大阪の赤舌
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第三章
「わしの住んでいる場所だからな」
「そういうことしていたの」
「その為に勉強もしたしな」
赤舌はこうも言った。
「算術、今で言うと数学か」
「妖怪も数学勉強するの」
「如何にも」
こう浅海に答えた。
「さもないと川では生きていけぬ」
「妖怪さんもそうなのね」
「少なくとも魚や他の生きものとは違う」
「お家とかあるから」
「人間と同じ様に暮らしている一面があるからな」
だからだというのだ。
「それでな」
「数学も必要なの」
「そうだ」
まさにというのだ。
「今言っている通りにな」
「妖怪さんもなんて」
「驚いたか」
「いやね、私数学苦手だから」
「もっと言うと嫌いだろ」
歩が横から言ってきた。
「そうだろ」
「それはね」
「それはいかん」
赤舌の方も言ってきた。
「勉学はせねばならん、そしてだ」
「その中には数学もあるのね」
「妖怪もそうだしな」
「人間もってことね」
「むしろ人間の方がではないか」
赤舌は浅海に問うた。
「文明の中にいてそれを進歩させているからな」
「そう言われるとね」
「そうだな」
「ええ、じゃあ私もなのね」
「学んで悪いことはないぞ」
「嫌いだけれど」
「嫌いでもせめばならぬものはあるな」
赤舌の言葉は理路整然としていた。
「そうだな」
「うう、確かに」
「では答えは出たな」
「それはね」
浅海も頷くしかなかった、そうしてだった。
数学も勉強すると答えた、赤舌はその言葉を聞いてこう返した。
「わかった、ではな」
「こえからはっていうのね」
「そうだ、学ぶことだ」
「数学もね」
「そうすることだ、妖怪のわしもせねばならぬのだからな」
「人間だと余計になのね」
「計算や測量をすることもあるな」
「確かにね、普通に生きていてもね」
言われればその通りだった。
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