歪んだ世界の中で
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第六話 明らかな変化その九
「だからね。皆に希望も紹介するね」
「僕も」
「うん。紹介していいよね」
「お家の中に入れてもらうからね」
それならだとだ。応える希望だった。それでだ。
その話をしてだった。千春が門を開けてだ。
そうして屋敷に入った。庭は左右対称の欧風のものだった。そこにあるのは緑だけでなく。
他の色もあった。赤や白の薔薇、それにだった。
他の花々も咲き誇っている。その数も種類も多い。その花達を見てだ。
希望はだ。こう隣にいる千春に言ったのだった。
「家族の人ってお花好きなんだ」
「うん。千春もね」
「それでこんなにお花が多いんだ」
「そうなの。薔薇だけじゃなくて」
それだけでなくだというのだ。千春は他の花達も見ながら話していく。
「どのお花も大好きだから」
「それでこんなに多いんだね」
「お花は友達だから」
千春はこんなこともだ。希望に話した。
「それでお庭にいつもこんなにね」
「植えてるんだ」
「来てもらってるの」
千春は何の迷いもない調子でだ。希望にこう答えた。
「そうしてるの」
「来てもらってるって?」
「そうだよ。皆来てくれるの」
「ええと。お花がかな」
「そうだけれどどうしたの?」
「来てもらうって」
その言葉にだ。希望は。
妙なものを感じて首を捻る。しかしそう話している中でだ。
希望にだ。千春がこう言ってきたのだった。
「着いたよ」
「あっ、そうだね」
言われてはっと気付いた。見ればだ。
二人は洋館の前に来ていた。その暗褐色の樫の扉の前にだ。その前に来てだ。
千春はだ。明るく、ここでもそうして希望に言ってきたのだった。
「中に入ろう」
「うん。いよいよかな」
「いよいよって思ってるの?」
「ちょっと身構えてるよ」
こう答えたのだった。千春の顔を見て。
「僕女の子のお家に入るのはじめてだし」
「だからなの」
「他の人の家だって。友井君のお家以外にはね」
「入ったことなかったの?」
「うん。本当にね」
何処までもだ。真人は希望の友達だった。だが友達は彼だけだったのだ。
だからだ。他の人の家、ましてや女の子の家にはだというのだ。
「なかったんだ」
「それじゃあはじめてだから」
「そう。身構えてるんだ」
心でそうしているというのだ。しかしだった。
千春はここでもだった。明るい笑顔を希望に向けて。
そしてそのうえで。希望の右手首を自分の左手で握って。
それからだ。彼をぐい、と引っ張ってだった。
「中に入ろう。そんなことしなくてね」
「身構える必要は」
「ないよ。だってここは千春の家だから」
「千春ちゃんのお家だから」
「何の心配もいらないよ。不安になる必要もないんだよ」
「だからなんだ」
「そう。楽しんで」
そしてこうも告げたのだった。こうして。
希望は千春の家に入った。中に入るとそこは立派な欧風の内装だった。ホテルのロビーを思わせる広い部屋がまずそこにあった。扉を開けるといきなりだった。
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