ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第73話 怖がり吸血鬼登場、歓迎の焼肉と修行の場は天空の野菜畑!?
side:祐斗
「イッセー君!?」
ギャスパー君のいる部屋に入ったイッセー君が壁を突き破ってきたのを見て僕は彼に駆け寄った。
「イッセー君、何が……」
「離れろ、祐斗!」
事情を聞こうとした僕をイッセー君が付き飛ばした。すると壁から黄色い人間のような存在が現れてイッセー君に襲い掛かった。
「このっ!」
イッセー君はそいつの攻撃をかわすと反撃しようとナイフを放つ。
『止めろ!イッセー!』
「うえっ!?」
でも突然イッセー君の腕に赤い小手が現れてドライグの声が聞こえた。イッセー君は突然の静止の声に動きを止めてしまい、黄色い存在の攻撃を顔面に受けてしまった。
「ぶっ……!ドライグ!いきなりなんだ!?」
『そいつは『スタンド』だ、それも近距離型のな。奴が活動できる範囲には限界があるはずだ、まずは離れろ』
イッセー君や僕達は『スタンド』と言う聞いたことのない声に首を傾げたが、ドライグは過去に二天龍と恐れられたドラゴンだ。もしかしたら僕達の知らない事を知っているんじゃないかと思い彼の指示に従った。
「ん?追いかけてこないな」
10メートルほど離れると黄色い存在はそれ以上は追ってこなかった。僕達を一瞥するとギャスパー君の元に戻っていった。
『ほう、10メートルも本体から離れられるのか。俺が知っているスタンドの近距離型では一番遠くまで動いたな』
「なあドライグ、スタンドって何だよ」
『説明は後だ。まずはあのギャスパーという小僧を眠らせるなり気を失わせるなりしろ。そうすればあの黄色いのは消えるはずだ』
イッセー君はドライグにスタンドという言葉について尋ねたが、彼はまずギャスパー君をどうにかしろと話す。
「気を失わせろと言っても近づけないわよ」
『なら祐斗の魔剣で眠らせるモノでも作って部屋に投げ込めばいいだろうが』
「なるほど、それなら近づかなくてもギャスパー君を眠らせられますわね」
部長が使づくのは危険だと話すとドライグは僕の魔剣でどうにかしろと言う。確かにその方法なら安全にギャスパー君を向こうかできるね、朱乃先輩も納得していた。
「じゃあイッセー君、これをギャスパー君のいる部屋の壁に投げて刺してくれないか」
「応っ、任せておけ」
僕は何かに刺さると眠くなる波動を出す魔剣を生み出すとイッセー君に渡した。彼は綺麗なフォームで魔剣を投げるとギャスパー君のいる部屋の壁に魔剣が刺さった。
『な、なんですか!?……あれ……なんだか眠くなってきて……』
ギャスパー君の驚いた声がしたが暫くすると寝息が聞こえてきた。どうやら上手く行ったようだね。
僕達は一応警戒しながらギャスパー君のいる部屋に近づいた。ソ~ッと部屋の中を覗き込むと眠っているギャスパー君だけしかいなかった。あの黄色い奴は消えてしまったみたいだね。
僕達はギャスパー君を連れて部室に向かった。今彼は部長の膝枕でスヤスヤと眠っている。
「はわぁ……可愛いですぅ」
アーシアさんが眠っているギャスパー君の顔を見てほんわかとした表情になっていた。
「しかし信じられねえな。こんな愛らしい子があんな凄い能力を持っていたなんて思いもしなかったよ、話以上だったぜ」
「そういえばイッセーさんはあの黄色い人に殴られましたが大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ、あれくらいは日常茶飯事だからな。ただ俺以外だったら危なかったな」
あの黄色い奴の攻撃を受けたイッセー君をアーシアさんが心配するが彼はケロっとした様子でそう言った。流石イッセー君だね。
「ところでドライグ、お前がさっき言っていたスタンドという事をそろそろ説明してくれないか?」
『いいだろう。ただ俺も全てを知っているわけではない、知っていることだけを話そう』
そしてドライグのスタンドについての説明が始まった。
『簡単に言えばスタンドとは生きた超能力のようなモノだと思ってくれ』
「生きた超能力?」
ドライグの最初の発言に部長が首を傾げる。超能力ってあの透視とかサイコキネシスとかのアレ?
『スタンドはその持ち主の精神によって様々な形、能力を持つと言われている。炎を出す、凄まじい速度で動ける、砂を操るなどよくある能力や人の精神に干渉したり、中には世界を破滅させかねないほど強力なモノも存在するらしい。因みにスタンドは人間だけでなく犬や猫といった動物も持つことがあるらしくスタンドを使う存在は総じて『スタンド使い』と呼ばれているんだ』
スタンド使い……初めて聞く単語だね。
『スタンドは一人につき一体しか持てない。複数の能力を持つことはまず無い』
「じゃあ神器みたいに奪ったり複数持つことはあり得ないって事か」
『例外もあるかもしれんが基本はそうだ』
神器は持ち主から引き抜くこともできて複数の神器を持つ人間もいるらしい。でもスタンドは複数持つことはあり得ないみたいだね。
「でもおかしいわね。私はスタンドなんて言葉を聞いたことがないわ。そんな強力な力ならもっと知られていてもおかしくないのに」
部長の発言に僕達は確かにと思った。それだけ強力な力を持っているスタンドの存在を悪魔が知らないわけがない。
『スタンドは自在に姿を消したり現わしたりすることが出来る。消えている間は同じスタンド使いでなければ見えないし触れる事も出来ない。魔法にも反応しないから消えていたら魔王でも分からないだろう』
自在に姿を消せる存在か、ならあまり知られていないのも納得だね。悪魔や堕天使がスタンド使いと戦ったとしてもまず魔法か神器の方を疑うだろうし。
『ギャスパーという小僧はまだ自在に姿を消したり現わしたりすることが出来ないのだろう。つまりスタンド使いとしては未熟ということだ』
「姿を自由自在に消せるのは分かったわ。それ以外の特徴はなんなの?」
『スタンドは傷を負うと本体もダメージを負ってしまうんだ。先ほど俺がイッセーに攻撃を止めさせたのはそう言う事だ』
「あっぶねぇ……危うくギャスパーを傷つけるところだったのか……」
スタンドがダメージを負うと本体にダメージがいくのか。ギャスパー君は打たれ弱いからもしイッセー君のナイフがスタンドに当たっていたらショック死していたかもしれないね……
『後スタンドは本人の意識が無ければ姿を保てない。もしこいつが暴れ始めたら意識を失わせるのが一番手っ取り早いな』
「なるほど、それが分かれば対処もしやすそうね」
「そう言えばギャスパーが最初にスタンドを使った時、リアスさん達はどうやって止めたんですか?」
「あの時は偶然天井から落ちてきた瓦礫がギャスパーの頭に当たって気を失ったの。なんで消えたのかは分からなかったけど、今思えばギャスパーが気を失ったからスタンドも消えたのね……」
『運が良かったな。騒ぎが大きくなれば魔王が来ただろうし最悪滅びの魔力で消滅させられていたかもしれんぞ』
「お兄様やグレイフィアがいなかったのは本当に運が良かったわね……」
あの時は僕達以外には部長のご両親とミリキャス様、そして使用人の方々しかいなかったからね。もし魔王様がいたらギャスパー君は最悪消滅していたかもしれなかったのか。そう考えると本当に運が良かったよ。
『後はスタンドには決まった射程距離があってそれ以上は動かせない……くらいか?まあ大雑把に説明するならこれくらいだな』
「ありがとう、ドライグ。貴方のお蔭でギャスパーの能力が良く分かったわ。でもどうして貴方はそんなにスタンドについて詳しいの?」
『かつての赤龍帝の一人がスタンド使いだったからな、ソイツに教わったんだ』
赤龍帝にもスタンド使いがいたのか。通りで詳しい訳だよ。
『しかしリアス、時を止める神器に強力なスタンドを持つこの小僧をよくお前が眷属にできたな。今のお前ならまだしも出会ったばかりのお前は見るも耐えがたいほど弱かったのに何故こんな奴を眷属にできたんだ?』
「随分な言い方ね……まあそう思われても仕方ないんだけど。理由は『変異の駒』を使ったからよ」
「変異の駒?」
「通常の悪魔の駒と違って、明らかに複数は必要なはずであろう転生体を一つの駒で済ませてしまうことが出来る特異な現象を起こす駒の事だよ」
「リアスはそれを一つ持っていたの」
ドライグの言葉に部長は苦い顔をしながら変異の駒のお蔭だと話した。それを聞いたイッセー君とアーシアさんが首を傾げたので僕は変異の駒について説明をして最後に朱乃先輩が補足した。
「う~ん……」
あっ、眠っていたギャスパー君が目を覚ましそうだね。
「じゃあ俺は外に出てるよ。また顔を見て驚かれたらマズイからな」
「私もついていきますね。一応初対面ですし……」
イッセー君はそう言ってアーシアさんと一緒に部屋を出ていった。
「あれ……ここは……リアス部長?」
「おはよう、ギャスパー」
するとタイミングよくギャスパー君が目を覚ました。部長の膝から頭を上げると目をこすりながらキョロキョロと部屋を見渡し始める。
「あれ?いつものお部屋じゃないです。もう真夜中になったんですか?」
「今はまだ夕方よ……もしかして覚えてないの?」
「何がですか……?あれ、そういえば誰かが部屋に入ってきたような……」
「実はね……」
どうやら寝ぼけているみたいだね、部長は先程までの事をギャスパー君に説明した。
「そ、そんな……!人間の方をあの子が殴っちゃったんですか!?」
「まあ本人はケロっとしているから大丈夫よ」
「う、嘘です!あの子が人間を殴ってタダで済むはずがありません!ぼ、僕はなんてことを……!」
ギャスパー君は自分がしてしまった事を嘆いていた。部長の言う通り殴られた本人は「別にこれくらい平気だって」って笑みを浮かべていたけど知らなければそういう反応をするよね。
「部長……僕はやっぱり生きていたら駄目なんです……部長達が必死に守ってくれていたのにとうとう犠牲を出しちゃって……うぅ……」
等々泣き出してしまいそうになるギャスパー君、でもこのままだと時間を止められてスタンドに襲われてしまう!僕は気を落ち着かせる魔剣を生み出してギャスパー君に持たせた。
「祐斗先輩?」
「ふう、間に合ったか……」
神器やスタンドが発動しちゃうと僕の魔剣なんて利かなくなるけど発動前なら何とか抑え込めたよ。唯何回も使っちゃうと耐性が出来ちゃうから一時凌ぎにしかならないんだよね。
「ならその人を呼ぶからちょっと待ってて。あっ、でも顔を見ても驚いたら駄目よ。貴方、とても失礼なことしたんだから」
「うぅ……分かりました……」
「イッセー、アーシア、入ってもいいわよ」
部長がそう言うと外で待機していたイッセー君とアーシアさんが部屋に入ってきた。イッセー君を見たギャスパー君が一瞬ビクっとしたけど事前に話していたからか、それとも魔剣の効果があったからかスタンドは出なかった。
「初めまして、ギャスパー。俺は兵藤一誠、気楽にイッセーって呼んでくれよな」
「アーシア・アルジェントです。どうぞよろしくお願いします」
「え、えっと……ギャスパー・ウラディです。よ、よろしくお願いします……」
どうにか自己紹介をすることが出来たね。まだちょっと緊張しているみたいだけどイッセー君やアーシアさんなら直ぐに打ち解けられると思う。
「あ、あの……兵藤先輩……でいいのでしょうか?」
「応っ、それで合ってるぜ」
「さ、先ほどは……あの子が殴ってしまったと聞きました。本当にごめんなさい……」
ギャスパー君はイッセー君が先輩かどうか確認してから謝罪をした。まあどう見ても年上にしか見えないけど確認は大事だからね。
「それなら平気だ。どこも怪我してないだろう?」
「ほ、本当だ……あの子に殴られて怪我しない人がいるなんて思ってもいませんでした……」
「まあ頑丈さが自慢だからな」
オドオドとしながらもイッセー君と会話するギャスパー君、イッセー君はあまり馴れ馴れしくしないように上手い距離感で接しているから安心できるんだろうね。
「よし、出会えた記念に俺が美味い物をご馳走してやるよ。丁度例の店の予約が今日だったからな」
「えっ!じゃあ……!」
「応っ!今夜は焼肉だ!」
「やったー!」
イッセー君の言葉にはしゃぎながら喜ぶ部長、ずっと行きたがっていたから無理もないよね。
「えっと、どこに行くんですかぁ?」
唯一人だけ状況が呑み込めていないギャスパー君は不安そうにイッセー君にそう声をかけた。イッセー君は笑みを浮かべるとギャスパー君に問いかけた。
「ギャスパーは焼肉は好きか?」
「ひ、人の血は苦手ですけどお肉は大好物です……野菜もトマトが特に好きですね……」
「なら丁度いいな。お前に滅茶苦茶美味い肉と野菜を食べさせてやるぜ!」
――――――――――
――――――
―――
「お、美味しいですぅ!」
目の前で焼かれるお肉を皿の上に盛られ、それを一切れ箸で掴み塩を振るう。そしてゆっくりと口の中に運んで咀嚼すると……ギャスパー君は満面の笑みを浮かべた。
「どうだ、最高級の『牛豚鳥』の上カルビの味は?」
「すっごく美味しいですぅ!噛むと舌の上で脂がジュワっと溢れて!お肉もとっても柔らかいです!牛肉と豚肉と鶏肉の美味しい所を一辺に味わえて……箸が止まりません!」
ギャスパー君は目を輝かせながらイッセー君にそう答えた。
今僕達がいるのはG×Gのグルメタウンの『グルメタワー』上層階273階にある7ッ星焼肉店『へるスィ~』に来ているんだ。前に部長が来たかったと言っていたのを覚えていたイッセー君が前々から貸し切りの予約を取っていてくれていたみたいなんだ。
因みにここに来る途中でルフェイさん、小猫ちゃん、黒歌さん、ティナさんと合流しているよ。
「本当に美味しいわね!こんないいお肉、D×Dでは食べられないもの!こんな素敵な場所に連れて来てくれてありがとうね、イッセー!」
「ほんと滅茶苦茶美味しいてんこ盛りな展開だわ!撮影できないのが惜しいけど……」
「喜んでもらえたなら何よりですよ」
「それにしても食事も美味しいけどこの景色も最高ね!グルメタウンの夜景を見ながら食事をするなんて凄くロマンチックだわ。いつか私の探している人とこんなところで食事をしてみたいわね……」
前に来たがっていた部長と普段からスクープを狙っているティナさんは特にテンションが高くなっておりイッセー君にお礼を言っていた。
僕達がいる部屋は特別展望個室で壁や天井がガラス張りになっているんだ。273階という高さもありとても綺麗な光景が楽しめるんだよ。
「それにしてもリアス達が言っている『G×G』や『D×D』ってどういう意味にゃん?」
「ああ、あれは前から考えていた私達の世界とグルメ界の呼び方です。グルメ界の人間界って言葉で言うとややこしいじゃないですか。だから私達の世界を『D×D』、グルメ界を『G×G』と呼ぼうって事になったんです」
「へ~、確かにややこしい部分もあったしそれは良い考えね。でもなんでG×GやD×Dなの?」
「単純に『デビル』と『ドラゴン』でD×D、『グルメ』と『GOD』でG×Gと呼んでいます」
「ああ、それぞれの世界の特徴の頭文字を取ってるのね」
小猫ちゃんが黒歌さんに僕達が決めた二つの世界の呼び方について説明していた。これならややこしくなることもなくなるね。ティナさんだけ首を傾げていたが誤魔化しておいた。
「でもギャスパー君が馴染んでくれてよかったですわ」
「ここに来るまでずっと怯えていましたからね~。自己紹介して死にかけたの初めてですよ~」
朱乃先輩はギャスパー君がG×Gに慣れてくれたことに安堵していた。
ギャスパー君をこっちに連れてきたときは凄く驚いてスタンドや神器まで発動しちゃったからね。最初に駆け付けたルフェイさんが巻き込まれちゃったんだ。
イッセー君が防いでくれて僕がまた魔剣でギャスパー君を落ち着かせて事なきを得たんだけど、殺されかけても笑って許してくれたルフェイさんは良い人すぎるよ。
「あ~ん♡美味しすぎて箸が止まらないわ~♡」
「むっ!おいイリナ!その上カルビは私が焼いていたんだぞ!」
「モタモタしてるのが悪いのよ!焼肉は奪い合いなんだから!」
「なわ私だって……あむっ!」
「ああ―――ッ!?私の上ロースを取ったわね!」
「お互い様だろうが!」
お肉の奪い合いを始めてしまったイリナさんとゼノヴィアさん、この二人がエクソシストだという事は流石にギャスパー君には内緒にしている。
何せエクソシストはヴァンパイアと敵対してるからね、いくら二人に敵意が無くても敵対している組織の人間がいると知ればギャスパー君も怖いだろうから。
それを聞いた二人は快く提案を受け入れてくれたし、特にギャスパー君に対して思うこともないそうだ。話を理解してくれる二人にも感謝だね。いつかエクソシストだと正体を話すときは来るだろうけど、その時にはきっとギャスパー君もイリナさん達と仲良くなってると思うんだ。
ただ喧嘩は止めてほしいな……貸し切りとはいえ流石に恥ずかしいよ……
「はいギャ―君、お肉焼けたよ」
「あ、ありがとう小猫ちゃん……」
珍しく自分が食べる事よりもギャスパー君にお肉を譲っている小猫ちゃん、二人は同い年で学年も一緒だからギャスパー君が封印される前から仲がいいんだ。さっきもグルメタウンで二人が再会した際小猫ちゃんは嬉しそうにギャスパー君を抱きしめていたしね。
「小猫ちゃん、なんだか変わったね。前よりも明るくなったと言うか、積極的になったね」
「ふふっ、私も成長したんだよ。イッセー先輩と出会ってこの世界を知って一杯冒険して一杯食べたからね」
「そっか。眷属の皆が何だか前とは違うなーって思っていたんだけどそんな事があったんだね。羨ましいよ、僕は弱いままだから……」
ギャスパー君は少し顔を曇らせてそう呟いた。そうか、ギャスパー君だけ置いていかれている状況だから不安に感じているのかもしれない。
「大丈夫だよ。ギャー君もここで一杯冒険して一杯食べれば強くなれるよ。ねっ、イッセー先輩」
「そうだな」
不安に思うギャスパー君を小猫ちゃんは笑みを浮かべてだいじょうぶだよと言い、イッセー君も頷いた。
「僕も強くなれる……?でも僕は神器もスタンドも碌に操れないし暴走ばかりさせちゃうし……皆に迷惑しか掛けられない弱虫の僕なんかが本当に強くなれるのでしょうか……?」
ギャスパー君は尚も不安そうにそうイッセー君に問いかけた。スタンドの事はギャスパー君にも教えたけどスタンドをコントロールできない自分は未熟者だと知って落ち込んでしまっていた。美味しい物を食べたから少しは気が晴れたかなと思っていたけどやはり気にしているんだね。
「それはお前次第だ。だがなギャスパー、俺はお前が弱虫だとは思っていないぞ」
「えっ……」
「確かに神器やスタンドを扱うと言う点ではお前は未熟者かもしれない。だがお前はそれを危険だと理解して迷惑をかけたくないと思っているじゃないか、それはお前の心が強いからそう思えるんだ」
イッセー君は真剣な表情でギャスパー君に話をしていく。その様子にケンカしていたイリナさんとゼノヴィアさんも聞きに入っていた。網に残っていた肉がコゲないように皿に移していたけど……
「時を止める神器や強力なスタンド……人間っていうのは強い力を持てば大体思い上がるもんだ。でもお前は違うだろう?他人を思いやれる優しさと自分を律せる強さがあるからそうできるんだよ」
神器を得た人間は不幸になることが多いが、開き直って悪事に使う人間もいるみたいだ。同じようにスタンドも姿を消せばスタンド使い以外には認識できなくなるので、それで窃盗をしたり犯罪を犯す人間も多いってドライグが言っていたんだ。
でもギャスパー君はそうならなかった。悪用したいって思わない強い心があったから彼は逆に臆病になったのかもしれないね。
「……うぅ」
するとギャスパー君は泣き出してしまった。一瞬神器やスタンドが発動するんじゃないかと思ったが、どっちも出なかった。
「ぼ、僕……そんな優しい言葉をかけてもらったのは、幼馴染みの子か眷属の皆しか無かったです……」
「そうか……色々辛い思いをしてきたんだろうな。でも今日からは俺もお前のダチだ。だから何かあったら遠慮なく頼ってくれよな」
「はいっ……!」
イッセー君はギャスパー君の涙を指で拭いながらポンポンと頭を撫でた。するとギャスパー君は笑みを浮かべながら嬉しそうに返事をした。
出会ってまだ少ししかたっていないのに、もうギャスパー君に信頼されるなんて流石はイッセー君だね。
「……イッセー先輩、早速で申し訳ないのですがお願いをしても良いですか?」
「応っ、遠慮なく言ってくれ」
「なら、僕を強くしてください!」
ギャスパー君は強い決意を込めた目でイッセー君を見ながらそう言った。
「僕は弱虫で眷属の皆に守ってもらわなければ何もできません……でも僕も皆の為に何かできるようになりたいんです!だから……!」
「よし、分かった!俺は強くなろうと努力する奴は大好きだ!お前が強くなれるように協力するぜ!」
「あ、ありがとうございます……!」
イッセー君はサムズアップするとギャスパー君は嬉しそうに笑って感謝の言葉を言う。
「実はそろそろ親父から与えられた依頼を何かしようかと思っていたんだ。それで……」
「失礼します。本日のメインデッシュをお持ちいたしました」
「おっ、来たみたいだな。続きはコレを食ってからにしようぜ、何せへるスィ~の看板メニューだからな」
イッセー君が何かを話そうとした際、丁度店員の方がきて話は中断する。看板メニューと聞いて僕達の期待は大きくなった。
「お待たせしました、野菜の盛り合わせでございます」
「おほ~っ!待ってました!」
運ばれてきた食材は野菜の山でそれを見たイッセー君が嬉しそうに拍手をした。
「え~っ、野菜じゃない。期待して損したー」
「そんなこと言っていいのか、イリナ?ここのメインが野菜なのには理由があるんだぜ」
イッセー君は焼いていたカルビをサンチュに包んでギャスパー君に渡した。
「ギャスパー、食べてみな」
「わ、分かりました」
ギャスパー君がサンチュのカルビ包みを口に入れる、すると咀嚼するたびにカリカリといい音がなりギャスパー君は驚きの表情を浮かべた。
「な、なんですかコレ!?サンチュなのに新鮮なキュウリやゴボウを齧ったような触感がします!さわやかなサンチュの味がお肉のシューシーな旨味をもっと引き出しています!」
ギャスパー君は幸せそうな笑みを浮かべて僕達も思わずゴクリと唾を飲みこんだ。
「わ、私も食べたい!」
「おや?イリナは野菜なんか嫌なんじゃないのか?」
「ごめんなさい、イッセー君!あんなこと言った私がバカだったわ!謝るから私にも食べさせてください!」
「あはは、冗談だよ。腹いっぱい食いな」
「うん!」
イリナさんに続いて僕達もカルビをサンチュに包んで食べてみる。こ、これは……!サンチュの味がカルビの脂でより深まっている!?普通なら野菜がお肉の味を引き立てるのにこれは全くの逆だ!
「へるスィ~の主役は肉じゃない、この野菜たちなのさ」
イッセー君は『ベーコンの葉』を焼いてそれを食べる。カリっと快音が鳴って美味しそうに食べていく。そして『水晶コーラ』をグイッと飲み干して笑みを浮かべた。
「美味い!ベーコンの葉はそのままでも美味いが焼くと更に旨味が増すな!」
「ズルいわ!私もそれ食べたい!」
それを見ていた部長も同じようにベーコンの葉を焼いていく。
「この『クリーム玉ねぎ』、上品な甘さとサクサクとした触感が堪りませんわ♡」
「私はこの『ゴールデンにんじん』がお気に入りです!すっごく甘くてどんどん食べれちゃいますぅ!」
「私は『サーロインポテト』が良いですね!塩胡椒を付けて食べるとまた格別です!」
朱乃先輩、アーシアさん、ルフェイさんはそれぞれが食べた野菜の感想を話していた。3人とも満面の笑みを浮かべており実に幸せそうだ。
「僕は『バナナカボチャ』をもらおうかな」
バナナのような形をしたカボチャを焼いて齧ってみる……うん、美味しい!バナナのような甘さにカボチャの触感が合わさってイイ感じだね。
僕達は思い思いに野菜を焼いて食べていく。夢中で野菜を食べていくうちにお腹がいっぱいになっちゃったよ。
「ふぅ……お腹いっぱいだわ」
「まさか野菜で満腹になるなんて思いもしませんでしたわ」
「ふふっ、野菜おそるべしだろう?」
リアス部長が水晶コーラを飲みながらお腹を撫でており、朱乃先輩も満足そうにしていた。イッセー君の言う通り野菜おそるべしだね。
「そういえばイッセー先輩、先ほど言いかけていた一龍会長の依頼とは何だったのですか?」
「ああ、それはだな……」
小猫ちゃんはきっき言いかけていたイッセー君の話の内容を改めて彼に聞いた。
「標高数万メートルにあると言われている天空の野菜畑……その名も『ベジタブルスカイ』。独自の野菜が無数に育つ野菜天国だ」
「雲の上に野菜畑があるのか?」
「聞いたことがあるにゃ。まだ数人しか行ったことがないんだけど、ほとんどが菜食主義者になって帰ってくるくらいに美味しい野菜がある場所にゃ」
イッセー君の説明にゼノヴィアさんが空の上に野菜畑があるのかと首を傾げる、すると黒歌さんが補足していった人たちが菜食主義者になって帰ってきたと話した。
菜食主義者になってしまうほど美味しい野菜か……興味があるね。
「その中でも一番美味いとされているのが野菜の王様『オゾン草』だ。一口食べれば地上の野菜が全て所未期限切れに感じてしまう程……天からの恵みを直に受け瑞々しさと新鮮な旨味が味わえるという野菜の頂点だ」
イッセー君の説明を聞いていた僕達は無意識に唾を飲みこんだ。そんな凄い野菜、ぜひとも食べてみたい……最近グルメ細胞を宿した僕は強くそう思った。
「次の土日にそこに行こうと思う。皆も行くか?」
イッセー君の問いに全員が首を縦に振った。
「よし、なら全員で体験しようぜ!野菜が脇役じゃなく主役にな瞬間をなっ!」
『おおー――ッ!』
次の冒険の舞台はベジタブルスカイか、グルメ細胞を使いこなすための修行にはもってこいの場所だね!皆と一緒に攻略してみせるよ。
「あっ、そうだ。お会計をお願いします」
「5187万円になります」
「はわっ!?」
値段を聞いたギャスパー君が驚いてスタンドを出しそうになったけど、とにかく頑張ろうね!
――――― オマケ ―――――
『ギャスパーの性別』
イッセー「しかし最後の眷属がこんな可愛い女の子とはな」
祐斗「あはは、やっぱりそう思っちゃうんだね……」
イッセー「どういう事だ?」
小猫「ギャー君は男の子ですよ、先輩」
イッセー「……えっ?」
黒歌「にゃはは、白音ってば面白い冗談言うね~……えっ、マジかにゃん……」
ルフェイ「どうしたんですか、黒歌さん?」
黒歌「仙術で体を見たら確かに下半身のある部分にも気が流れているのが見えたにゃん……」
ティナ「嘘でしょ!?ヘタしたらあたしより可愛いこの子が男の子!?」
イリナ「じゃあこんな愛らしい顔して下半身に汚れたバベルの塔が建設されているって訳?」
イッセー「イリナ、下品だぞ……」
ギャスパー「えへへ……」
ゼノヴィア「しかし何故女装などしているのだ?」
ギャスパー「趣味です」
イッセー「趣味なのか……」
後書き
ギャ、ギャスパーです……G×Gの世界で冒険するのは初めてだけど、僕も皆みたいに強くなりたいから頑張ります。
えっ……強い猛獣が出る?気候や環境も直ぐ変わるくらい激しい……?……だ、大丈夫だよね。会って間もないけどイッセー先輩は良い人って分かるし皆と一緒だし……僕も先輩みたいに強い男になるんだ!
次回第74話『天国への階段か、地獄への奈落か。目指せ、天空の野菜畑ベジタブルスカイ!』でお会いましょう……よし、今回はちゃんと言えた……!
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