たな土壁が現れた。
バングレイも、大きく飛び退き、球体から回避。
やがて、土塊をファントムごと崩壊させるキャスターの攻撃はウィザードを大きく弾き飛ばした。
「くっ……」
ウィザードはハルトに変身解除させられる。だが、上空の戦いは、まだ終わっていなかった。
「バリ!」
不意打ち。背後からのバングレイの斬撃を、キャスターはノールックで回避した。
「はっ!」
それに対する、キャスターの反撃。彼女の手から発射された黒い光線は、迷うことなくバングレイを捉え、大きくダメージを負わせる。
「バリやるじゃねえか……なあ?」
地面にて片膝をつくバングレイ。
だが、いまだにベルセルクの剣は彼の手元にある。
キャスターは目当ての物を凝視しながら言った。
「それを渡しなさい。手荒な真似をする必要もない」
「ヘッヘッヘ。慈悲深いねえ」
バングレイはベルセルクの剣を改めて口元に収納した。
「この世の中は奪うか奪われるか! バリ欲しいんだったら、オレから奪ってみやがれ!」
その言葉により、キャスターの目つきが変わった。
鋭い眼差しで、一気に急降下。瞬時にバングレイの目前に現れた。
腰を落とした体勢の彼女は、右手に黒い光を宿しながら、それをバングレイに叩きつける。
「!」
そのダメージは、バングレイにとっても予想外のものだったのだろう。大きくのけ反り、うめき声をあげている。
「だったら……今度はこっちの番だ!」
だが、バングレイはそれでも鎌を振り上げる。少し驚いた表情を見せたキャスターは、右手の籠手で防御した。
「隙あり!」
そのままバングレイは、キャスターの頭部を掴もうと手を伸ばす。
「っ!」
キャスターは素手で防御し、蹴り上げた。
「ぐおっ!」
鎌で防御したバングレイへ、さらにキャスターは追い打ちをかけた。
徒手空拳で何度も突き上げ、上空へ動けなくなったバングレイへ、両手を伸ばす。
「潰えよ」
両手から発射された、黒い光線。いよいよ野太い光は、そのままバングレイへ命中、爆発を巻き起こした。
「ぐあああああ!」
響き渡るバングレイの悲鳴。
そして、持ち主のいなくなったベルセルクの剣が、真っ逆さまに地面に落ちていった。
「! もらった……!」
「ぐ、バリしまった……させるか!」
ベルセルクの剣を取ろうとする、キャスターとバングレイ。
そして、その間に割って入る黄色い影がいた。
「話してくれるまで、渡さない!」
立花響。
それも、黄色をベースにした、黒いシンフォギアを纏っており、急速に両者を突き抜けていった。
「うおおおおおおおお!」
そして、ベルセルクの剣を捕まえたのは、響の黒いガングニールだった。
「!」
「バリ!?」
驚くキャスターとバングレイ。
そして、響が着地したのと同時に、その異変は起こった。
「う……ぐ……あああああああああああああ!」
ベルセルクの剣を捕まえた右手を抑えながら、悲鳴を上げる響。
すると、ベルセルクの剣より黄色のエネルギーが球状に放出された。
それは、キャスターとバングレイを再び上空へ吹き飛ばし、やがて縦に収束していく。そして、まるで蛇のように鞭打ちながら、徐々に響の体内へ吸収されていく。
「う……が……」
膝を折る響。そのまま、シンフォギアの変身も解除され、生身となった響は、焼け焦げた右手の平を凝視していた。
「何? ……これ……?」
その言葉を最後に、響は地面に倒れた。
「響ちゃん!」
駆け寄ったハルトは、一部始終に絶句していた。
「ベルセルクの剣が……響ちゃんに……吸収された……?」
ハルトも、響も。そして手ごろな建物に着地したバングレイも、上空から見下ろすキャスターにも、状況が理解出来ないでいた。
後書き
可奈美「回収終わったね~」
チノ「しっかりチラシをチェックしなかった私もいけませんでした。可奈美さん、ごめんなさい」
可奈美「ううん。今回は私もいけなかったよ。これは悲しい事故ってことで、水に流そう?」
ココア「うえええええん! 二人ともごめんねえええ!」
チノ「おかげさまで変な誤解をした人が来たらどうするんですか……まったく」
ラビットハウス帰宅
友奈「あ! お帰り! ここって、ラビットホース? ハウスじゃなかったんだね」
チノ「……ココアさん……」
ココア「ごめえええええええん!」
可奈美「まあ、友奈ちゃんならよかったよ」
友奈「? どうしたの?」
可奈美「実はこれ、誤植なんだよね。本当はここ、ラビットハウスだよ」
友奈「なんだ! この前来た時、こんな名前かと思っちゃったよ!」
チノ「お知り合いでしたか」
可奈美「そうだよ! こちら、結城友奈ちゃん。友奈ちゃん、この子はここのお店のチノちゃんとココアちゃん」
チノ「よろしくお願いします」
友奈「よろしくね!」
ココア「でも来てくれるなんて嬉しい! やっぱり私の妹に!」ハグッと
友奈「うわっ! いきなり大胆!」
ココア「次に可奈美ちゃんも!」
可奈美「うわっ! じゃあこっちも……! ぎゅぎゅぎゅっ!」
ココア「最後はもちろんチノちゃん!」
チノ「チラシの罰で、ココアさんは今日は禁止です」
ココア「あうっ……」
チノ「……ココアさん、気付けば今回の尺ももうないじゃないですか。今回の紹介コーナーの尺まで全部ココアさんが持って行ってしまいました」
ココア「あうっ……」
チノ「結局ココアさんは、しょうがないココアさんです」
ココア「ひどいっ!」
友奈「可奈美ちゃん、もしかしてこの二人、いつもこんな感じなの?」
可奈美「そうだね。ココアちゃんに抱き着かれるのは慣れてきたかな。刀使の友達にも、よく女の子に抱き着く人いるし」
友奈「うーん……恐るべし、ラビットホース」
可奈美「ラビットハウスだよ!?」
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