目が見えない子山羊と優しい雄山羊
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第一章
目が見えない子山羊と優しい雄山羊
アメリカカリフォルニア州のあるボランティア団体の施設に一匹の雌の子山羊がいた。名前をマーシャという。
ボランティアの人達はそのマーシャを見て心配する顔で話した。
「先天的だからな」
「ええ、あの娘の目は」
「だから治らないんだな」
「そうみたいですね」
その子山羊、顔は茶色だがその顔の真ん中と身体の他の部分は白い山羊を見て話した。その山羊の動きは非常に危なっかしい。
「気の毒なことに」
「人間でもな」
ある人がこう言った。
「こうしたことはあるからな」
「そうですよね、先天的に目が見えない」
「そうした人いますからね」
「それでどうしても治らない人が」
「人間でも」
「そうした人は今の世では福祉があるけれどな」
ただし国による、そこまで考えや人材や予算が生き渡らない国や地域が多いのもまた人間の世である。
「しかしな」
「それでもですね」
「生きものはそうはいかなくて」
「あの娘も飼育放棄されてましたからね」
「産みの親に」
「それでここに来ましたし」
「だからな」
それ故にというのだ。
「俺達はな」
「はい、何とかしましょう」
「それが私達のやるべきことですし」
「それならです」
「あの娘の為にも力を注ぎましょう」
「そうしましょう」
施設の人達は誓い合った、そうしてだった。
施設にいる他の生きもの達と共にマーシャの世話もした、しかし。
やはり目が見えないことがありマーシャは何かと苦労した、人手にも限界があり皆常にマーシャの傍にいられないこともあり。
あちこちにぶつかったり躓いたりだった、ご飯を食べるのにも苦労した。それで誰もが思うのだった。
「大丈夫かな」
「ここでも生きられるかしら」
「やっぱり目が見えないとな」
「それだけで大きなハンデだから」
「そのハンデをどうするか」
「私達もいつも傍にいられないし」
それでというのだ。
「どうしようか」
「本当にこのままだといけないし」
「せめて誰か一緒にいれば」
「その時は」
どうしようかと話してだ、そしてだった。
皆マーシャのことを心配していたがここでだった。
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