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歪んだ世界の中で

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第六話 明らかな変化その六

「そんな木がするけど。いや」
「いや?」
「いつも一緒にいるみたいな」
 こんなことを言うのだった。
「そう思えるけれど」
「そうね。千春もね」
「千春ちゃんも?」
「この木大好きだよ」
 彼女もだ。その木を見ていた。
 そしてだ。こう言ったのである。
「だって。千春だから」
「えっ、千春ちゃんって」
「そう。だから大好きだよ」
 にこりとした笑みは今もだった。その笑みでだ。
 千春はだ。こう希望に話すのだった。
「とてもね」
「千春ちゃんって」
「それにこの山も」
 希望は千春の今の言葉の意味をわかりかねた。しかしだ。
 千春はその彼にだ。さらにこう言うのだった。
「千春の山だから」
「千春ちゃんの山って」
「そう。千春の山なんだよ」
 こうだ。希望に話したのである。
「だからね。大好きなんだよ」
「それでなんだ。千春ちゃんの山だから」
「そうだよ。頂上まで登ったらね」
「それからだよね」
「千春のお家に来て」
 また笑顔で話す千春だった。
「それで一緒に楽しい時間を過ごそう」
「今もね」
「うん。今も楽しいよね」
「実は山も結構好きなんだ」
 自然にだ。希望はこの言葉を出すことができた。
「この山は特にね」
「八条山が」
「そう。さっきも話したけれどこの山は子供の頃から登ってきたからね」
「愛着あるの?」
「あるよ。ただこの山にお家があったんだ」
 このことはだ。少しだった。
 希望には心当たりがなくだ。こう首を傾げさせて言ったのだった。
「それもあんな立派な洋館があったんだ」
「うん。昔からあるよ」
「昔から?」
「希望は気付かなかったの?」
「山道にはなかったのかな」
 子供の頃から知っている山なのに何故知らなかったのか、自分で考えて述べた希望だった。
「それでかな」
「うん。千春のお家は山道には面していないの」
「それでだったんだ」
「八条山って凄く広いからね」
 知らないのもだ。当然だと答える千春だった。その話をしてからだ。
 千春はだ。こう希望に提案してきた。
「じゃあこの木を。千春を見るのはこれ位にして」
「頂上だね」
「そこ目指そう。山は頂上に登ってね」
「それで登ったことになるからね」
「だから登ろう」
 軽く歩きはじめてだ。言う千春だった。 
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