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おっちょこちょいのかよちゃん

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121 異世界からの依頼状

 
前書き
《前回》
 三木首相の元に日本赤軍から憲法九条の改正および杖、護符、杯の所有者の持つそれぞれの道具の引き渡しを要求する手紙が届き、議会は騒然とする。その時、その国会にフローレンスとイマヌエルが現れ、偽物の杖、護符、杯が渡される。それを赤軍の取引に使用し、憲法九条の改正はしない事を誓い続けて欲しいと二人は願うのだった!!

 オリジナルキャラ紹介・その4
 煮雪あり (にゆき あり)
 かよ子の隣人のおばさんの次女。旧姓・羽柴。初登場41話。現在は結婚し、北海道に住んでいる。なお、「煮雪」という苗字は珍しいがアイヌ民族系の実在する苗字である。アイヌに由来する(カムイ)を呼べるタマサイを持つ。好きな食べ物はカレーライス、ホットケーキ。 

 
 三学期が始まり、かよ子はコートを着て寒さを感じて家を出て行く。
「行ってきま~す!!」
「行ってらっしゃい」
 まき子は娘を見送った後、ポストを開けた。その時、二通の封筒があった。まき子が普通の郵便物とは違和感があった。一通は自分宛。そしてもう一通は娘宛だった。
(これは一体・・・!?)
 まき子はまず自分宛の封筒を開けた。読むうちに感じ取った。大きな戦いが間もなく始まるという事を。

 かよ子は学校に行く途中、ある人物と会った。
「あれ、まるちゃんのお姉さん」
「え?ああ、確か、かよちゃんだっけ?」
「は、はい」
 まる子の姉と会った。
「明けましておめでとう。今年も宜しくね」
「は、はい、宜しくお願いします・・・」
 かよ子はお辞儀をした所、帽子を落とすといういつものおっちょこちょいをやってしまった。かよ子は帽子を拾い、改めてまる子の姉に質問する。
「と、ところでまるちゃんは?」
「まる子?あのバカ、また寒い、寒いって言って布団にくるまってるのよ。また遅刻ギリギリで来ると思うわ」
「そ、そうなんだ・・・」
 かよ子はまる子に新年早々遅刻しないで欲しいと思うのだった。
「あ、よし子さんだ、じゃあね、かよちゃん」
 まる子の姉は友達の所へと行き、かよ子と別れた。

 かよ子は学校に着いた。
「あ、かよちゃん、あけましておめでとう!」
「たまちゃん、とし子ちゃん、おめでとう!年賀状ありがとう」
「うん、今年も宜しくね」
「それにしてもまるちゃん、まだ来ないね」
「うん、途中でまるちゃんのお姉さんに会ったんだけど、寝坊してるんだって」
「新学期早々寝坊なんだ・・・」
 たまえは苦笑した。
「おう、山田あ!」
 後ろからかよ子を呼ぶ声がした。
「す、杉山君・・・!!」
 かよ子は杉山の顔を見て赤面した。
「年賀状、ありがとうな。今年も何かあったらいつでも助けてやるぜ」
「うん、ありがとう・・・!!」
 かよ子はそう言われて嬉しく思った。そして遅刻ギリギリのところでまる子が現れた。
「はあ、はあ、間に合った・・・」
「ま、まるちゃん・・・」
「ああ、皆・・・。明けましておめでとう・・・」
 まる子は肩で息をしており、挨拶をするのにも苦労した。そしてすぐに戸川先生が入って来た。
「皆さん、明けましておめでとうございます。冬休みはどうでしたか?」
 楽しかったと言った者もいれば、紅白やレコード大賞を見ていたと言う者、旅行に行っていたという声も聞こえた。だが、3年4組全員が出席という訳ではなかった。欠席者一名。しかも、病気や怪我ではなかった。理由は行方不明である。
「ですが、そんな中、藤木君の行方が未だに分からない状況です。藤木君が戻ってくる日を待ち続けるしかありません」
 戸川先生は深刻そうに言った。クラスの皆は普段は卑怯者だのと非難しているもののこの日ばかりは不安な反応をしていた。
(藤木君、どこに行っちゃったんだろう・・・?)
 かよ子にも藤木の行方は未だ解らない。また、笹山も不安でいっぱいだった。新学期には戻ってきて欲しいと願っていた。だが、登校中遭遇する事もなく、教室に入っても彼の姿はなかった。そして彼が奇跡的にこの教室に入って来てくれる事を祈った。だが、彼はまる子が遅刻ギリギリで来た後も、戸川先生が入って来た後もその場に姿を現さなかった。児童達は始業式の為、体育館に集まった。そして校長のいつもの無駄に長い話を聞く羽目となっていた。だが、校長はここである問題を取り上げた。
「ええ、日本赤軍だの異世界の人間だの変な人間が激しくなっていますね。皆さんも襲われないように気を付けてください。あと、これと関係があるかどうかは分かりませんが、我が校の三年生の男子がクリスマス・イブの日から未だに行方不明となっております。皆さんも誘拐されないように十分気を付けてください」
 名前を出すまでもなく、藤木の事だとかよ子は感づいた。さらに校長の話はダラダラ続く。
「そういえば先生もこんな赤軍だの異世界だの何だので気を張り詰めた事は三十年前の戦争の時以来でしょう。あの時は空襲が酷くて・・・」
 自身の戦争の体験談を延々と披露していた。25分以上経ってようやく話は終わった。児童達は各々のクラスの教室へと戻る。始業式の日は学校は午前のみの為、帰りの会を終えて皆下校した。

 かよ子は帰宅した。
「只今」
「お帰り、かよ子。そうだわ、部屋に大事な手紙が来たから机に置いておいたわよ」
「大事な手紙・・・!?」
 かよ子は心臓の動きが激しくなった。一体大事な手紙とは何なのか。かよ子は自分の部屋に入った。机の上には封筒が置いてあり、「山田かよ子様」とあった。かよ子は早速中身を見た。
「これは・・・!!」
 封筒の宛名は日本語の仮名や漢字が使われていたが、内容はこの世の物と思えぬ文字だった。杖の使用法を記した説明書と同じ文字だった。だが、かよ子にはその文字が難なく読めた。

 迎春 この手紙を受け取った皆様へ

 今、日本赤軍が勢いを強めていると共に我々の世界でも戦争を正義とする世界の人間に圧力が強まり、平和を正義とする世界が弱まりつつあります。そんな中、赤軍は日本政府に憲法の改正および私達が戦後貧困に喘いでいた者達に渡した四つの道具のうち、杯、護符、杖を献上する事を要求してきました。残りの一つ・剣は既に赤軍に奪われており、残りの三つが全て揃ってしまえば、この日本は再び戦争への道へと進む事となり、我々の世界も滅する恐れがあります。そうなれば、この地球は無慈悲な戦争を起こす星と化してしまうでしょう。三つの道具を献上する要求についてはこちらで既に対策を練っておきました。そして、今、そちらの世にある杯、護符、杖はこれ以上この地にあるとさらに危険です。所有者は一旦私達の世界に戻すという形で私達の世界に来て頂き、他にも敵と戦う為の道具を授けている者、異能の能力を有している者も私達の世界に来て共闘を願います。平和主義の世界が争いを行うなど矛盾した行為ではありますが、貴方達の住む日本を間違った方向へ向かわない為です。目的は戦争を正義とする世界の撲滅、そして異世界の剣の奪還、そしてクリスマス・イブの日から行方不明となっている藤木茂という少年の奪還です。戦争を正義とする世界の人間に連れて行かれ、前述の政府への取引の道具として利用されている事が明らかになりました。時は一月二十日、近くの神社などへお越しください。そこに祀られている神が我々の世界への道を通してくれるでしょう。我々で兵団を組み、必ず守りましょう。終わりに、私達平和の世界の者達はこの手紙を受け取ってくださった皆様を信じております。では、約束の日にちにお会い致しましょう。

 平和を正義とする世界の本部
 フローレンス
 イマヌエル

(フローレンスさんとイマヌエルさんがくれた手紙なんだ・・・)
 だが、この文章に衝撃的な事を知ることになる。クリスマス・イブの夕方から行方不明の藤木が異世界にいるという事を。
(やっぱり、藤木君は異世界に行っちゃったんだ・・・!!)
 かよ子は今まで以上の決意でこの戦いに備えなければならないと思うのだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「大戦の日までに」
 かよ子に届いた手紙は隣の三河口にも、すみ子や杉山、大野、長山などにも届く。三河口の三姉妹の従姉にも届いたとの情報が入り、各々も戦いに備えなければならぬと気を張り詰める。そんな時、大野の家では別の問題が・・・。 
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