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第三章

「西瓜が吸血鬼になるとかな」
「言い伝えだがな」
「人間だけがならないのかよ」
「そうだ、だからその西瓜は危ないぞ」
 あくまでこう言うのだった、だがニコライは流石に西瓜は吸血鬼にはならないと思っていた。しかし。
 数日後彼は夜家の外が犬や猫の鳴き声で騒がしいことに気付いた、それで二階の自分の部屋から一階のリビングでテレビを観ている両親に言った。
「外騒がしくないか?」
「ああ、若しかしたらな」
 父は息子にワインを大きなジョッキで飲みつつ応えた。
「前に話した西瓜がな」
「吸血鬼になったのかよ」
「それで暴れていてな」
「外が騒がしいのかよ」
「だとすれば厄介だからな」
 それでというのだ。
「退治しに行かないとな」
「西瓜なのにかよ」
 今もだ、ニコライはそれはないだろという顔で言った。
「吸血鬼になるのかよ」
「だから前も言っただろ」
「西瓜でもなんだな」
「吸血鬼になるんだ、ヴァンピールの人呼ぶな」
 吸血鬼退治の専門家をというのだ、共産主義だった頃は宗教やそういったものを否定していたのでいないことになっていたが最近は復活している。
「そうして退治してもらうな」
「そういえば近所にもいたな、ヴァンピールの人」
「ああ、隣の町のカルロ=ホッジスクさんな」
「あの人呼ぶんだな」
「普段は喫茶店やってるがそっちの仕事もしているんだ」
 ヴァンピールのそれもというのだ。
「じゃあ今から電話するな」
「ああ、しかしな」
「西瓜が吸血鬼になるかっていうんだな」
「まだ信じられないんだけれどな」
 実際にニコライは信じていなかった、だが。
 父はそのヴァンピールの人の連絡をすると一時間位で金髪で顎の先が割れた逞しい男が家に来た、服はごく普通のものだ。そして父から事情を聞くと。
 頷いてだ、こう言った。
「では報酬のお話はそのお家ともして」
「宜しく頼むよ」
「今からかかります」
 こう言ってだ、ヴァンピールは家を出たが。
 ニコライはその人をこっそりつけた、本当に西瓜が吸血鬼になるのかと考えたからだ。それでつけていると。
 ヴァンピールはその西瓜があった畑の方に行くと何と。
 西瓜が宙に舞っていた、その西瓜には何と目と鼻と口があった。 
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