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歪んだ世界の中で

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第五話 少しずつその十一

 そしてそのこともだ。希望に話したのである。
「その人の骨折のことは聞いてたわ」
「そうだったね。前にも話したし」
「可哀想とは思ったけれどお薬はね」
「あくまで僕の為だったんだ」
「そうだったの。けれど希望はお薬をその人の為に使ったから」
「じゃあ僕がしたことに」
「なるよ。全部ね」
 千春は希望のその目を見て。そうして彼に話す。
「僕が友井君を助けたのかな」
「そうなるの。嬉しい?」
「友井君の骨折が治ったこと自体がね」
 それ自体がだと答える希望だった。
「嬉しいよ」
「そうなのね」
「うん、僕の手柄とかはいいんだ」
「ただ。その人の怪我が治ったことが」
「そのこと自体が嬉しいんだ」 
 心から喜びがこみ上げてくることを実際に感じていた。その喜びの中でだ。
 希望は満面の笑顔になり。千春に話した。
「友達だから。たった一人のね」
「そういう希望だからね」
 千春もその笑顔を見て満面の笑顔になり述べる。
「千春も一緒にいるんだよ」
「僕がこういう性格だから」
「そう。人の外見は木の皮と同じだから」
「木の皮とって」
「そうだよ。同じだよ」
 本当にだ。そうでしかないというのだ。
 では千春にとって最も大事なのは何か。彼女はそれも言えた。
「けれど中はそれぞれ違うから」
「千春ちゃんはそれを見るんだ」
「そう、見るよ」
 また言ってだ。そうしてだった。
 希望にだ。また言うのだった。
「希望の心をね。見ているよ」
「僕なんか。性格悪いのに」
「人は誰だって性格悪いところもあるよ」
 そのことも受け入れている言葉だった。
「けれどね」
「それでもなんだね」
「そう。いいところもあって」
 そしてだった。
「どちらが多いか少ないかなの」
「じゃあ僕は」
「いいところが凄く多いよ」
 ただ多いだけでなくだ。それ程までだというのだ。
「凄く凄くね」
「だったらいいけれど」
「その凄くいいところを増やしていけばいいから」
「今よりも」
「だから頑張ろう。頑張ればいいところはもっと増えるよ」
「頑張るっていうと」
 その言葉からだ。希望が連想した言葉はこうしたものだった。
「つまり努力だね」
「何に努力するの?」
「今まではね。最近はじめたばかりだけれど」 
 ずっとしてこなかったことに悔やみも感じて苦笑いになった。だがそれでも言うのだった。
「水泳やランニング、勉強だけじゃなくて」
「他のことも」
「人を羨んだり憎んだり」
 そうした具体的に浮かんだ感情をだ。彼は悪いと考えた。
 そしてそのことをだ。彼は千春に話した。
「怨んだり悪口を言うことはね」
「もうしないので」
「意地の悪いこともね」
 それもだ。しないというのだ。 
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